12年10月1日

大内くんの会社は、今日から別の会社と合併し、より大きな会社になった。
日頃あんまりお酒を飲まない大内くんが、昨夜、寝る前にビールを飲もうとしてるので「どうしたの?」と聞いたら、
「ついに合併だ。長いことやってた仕事なので、終わってほっとした。前祝に一杯飲みたくなった」と言う。
そうか、お仕事頑張ったか。
思う存分飲んでくれ。
と言っても、缶ビール1本しか飲まないつつましい大内くんなのだが。

で、今日、会社に行って、飲み会で少し遅く帰ってきたので、
「どうだった?」と聞いたら、
「まあ、何もかもこれからだね。お互い知らない同士なんだし。食堂が大混雑してたよ。人数が一気に増えたから、無理もないけどね。僕はおにぎりを買って食べてるから、困らなかったよ」という答え。

大内くんは本当によく働いてくれる。
家族が屋根の下に住んでごはんが食べられるのも、息子が大学に行けるのも、私がレディースコミックを読みあされるのも、全部、彼のおかげ。
感謝してもしてもし足りない。

せめてものお返しに、家に帰ってきたらニコニコと出迎えよう。
お風呂も沸かしておこう。
あーん、してもらってることの大きさに比べて、バカみたいにちっぽけなお返ししかできないよぉ!
すまん、大内くん!

12年10月2日

合併のせいなのか何なのか、保険証が新しくなった。
各人1枚ずつのカードになっており、裏面には、
「脳死の際に臓器提供を行うつもりがあるか」という点を記入することができる。

お互い、自分はいいんだが、配偶者の臓器提供はちとつらい。
今のところそれぞれのカードに「臓器提供の意思あり」と記入してるけど、いざ脳死になって、身体はまだ温かいし、機械のおかげとはいっても呼吸をしている、という状態で「臓器を取り出していいですよ」とは言いにくい気がする。

「オトナの配偶者でもイヤなのに、息子だったら、と考えると背筋が寒くならない?まだ心臓が動いてるんだよ。呼びかけたら今にも目を覚ましそうなんだよ!」と言うと、
「キミは、本当に想像力がたくましい。特に、イヤな話をさせたら右に出る者はいないだろう。よくそこまでつらい考えが浮かぶねぇ」と半ば嫌がられ、半ば感心されてしまった。

脳死での臓器提供は、今後増えていくようにすべきだと私は思っている。
私も、母親が若い頃に大病をして腎臓を片方取っているので、
「オトナになったらママに腎臓をひとつあげよう!」と子供の頃から思っていた。
昔は、献血をすると本人や家族が手術などをする時に優先的に血液がもらえる、というシステムだったので、いつ手術するかわからない母のために、献血も熱心にしていた。
(その後、「売血」につながる、としてそのシステムはなくなってしまった)
日赤から、50回達成バッジを3回ぐらいもらったよ。

肝心の母はというと、元気に喜寿の祝いを迎えている。
何か、だまされたような気分になるのはおかしいだろうか?
だってさぁ、小さい時に、
「ママはいつ死ぬかわからない」って、不安な気持ちで過ごしたんだよ?
長生きしてくれるのは嬉しいけど。

そして私の臓器提供の件だが、もし、遺言をして死ぬ時間があったら、「提供してくれ」と大内くんに頼むつもり。
あと、「ありがとう」と言いたい。
どうか、私が死ぬ時に、大内くんにそう言う機会がありますように。
私の、最後の願い事です。

12年10月4日

私は夜食を食べるのが好きだ。
寝る前に布団の中で、マンガ読みながら食べる「オムライス」とか「マーマレードつきマフィン」とか「かつおの混ぜ寿司」とか。
たいがい息子に作ってやった昼ごはんの残りだったりするけど、昼間のうちにわざわざ作っておくことも多い。
なぜか「布団の中で」というのがシバリなんだよね。

でも、皆さんご存知の通り、夜食というものはたいへん健康に悪い。
特にダイエットには大敵だ。
なので私はほとんど毎晩ガマンにガマンを重ねている。

最近、睡眠時間帯が乱れて、夜中中起きていて、朝、大内くんを送り出してから寝る日が続く。
だから余計に「食べたい」気持ちを抑えなければならない。
この日記も明け方の4時頃書いていて、
「ゆで卵が食べたい」とか「キャンベルのコーンスープが飲みたい」とか考えているんだ。

「1日1500キロカロリー」という目標を掲げてのダイエットで、エクセルに計算させて頑張ってるんだが、食欲との戦いはなかなか難しく、つらい思いをしている。
私の場合、ある程度の量を食べないと悲しくなるので、1日2食で、1食はヨーグルトとか切り干し大根とかをつまんですませる、というルールでやってるよ。

そんな苦労をしても、体重はなかなか減らない。増える方はあっという間なのに。
今度、人間ドックを受けるのだが、きっと言われちゃうなぁ、肥満・・・

12年10月5日

「少年の町ZF(ゼット・フラッグ)」というマンガを読んでいたら、大内くんに、
「皇国の興廃此の一戦に在り、だね」と言われた。
くわしく聞くまで、戦争中の「ゼット旗」のことを知らなかった。
大内くんって、教養ある!
それとも私が歴史に弱すぎ?

マンガの中で、宇宙からの吸血鬼と闘う少年たちのリーダーの高校生男子が、
「やつらが知らないことがひとつある。オレが剣道4段だということだ」と言って決戦に臨むシーンがある。
息子の柔道につきあっていて知ったことだが、少なくとも今現在の高校生が柔道の黒帯を取るには、「14歳以上」でなければならず、さらに初段から 2段に昇段するためには、最短でも1年半、間をあけなければならない。
なので、「柔道4段の高校生」というものは存在し得ない。剣道もそれに準ずるものと推察される。
ま、このマンガが描かれたころはルールが違ったのかもなぁ。

それで思い出したけど、中学生で警察柔道と町道場のカケモチをしていた息子は、両方の指導者の方の主義から、黒帯を取るのは高校に入ってから、ということになっていた。
(上記のように、14歳、つまり中学生でも取ろうと思えば取れる)
なので、高校に入ってすぐに入部した柔道部では、顧問の先生が、
「さっそく初段を取る手続きをしなきゃ」と嬉しそうに面倒見てくれた。
高校在学中に2段まで取りたい、しかも最後の1年近くは大学受験の準備のため活動ができない、ということであれば、高1の時からせっせと大急ぎで段を取らないといけないのだ。

その甲斐あって、息子は卒業の時には2段になっていた。
世の中に「柔道初段」の人はけっこういる、ということを、彼が柔道を始めるまで知らなかったんだけど、2段となるとあまりいない。
まして3段4段ともなれば、警察官ぐらいなものかも。

うちのマンションの真下の部屋には、若い警察官が住んでいる。
若いっつってももう30は超えているだろうが、新築のこのマンションに越してきた時は新婚の雰囲気がありありと出た夫婦2人暮らしだったところ、この8年間に増えること増えること、今や3児の父。
産めよ増やせよ地に満ちよ。
柔道の方も5段ぐらいになってるかも。

くじ引きで当たった「理事会」を一緒にやったので親しくなった彼は、中学生だった息子とエレベータの中で乗り合わせ、カバンの端から柔道着の帯が出ているのを見て、
「キミは柔道をやっているの?エリはこう持つといいよ」と、1階までの間にワンポイントレッスンをしてくれたことがあるらしい。
警察官は頼りになるなぁ。
小学校の卒業式では、
「正義の弁護士になって、困っている人たちを助けてあげたいです!」と発表していた息子が、中学の間に「おまわりさんになりたい」と言うようになったのには、この出来事も関係してるのかも。

ちなみにその後、彼の将来の夢は、
「中学の社会科の先生になって柔道部の顧問になりたい」という非常に安全なものに変わり、警察モノのドラマを観ては、
「危険な仕事だ。何しろ、包丁を振り回す人がいてみんなが逃げ出す時、逆方向に走らなきゃいけないんだから」と心配していた私を安堵させてくれたが、そののちまた志望が変わり、「お笑い芸人」を経て、今は「テレビ局のディレクター」。
大変な狭き門だと思う。
警察モノは安心して観られるようになったが、今度はテレビ番組を観ては、「番組を作る人になれるだろうか?」と胸を痛める私。

さて、息子は何になるんだろう?
圧倒的多数が「サラリーマンになる」と思うんだけど。
「オレはリーマンにはならない」と豪語していた彼であるが、テレビ局はサラリーマンだよ。まさかフリー?
やっぱり、食べていけるかどうか、心配・・・

12年10月6日


「バイオハザード」というゲームの新作を買わされた。
ちょうど誕生日が近いので、「プレゼントね」と言って代金の6400円を渡したら、
「細かいね」と言う。
「いくら欲しいの?」と聞くと、
「誕生日なんだし、1万円ぐらいはねぇ」

しばし悩んだけど、結局あげました。
昔は誕生日というと欲しいものがいっぱいあって、何を買ってもらっても大感動していたものなのだが、今や物欲にまみれ、金銭のみに心を動かす。
情けないことだ。

ゲームもなぁ、そろそろ卒業するかと思いきや、まったくそんな気配はない。
カードを買わなくなったのが最近の唯一の明るい話題だ。
一時は、おこづかいをもらっちゃあカードにつぎこんでいたから。

何にせよ、もうじき19歳だ。
来年は成人。
「よくここまで育てて来たね」と、大内くんと話し合う。
ゲーム代ぐらい、気前よくあげるべきなんだろうなぁ・・・

12年10月7日

今日は予定通り甲府までドライブ。
天気はイマイチだが、そんなことはどうでもいいのがドライブのいいところ。
朝の5時過ぎに家を出て、7時半にコメダに着いてモーニングとシロノワールだ。
今日も「トーストにバターをたっぷり塗ってください」とお願いしたので、素晴らしいバタートーストだった。

9時まで店にいて、そこからはすぐ近くの「イオン」ショッピングモール内のシネコンで映画を。
本当は、その後温泉に行く予定もあって「テルマエ・ロマエ」が観たかったんだが、あいにく上映が終わってしまっていた。
第2志望の「踊る大捜査線」新作で勝負だ!
準備のために「レインボーブリッジを閉鎖せよ」と「ヤツらを解放せよ」も家で観てきたよ。

シネコンはできたばかりでキレイで、映画心が盛り上がる。
全席指定だから空き席を気にする心配もないし、何より、夫婦のどっちかが50歳以上だったら2人分が千円になるのだ。
2人で2千円!しかも指定席!こんなんだったらまた観に来たいね。
大内くんがおごってくれた「ポップコーン」も、350円で大きな箱にたっぷり入っており、コストパフォーマンスがいい!

いやぁ、久々にスクリーンで観る映画は違うね。
音が迫力あるし。
12月には我が家で大評判だったドラマ「妖怪人間ベム」の劇場版をやるらしいので、その時には絶対また来ようね!と大内くんと約束したよ。

映画が終わって外に出てみてびっくり。
がらんとしていた広い広い駐車場が、車の海になってた。
自分ちの車をどこに置いたかわかんなくなるぐらいだ。
甲府の人たちにとって、イオンは大きな娯楽なんだろうなぁ。
我々も、ショッピングモールでバスタオルとパジャマとこないだ私が割ってしまった息子のご飯茶碗を買った。
(まったく同じものがあったので、助かった。2個買っとこう)
売ってるものはややダサいが、ひとつところで何でも買えるのがショッピングモールのいいとこだ。
堪能した。

ついでに1階の食料品売り場(要するにスーパー)を眺める。とても広い。
ふーん、魚の「漬け焼き」をたくさん売ってるね。
みりん干しや粕漬けなど、いろんな種類がある。
売り場面積が広いから多岐にわたるものが置けるのかも、とは思ったが、刺身の方の感じを見ると、やはり山の中なので加工した魚が発達したんじゃないだろうか。
日本全国どこに行っても、地元のスーパーというのは面白いものだ。

歯磨き粉や油など、どーでもいいものをいくつか買う。
いささか妙だが、旅のおみやげだ。
そしたら、レジのとこで「セルフレジ」に出会った。
自分でバーコード読み込ませて、勝手にお会計を済ませるシステム。
生まれて初めて見たよ。驚いた。
「やっぱり、旅はいいね!」と大内くんと大いに喜ぶ。

買い物を終えて、次は温泉だ。
ネットで調べておいた「日帰りの湯」に行ってみたら、なんつーか、しょぼいけど実力がある感じの小さなお風呂屋さん。
昔は旅館として営業してたんじゃないかな。

1人900円という安い金額を支払って、バスタオルとタオルの入った手提げを貸してもらって、「中に、浴衣(よくい)がありますから」と言われて大内くんとお別れ。
浴衣があるなら、1時間ちょっとたったとこでロビーで1回会って、その後を決めよう、ということになる。
ネット情報ではサウナがいいらしいので、サウナの好きな大内くんにはゆっくり楽しんでもらいたい。

女湯に入ると、あまり広くない施設に入浴客が8人ほど。
でも、5つぐらいある浴槽は、
「熱くてたっぷりとした湯」
「とてもぬるくていつまででも入っていられそうな露天風呂」
「丸太を枕に寝そべって入れる『寝湯』」
「ぶくぶく泡の出ているバイブラ温泉」
「キンキンに冷たい、深めの水の浴槽」
と、温度も楽しみ方もさまざまなものがコンパクトにおさめられており、たいへん楽しめた。

サウナは、評判通りとても熱くてだらだら汗が出た。
壁にテレビが埋め込まれているのも、日頃からサウナでは退屈しがちな私にとってはありがたい。
「甲府でも『四谷大塚』の宣伝をやるのか!」とか楽しみながら汗をかいた。

何度もサウナと水風呂を往復したり、ぬるい露天にぼーっとつかったり、寝湯で半分寝そうになったり、1時間15分があっという間。
「大内くんと相談してもう1回入ろう」と決め、パジャマのような浴衣に着替えてロビーに出てみると、これまた浴衣に着替えた大内くんが「課長 島耕作」を読んでる。
「あ、どうだった?ここ、すごいよ。マンガがいっぱいある。休憩室も、仮眠が取れそうだよ。マッサージの人なんかもいるようだから、キミは足でも もんでもらったら?今日は僕のおごりなんだから、贅沢してよ」と言われた。
まあ、マッサージはいいよ。

「あなたはもういいの?」
「うん、僕はもう終わりでいいよ」
「じゃあ、私、もうひと風呂浴びたいから、10分待ってて」と頼んで、再び浴槽へ。
あ〜、水風呂は気持ちいい〜

服に着替えて上がってみたら、大内くんも着替えをすませていた。
「今度、もっと長い時間かけて楽しもう。お風呂の合間にマンガを読むのもよし、昼寝をするのもよし、だよ」と大内くんは嬉しそう。
久々に大ヒットな温泉に出会った。お湯の質もいいし。
本当にまた来よう。

これで、甲府での用事は全部すんだので、あとは東京に戻るだけ。
大内くんの運転で高速に乗る。
我々はなぜか、東名高速よりも中央自動車道の方が好きだ。
商業車が少ないせいかもしれない。
夜に通ると、甲府盆地の街の灯が宝石箱をぶちまけたように美しい。
次に来たら、帰りは夜になるようにして、夜景も楽しもうかな。

甲府を出たのが2時半頃で、出口付近では軽い渋滞があるみたい。
ただ帰るだけで時間の制約はないので、のんびり行こうと思ったんだけど、大内くんは、
「手前で降りよう。そしたら昨日キミが行きたいと言ってた唯生の面会に行けるよ」と言う。
それはいいね!
予定が美しく詰まった今日という日の、思いがけない仕上げだよ。

というわけで、府中付近で高速を降り、唯生の施設に。
唯生は、もう点滴も外れて、腸ろうからの栄養補給が順調に行われているらしい。
「胃ろうからは、相変わらず空気が抜けますか?」と看護師さんに聞いたら、
「抜けますね!本当にたくさん、空気を飲んじゃうんです」。
「どうしてでしょうね?」
「私たちにもわかりません。唯生ちゃんの、趣味だとしか」
「趣味:空気を飲むこと」
履歴書には書けそうもないなぁ。

しばらく唯生の笑顔を楽しんで、次に来る時には「胃ろう」「腸ろう」の扱い方を教えてもらうことにして、帰る。
唯生はとっても機嫌がよかった。
手術の連続で減ってしまっていた体重もずいぶん元に戻ったんだそうだ。
遅くとも、お正月には外泊できるといいね。

唯生と別れて、本日最後の予定、近所のイタリアン・ファミレスに。
最近ここのピザにはまっていて、週に1回か2週に1回ぐらいやってきてはピザだけ4枚も食べる我々。
お客さんとしては珍しいパタンだろう。
今日は、いつものトム・ハンクス似の店長さんはいないなぁ。
それでも、気に入りのベンチシートのテーブルが空いていたのでそこにすわらせてもらう。

だがしかし、今日の我々は、いつもよりおなかがすいていない。
朝早くコメダのモーニングを食べただけなのに。(映画館のポップコーンが効いてる?)
「今日は4枚は難しい。3枚にしてみよう」と、トム・ハンクスの次に偉そうに見える男性にオーダーを。
注文を聞き終わった彼は言う。
「今日は3枚でよろしいんですか?」

あああ、我々は完全に把握されてる!
「ピザを4枚も食べる、あの夫婦がまた来たよ」とか厨房やフロアで有名になってる!
すまんが、今後は「ピザ3枚の夫婦」になるかも。
「ついに歳だね、あの夫婦も」とか、言われちゃうのかしら!?

すっかり嬉しくなりながら3枚のピザを食べ、満足して帰る。
家に着いたのが6時頃。
息子は出かけてしまっていた。

ドライブ→コメダでモーニング→シネコンで「踊る大捜査線」→イオンでお買い物→温泉でまったり→再びドライブ→予定外だったが唯生の面会→家の近所でピザ→無事帰還

12時間の間にこんなにびっちり予定をこなすとは、いくら効率の申し子である私でも、ちょっと感心しちゃうほどの半日だったよ。
どの瞬間も楽しかった。

パーキングでトイレに行った時など、雑踏の中で、
「わあ、カッコいい男の人がいるなぁ!」と思うと、たいていそれは大内くんだ。
自分の夫が、見た目100パーセント理想の男性だというのは、とても運のいいことだと思う。
それでもって中身は親切で真面目。
これ以上の人がいるだろうか。

そんな大内くんと、楽しく過ごせて本当によかった。
「甲府は絶対また来よう。今度はもっとのんびりするよ。帰りは夜の中央道を楽しもう」と約束した。
鮮魚売り場で「焼いた鯛のおかしらつき」なんてものを売ってる、あの奇妙なスーパーをもっとよく見てみたい。

12年10月8日

大内くんは、自転車を盗まれてしまった。
「帰りの都合で、いつも駐輪場に停めてる駅前じゃなくって、隣町の駅前の安全そうなところに置いて、ちゃんとチェーンもかけておいたんだけど、 夜、戻ってきたらなくなってたんだ」とのこと。
我が家は駅から離れているので、自転車なしでは暮らせない。
しょうがないから買いに行くことにした。
まあ、長いこと使ってたからねぇ。
(でも、「そんなボロ自転車を、なぜチェーンを切ってまで持って行くのか?」という疑問は残る)

私は自転車をゆっくりこいで、大内くんは歩きで、徒歩30分の駅前に着き、いつもの自転車屋さんで1万円を切る安いママチャリを買った。
ついでに私の自転車がきしむのも直してもらい、自転車を預けたまま、駅ビルへ買い物に。
スタバでコーヒーなんて飲んじゃうよ。

しばらくカウンタ席でコーヒーを楽しんだあと、駅ビルの中の優秀な魚屋さんに。
ブリの切り身が安いなぁ。照り焼きにしよう。イカもおいしそう。大根と煮てみようかな。
納得のいく買い物ができて、楽しい。

自転車屋さんに戻ったら、新しく買った自転車がスタンバイしていた。
久しぶりの新車に、大内くんは嬉しそう。
毎日通勤に使ってる、愛車だからね。

3連休最後の日が、こうしてのんびりと過ぎていく。
晩ごはんは、もう1年近く毎週末食べている「水餃子」。
大内くんはちっとも飽きないらしい。私もなんだけど。
息子は早々に離脱したが、面白いことに時々「戻って」くる。
つまり、彼としては「最近食ってねーな」となり、我々と鍋を囲む日があるのだ。
3カ月に1回ぐらいかねぇ。
彼のサイクルはそういう感じらしい。

4日会社行ったらまた週末。3連休には、そんな効用もある。
毎日楽しい!

12年10月9日

昨日買ったイカと大根で、煮物を作った。
でも、今日は誰も家にいないの。
大内くんは接待だし、息子は出かけたきり。
まあいいや、冷蔵庫に入れておこう。

そしたら、10時ごろ帰ってきた息子が、
「晩メシ、食いたい」と言ってきた。
いつもなら面倒なばかりだが、今日は作り置きのチャーハンがあるからそれをあっためてあげよう。

と、息子が煮物の入っているでかいタッパーに興味を示した。
「それ、何?」
「イカと大根の煮物だよ。食べる?チャーハンもあるけど」
「どっちも食いたい。両方出して」とのリクエストにお応えして、食事の支度をする。

どうも、息子はこの煮物が気に入ったらしい。
「イカのやつ、もうちょっとちょうだい」
おかわりをされてしまった。

「イカを、大根と煮ると、やわらかくなるんだよ」と教えたら、むちゃくちゃ素直に、
「不思議だねぇ」と答える息子。
そうか、おいしいか。
煮物がおいしい、と言ってもらえるだけで幸せになってしまう妙な生き物、それが母親。
もうちょっと新しいメニューを考えなきゃなぁ。

12年10月10日

今日は息子の誕生日。
せっかく「体育の日」に産んだのに、10年ぐらい前から体育の日は不定期になってしまった。
ま、今でも「10月10日=柔道の日」と読めるので、息子にはふさわしい日かも。

昨夜夜中、日付が変わると同時に大内くんと2人で息子の部屋になだれ込み、「誕生日おめでとう!」の声を浴びせた。
本人には何の感慨もないようだが、来年はいよいよ成人。
未成年の生活もあと1年だ。
ここまで元気に生きてきて、お疲れさま。
今後とも精進して頑張ってほしい。

そんな誕生日だが、息子は何事もなく大学に行き、私は人間ドックを受ける。
大内くんの会社で主婦のために受けさせてくれるのだ。
場所はうちから徒歩3分のちょっと大きめの病院。
朝、地図を確認しないで出かけたので、家の近所だというのに道に迷った。

通りかかる人々に、
「すみません、○○病院はどのへんでしょうか」と聞きまくる。
まったく間違った情報をもらって遠くまで行ってしまったうえ、何人かの男女は話しかけても完全に無視していた。
人情紙の如し。

何とかたどり着いて、そこが我が家の裏であることを知り、愕然。
どうしてなんだろう、これまで幾度となく前を通っていたのに。
方向音痴は死ぬまで治らないとみえる。

さて、何とか受付時間内に病院にたどり着き、ロッカーのカギをもらって、検査着に着替える。
人間ドックにはけっこうな人数が来ていたけど、少し待つものの、9時から12時までの3時間コースが終わった。
胃部レントゲンとか肺レントゲンとかは全然めずらしくないけど、聴力検査や眼圧の検査ってのは、マイナーだね。
婦人科検診で内診されるなんてのも、19年ぶりです。
「直腸の筋肉が切れてしまっています。問題はないですが、難産でしたか?」と言われた。
やっぱりお産は命がけ。

ところで、採血をする時、小さな試験管の中に自分の血液が細い糸となってほとばしって行く、ってのが好きな人はいませんか?
実は私はこれを見るのが大好き。
今回も、堪能させていただいた。
「あー、生きてるなぁ!」って、実感がわきません?

検査が終了して30分ほど待っていたら、「医師との面談」がある。
今日のデータが早くもお医者さんの手に渡っているのだ。
もっとも、引退寸前の老医師の適当な仕事という感じではあった。
あいかわらず肥満。
まあ、それ以外はおおむね健康なようだ。

終わったら食事券をもらった。サービスいいなぁ。
病院の地下にあるレストランで、「鮭のねぎ味噌焼き」の定食を食べた。
この病院は緩和ケア(ホスピス)の設備もあるし入院もできるようなので、何かあったらお世話になるかも。

読者の方々も、どうぞ健康には気をつけてください。
検診や人間ドック等の機会は、お見逃しなく。

12年10月12日

大内くんは会社でよく会議に出る。
そういう時に、
「昔は女性がお茶を入れてくれたものだけど、そのへんの労力削減のためか、各人の前に缶やペットボトルのお茶が出るんだよ」と言う。
なかなかいいじゃないか。

ただ、大内くんは個人的にあまりお茶が好きでないらしく、その缶ないしペットボトルのお茶は、大内くんの机の上にたまっていくらしい。
「人にあげたりしている」と言うので、私は激昂した。
「なんで家に持って帰ってくれないの!?私はお茶が大好きなのに!」
セコイ、と笑わば笑え。

そんなわけで、大内くんは缶のお茶を5つばかり持って帰ってくれた。重いだろうに、ありがとう。
もっとも、冷蔵庫に入れて数時間のちには、私以上にセコくて目ざとい息子が1つ飲んでしまったが。

会社って、面白いとこだなぁ。
私は7年しか勤めなかったし、「男女雇用機会均等法」前年の入社だったので、男性のアシスト的な仕事が多かったが、それでも楽しい記憶もたくさんある。
個人的には、海外のお客様相談センターみたいな部署が一番面白かった。

大内くんとの結婚が決まったし、身体を壊したせいもあって、寿退社。
こんなこと、言っていいのかどうか知らないが、寿退社は一般退社より退職金が多いのだ。
私が勤めていた会社は電機メーカーで、業界一モダンだったはずなのだが、当時はまだそんな風習が残っていたんだね。

4つ年上の私が入社した時に大内くんは大学に入学し、その後留年に留年を重ねて、ついに私が働いている7年間、ずっと学生だった。
時々会社まで来ては、昼ごはんをたかっていったものだ。
ストーカーよろしく会社の前で待っていたこともあり、社屋を見上げては、
「こんな大きな会社に勤めてるカッコいいお姉さんが僕とつきあってくれてるんだ!」と勝手に感動していたらしい。

今でも残念なことに、2人が同時に勤めていた時期というものがほとんどなく、お互い仕事が終わってから六本木でデート、なんてことはなかった。
デートはたいがい、当時私が住んでいた下北沢、安い居酒屋で、それすらワリカン、ひどい時は私のおごりだった。
なんであんなにお金のない大学生とつきあっていたのだろうか?

お茶の話からずいぶん遠くに来てしまったが、人間、自分の食い扶持を稼ぐのは大事なことだ。
今は親のすねをかじっている息子にも、早く自分で稼いでもらいたい。

12年10月13日


お休みだから、隣町まで散歩した。
お昼は「野方ホープのラーメン」と決めていたので、足どり軽やか。
しばらくラーメン食べてなかったからなぁ。

11時半ごろに着いたので、開店後30分の店内はかなり混んでいた。そろそろ列ができる頃だ。
5段階の「油っこさ」を真ん中の「ふつう」と指定して、運ばれてきたラーメンを食べる。
やっぱりおいしい。
でも、昔はデフォルトで「煮卵」がついてきた気がするんだが、入ってないね。
実質値上げ?

お店が値上げするなり盛りを小さくするなりするのはしょうがないよね。原料費が上がってるんだから。
週に1、2回外食をする我々にとっては厳しい話だが、どのお店も繁盛してくれるのを願う。

満腹してホープを出て、優秀な魚屋さんへ。
今日もイカを買った。ワタ抜き、皮むきをやってもらうので、料理がとても楽。
息子が気に入ったようだから、大根と煮てあげようと思って。
でも、気をつけないと、彼はあっという間に「飽きる」からなぁ。
おかずを考えるのも、大変だよ。

雑貨屋さんでお香を買う。今日は「金木犀」の香り。
今、ベッドわきの引き出しには10種類ぐらいのお香が入っている。
毎晩セレクトして火をつけ、立ちのぼる香りを楽しむのが私の贅沢。
「これ、金木犀なんだけど、どう?」と大内くんに聞いたら、
「今、風邪なのか、鼻が利かなくてわからない」という返事。

最近テレビで見たので、
「秋の花粉症、ってことない?風邪の症状に似てるから気がつかないけど、けっこう秋も花粉が飛んでるらしいよ」と言うと、
「そうかもしれない」と、ちょっと苦しそう。
おりしも街は金木犀の香りに満ちている。
「それもわからない。でも、花が咲いてるってことは、花粉も飛んでるってことだよね。やっぱり花粉症かなぁ」と言いながら寝た大内くん。
早く良くなってくれ。

12年10月14日

この夏ずいぶん日に焼けて、薄いそばかすがシミになりかけている現状を憂えて、高い化粧水と乳液を買った。
高い、っていってもドラッグストアで買える2、3千円のもの。
まあ、それでも私には清水の舞台だったけどね。

大内くんは常に寛容で、
「化粧水を買いたい?キミはふだん全然お化粧しないんだから、基礎化粧品ぐらいはお金をつぎ込んだらいいじゃない。買いなさい買いなさい」と言ってくれた。

昔、OLになったばかりの頃は「クリニーク」のフルセットを使っていたものだ。
渋谷の東急1階で数万円の買い物をする私を見て、大内くんは、
「さすがは社会人のおねーさんだ!」と感心していたらしい。
今やドラッグストア。

大内くんからすると、
「CMとか見てると、女性は『落ちないファウンデーションや口紅』をつけて、それを『すぐに落ちるクレンジングクリームや洗顔料』で落とす。こういうのを『矛盾』と言うのではないだろうか」と思えるらしい。
確かにね。
私が不思議なのは、ドラマなどで女性が男性の胸に顔をうずめるシーン。
ファウンデーションも口紅も、ワイシャツについちゃうじゃないか。家庭争議の元だぞ。

私はここ30年ぐらい常時すっぴんなので、上記のような心配はない。
(そもそも昔からファウンデーションをつける習慣がなかったし)
おかげさまで、喫茶店のおしぼりで顔をふく、なんてこともできる。
さすがに首筋まではふかないが。

思えば、15年ぐらい前、年末の大掃除の時に大内くんから、
「物を捨ててくれ。整理しないと家はすぐにパンクするんだよ」と言われ、やけになってクロゼットの奥の口紅やアイシャドウ、マニキュアなどをゴミ袋に突っ込んでいたら、当時5歳ぐらいの息子が心配そうに、
「ママ、それ、ぜんぶすてちゃうの?」と聞くので、
「いいんだよ。ママはもう、爪に色塗ったりキレイになったりしないんだから」と答えたら、大内くんのとこにすっ飛んで行って、
「パパ、たいへんだよ。ママが、もうキレイにならないんだって!なんとか言って!」と訴えていた、なんてこともあったなぁ。
そしてそのまま、私は2度とキレイにならなかったのでした。

でも、最近は年配の女性でキレイにお化粧してる人とか見ると、なんだかエライなぁ、と思う。
女性であることを放棄して久しいので、ちょっと反省してるかな。
それでもやっぱりお化粧はしないんだけどね。
ま、せめて素肌を大事にしましょう。
買った化粧水とかを使い始めて1週間ぐらいしたら、大内くんから、
「なんか、ほっぺたがつるつるしてるね」と言われたので、値段なりの効果はあるのかも。

12年10月15日

最近、悩みが多い。こういうのを「内憂外患」と呼ぶのだろうなぁ。
しかも、あまり人に言う気にならないような悩みだ。
恋の悩み以外を持たなかった若い日がなつかしい。

そのせいで、筆が重い。
こういう時はそれなりに受け流すと言うか、「しょうがない」と開き直るしかないのだ、と大内くんは言う。
先週は甲府にドライブに行ってあんなに楽しかったのになぁ。
また行ってみたら、とも思うが、楽しめない時に行くのはリスキィだよね。
もうちょっと元気が出たらにしよう。

目玉となっている悩みのひとつは朝起きない息子。
大学生活も後期に入って、前期はそれなりに真面目に起きて学校に行っていた彼が、自主休講や何やらで、時間が不規則。
しかも、1限のある日は7時半に起きなければならないのに、自分ではまったく起きられないのだ。
しょうがないから起こしているが、「起こしてくれ」と言ったことを忘れているのか、「うるせーな!今、寝てんだよ!」と罵倒してくる。
何とかそこを抜けても、「あと5分」「あと3分」という感じを5、6セットやらないと起きない。
最後はもそもそと起き出してくるものの、彼を起こす、というプロジェクトは40分以上かかる。
週に2回はこれがあるのだ。

さらに、1限があれば大内くんが起こしてくれるが、2限からとなると、起きるのは9時。
大内くんはとっくに会社に行っている。
そして、私は「話の通じない人」と関わるのがものすごく苦手だ。
怒ってる人を40分もかけて起こす、その作業は激しい苦痛以外の何物でもない。

今日も苦労して起こした。
シャワーを浴びて出かけてくれると、心底ほっとする。
いっそ外泊でもしてくれて、授業をぶっちぎって寝ていても親が見ないですむ方がありがたいかも。

大内くんは、
「もう、ほっとこうよ。遅刻しようが授業に出られなかろうが、本人の問題だよ。自分で困ってみるしかないよ」と言う。
でも私は、「頼まれたことはやってあげる」タイプだ。
「うるせー」と言いながらも、「じゃあ、起こさなくていいんだね?」と聞くと、「起こせよ」と威張って言う彼を、ほうっておけない。
遅刻や休講がかさんで単位を落としても困るじゃないか!とも思うし。
いや、大内くんの方が正しい、ってのはわかってるんですけどね。

ここまでの彼の人生で、自分1人で起きて学校に行っていた時期は早寝早起きだった小学生時代ぐらいなものだ。
さらに、彼はある程度の睡眠時間をしっかり取らないと目が覚めない「お子様体質」なのに、大学の夏休みを通して、夜更かしの癖がついてしまい、これまでは12時頃には寝ていたところを、1時2時まで起きている。
起きられるわけがない。

私はとても寝起きがいいタイプだが、大内くんは悪い。
そんな大内くんでも、会社員を20年以上やってる間に超早起きになり、毎朝5時頃に起きている。
息子もこれからだんだん寝起きがよくなるんだろうか。
30歳ぐらいになって、コドモの面倒を見るためにいやでも早起きするしかない、という時期まで、無理かもしれないなぁ・・・
まあ、その頃の彼を起こす苦労は彼の奥さんになる人にお願いしたい。
30になっても寝起きの悪い息子を親が起こす・・・それは何としても避けたいところだ。
そう思えば、今のうちに手を引くべきかもね。

12年10月17日

息子は自分が使ったお皿を洗わない。
もう1年以上も我々とは別に自室で食事をしているが、なんとかお盆に乗ったお皿を下げるところまでは仕込んだものの、「洗う」段になるとまったくやる気がないようなのだ。

あんまりだと思うので、
「お皿、自分で洗って」と真っ向から言ってみたけど、「やだ」のひと言。
行きがかり上、
「じゃあ、ごはんは作らない。自分で適当にして」と言ってしまったため、息子は今、自給自足。
もっとも自分で作るわけではなく、冷蔵庫に入っているおかずやごはんを、温めて食べている状態だ。

家で食べないことも多いのでこの「自炊」はまだ数回しか行われていないが、これからどうしたらいいんだろう。
今朝も、「メシ」と言われたので、「お皿を自分で洗う気になった?」と聞いてみたら、「いいや」という答え。
「じゃあ、作らないよ。自分でやって」と言うと、キッチンで何やらお皿をガチャガチャ言わせ、レンジにかけている雰囲気だ。「自炊」かぁ。

始めてしまったケンカのおさめ方は難しい。
今回のようにこっちに多少の「得」がある場合はなおさらだ。
頼まれたことを断るのはとても苦痛だが、もうしばらくガマンしてみよう。

12年10月18日

大内くんは大阪出張で泊まり。
泊まりは珍しいんだ。

肩こりのひどい私は、毎晩大内くんにシップ薬を貼ってもらってるんだけど、自分ではできない。
今日は断念しておこう。
息子が代わりにやってくれるとは到底思えないし。

夜11時頃、ホテルの部屋に入ったという大内くんから電話があった。
「今、飲み会が終わって宿に入った。しょぼいビジネスホテルのシングルだよ。することないから、もう寝るよ」とのこと。
明日は朝6時の新幹線で東京に戻り、そのまま出社するそうだ。サラリーマンは大変だね。
息子もなかなか帰ってこないし、もう寝ちゃおう。

と思っていたら、大内くんからまた電話。
「寂しくて眠れない。また声が聞きたくなった」
嬉しいが、いい年をした出張中のサラリーマンのセリフとも思えないね。
しばらく話をしたら落ち着いて眠れそうな気分になってきたらしいので、よかった。

この日記を愛読してくれている部署の後輩から、
「奥さんは寂しいでしょう。埋め合わせをしてあげてくださいね」と励まされたらしい。
S社総務部のHさん、どうもありがとう!でも、本人も寂しいらしいです。

12年10月19日

レンタルビデオで、「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」という映画を観た。
あの有名な元英国首相サッチャー女史は、今現在「認知症」らしい。

大好きなダンナさんが死んでしまったことも理解できない映画の中の様子に、涙がじんわり。
認知症はイヤだよ。大内くんのこと、忘れちゃうかもしれないなんて。

そう言ったら、大内くんは言う。
「僕は毎日、『はじめまして。おはようございます。ステキな方ですね。少しお話をしませんか?』って言うよ。新しい日が来るたびに、新しく恋をしよう」
うーん、こんなことを言ってくれる人が、世界中に他にいるだろうか。

大内くんとひと目で恋に落ちて30年。
夫婦だから新鮮味が落ちるのはしょうがないとして、それでも可能な限り恋をしている日々。
この幸せが、少しでも長く続きますように。

12年10月20日


息子がバイトしてる塾の塾長と、個人的な面談。
つーか、飲みに行った。
小5の頃から教えていただいてたのが、今年は本人も大学生になったことだし、講師に雇ってもらい、塾長から、
「しばらくは大学生活やバイトのことが気になるでしょう。月に1回ぐらい『報告会』でもやりますか」と言われていた。
それは願ったりかなったりの企画だが、忙しい塾長をそんなにしょっちゅうは誘えない、と思い、今のところ「2月に1回」の報告会をお願いしているのだ。

駅前の居酒屋で飲みながら、息子についてさまざまな情報をいただいた。
ここには書けないことが多いので、皆さん勝手に想像してください。

実は息子は「塾のバイトをやめたい」と言っており、塾長もそう聞いている、とは言ってたが、それって、大ピンチじゃない!
8年も前からやりたかったことが、「今はお笑いに専念したい」という理由で終わっちゃうの?!
だいたい、彼が塾をやめたら、我々が今入手している「息子情報」を誰からもらったらいいのか?

幸い、翌日、塾長と息子で個人面談的な話し合いをやってくれた。
「息子さんはとりあえず『やはり塾で教えるのは面白い』と思ったらしく、今後も働かせてください、って言ってきましたよ。私としてはウェルカムなので、そう言っておきました」
ああ、よかった!

息子も20年近い人生においては、いろいろ思うところもあろう。
それがまるっきりない、というのも人間としてどうかと思うし。
でも、親はあれこれ期待したりはらはらしたりの連続。
彼は、いつオトナになるのかなぁ・・・

12年10月21日

家から隣町の大きな公園に行く途中の道が、ずっと工事中の幕が張ってあって、いったい何ができるんだろう?と首をひねっていたら、なんと、公園で した。
もともと南の方へずいぶんのびてきていたんだが、今回、さらに我が家に近づいた。
公園の方から迫ってくる、ってのは初めての体験だよ。

今日までの「グリーン・フェスティバル」が開かれているそうなので散歩のコースに加えてみたら、かつてうっそうとしげる森だったところが明るく広々とした公園になっていた。
花もたくさん咲いていた。私は特にコスモスが好きだ。

とても暑い日で、30分かけて駅前まで行ったらくたくたになってしまった。
いつも行くスタバで、普段は「ホットのラテ、トールで」と頼むんだが、思わず「チャイラテのアイス、トールで」と注文しちゃったよ。
大内くんはいついかなる時でも「ホットコーヒー、ショートをマグカップで」。
いや、とにかく暑い。
ニュースで「9月並みの陽気」とか言われそうだ。

「公園を抜ける散歩は楽しいね。これから寒くなってきて、散歩にはちょうどいい気候になるし」と大内くん。
うん、とても楽しい。
脇にグラウンドもあり、そういえば息子が中学の頃とか、よく夜中に友達に誘われてグラウンドまで出かけ、筋トレしていたというウワサもあったが、 本当か?
今日見た限りでは、確かに筋トレしに来てるような人もいるねぇ。

大内くんが驚くのは、
「また輪島を見ちゃった。いつも犬を連れてゴミを拾って歩いている!」ということらしい。
輪島さん、近所に住んでるのかな?
でも、大きなシェパードをノーリードで歩かせちゃダメだよ。大内くんが怖がってるじゃないか。

安い魚屋さんに行き、ブリの切り身とイカを買い、さて、明日のごはんは決まってるね。
今週もいい週末だった。
またのんびり散歩しよう。

12年10月22日

大内くんは、息子がかつては生徒として、今はバイト講師としてお世話になっている塾で、教えたいと言う。
どこまで本気なのか。
でも、ここ半年ぐらい、彼は毎晩寝る前に受験時代の参考書を読んだり英単語を覚えたりしてるみたいなんだよ。
「さすがに息子と同じ時期に教える、ってのは無理だと思うので、息子がバイトを辞める日が来たら、塾長にお願いして雇ってもらえないかなぁ。こ れ、けっこう真面目な話なんだよ。だから、土曜の夜とか僕がいなくてもキミがいいって言ってくれたら、塾長と話してみたい」

塾で教えたい、という話自体は何度か塾長と話しているけど、けっこう真剣になってきたみたいね。
で、今回塾長と話す機会をいただいたので、さっそくその話をする大内くん。
「今すぐというわけではないんですが、数年以内に講師をやらせてもらえないでしょうか。定年まではとても待てない気分なんです」

さすがの塾長もこういう話だとは予想してなかったそうで、「うーん」とうなっていたが、しまいには、
「私も、ぜひ大内さんと働いてみたいです。どうぞよろしくお願いします」と言ってくれた。

会社員がバイトしちゃいかんだろう、と思うんだけど、大内くん的には趣味で教えたいだけなので、無償のボランティアでかまわないんだっ て。

実現すれば「親子2代の講師」になるわけだ。ちょっと珍しいかも。
私は私で、
「それが実現したあかつきには、私が英語の授業を受けに行くつもりです。もちろん授業料は払います!」と思いのたけをぶちまけた。
迷惑な夫婦だなぁ、我ながら。

そんなわけで、大内くんは今日も寝る前のお勉強。
この力を会社に向けたらもっと出世というものをするのかもしれないが、私は現状に何の不満もない。
でも、やっぱり大内くんって変わってるよ。

12年10月24日

息子はとっても寝起きが悪い。
起こすこちらとしては、毎朝、人生がイヤになるぐらいだ。

息子に苦情を言ったら、翌日、「むちゃくちゃ音のデカい目覚まし時計」を買ってきた。
これで起きようという腹か。
1人では起きられないのを少しは気にし始めているようだ。

でも、やはりというかなんというか、その「むちゃくちゃ音のデカい目覚まし時計」でも息子はまったく起きなくて、結局我々ががうるさい思いをするばかり。
とうしたら起きてくれるんだろう?もう20歳になろうって言うのに。

大内くんは、
「単位を落とすと困るから大学の授業のある日は起こさざるを得ないけど、ない日は、起こさなくていいよ。友達との約束とか、個人的な用件で1回怒られたり見限られたりしなきゃわかんないよ」と言う。
もっともなんだが、問題は、私が「人に頼まれたことはやってしまう」という点。
寝る前に、
「明日は9時に起こして。授業?ないけど、用事がある」と言われたりするともうダメ。
大内くんが言うように、「無視する」という技を身につけないと話にならないかもね。

12年10月26日

今、ドラマで「高校入試」ってやってるじゃないですか。
我々が観る前に息子が勝手に第3話まで見たらしい。

これが、非常に面白いドラマで、4年前に高校入試を受けた人でも簡単につかまえてしまうようだ。
実際、我々ですら自分たちの高校時代を思い出したし。
大内くんは中高一貫だったので、高校入試は経験ないんだそうだ。私は中学受験の経験ないけど、高校はちゃんと受けたぞ。

ちょっとサスペンスっぽく作ってて、ポイントは、
・青っぽい照明
・不安をかき立てるような音楽
・登場人物のワケあり感
といったところか。

今季は、「高校入試」以外にも「MONSTERS」とか「大奥〜有功編」が超おススメ。
ただし、「大奥」は原作を読んでファンになってる方だけが観るといいと思う。
堺雅人は大好きだが、彼をもって「もんのすごい美男子」と言うのはちょっと無理があるんじゃないかなぁ。

そうだ、キムタクの「PRICELESS」も観なくっちゃな。
これが当たるかどうかで今季の運が決まる気がする。
いや、「高校入試」だけでも充分スゴイんですけどね。

12年10月27日

3年前に急死した高校時代の友人を偲んで、今年も友人たちと追悼会をした。
病気療養中のプログラマと美術評論家のタマゴ、2人とも男性だ。亡くなった友人も男性。
大内くんもつきあってくれて、私は紅一点。少しいい気持ちだ。

居酒屋で乾杯しつつ、あっという間に3年がたってしまったねぇ、というのが共通の感想。
10年に1回ぐらいしか会わなかった人々と、友人が亡くなってからは毎年命日付近に会っている。
亡くなった時にはみんなで自宅にお焼香に行った。(ご家族の希望で密葬だったので、葬儀には行ってない)
その時に飲んで以来、3回目の集いということになる。
「ま、集まれるうちは集まりましょう」と言ってくれる友人たちなので、ありがたい。

プログラマは、去年、好きな歌をたくさん入れたUSBメモリをくれたのだが、「シロウト向けに編集してある」と言っていたので、「今年はクロウト向けのものをもらってみたい」とリクエストしておいたら、ちゃんと用意してくれていた。
しかも3本も。
一応メモリ代千円を支払っておいたが、彼の労働力は無償だ。ありがとう。

楽しく飲み放題した。
というのも会の主旨を思えば不謹慎かもしれないが、故人は、我々が嘆き悲しむことを望んではいないだろう、と思う。
高校時代に出会ってもう35年。
私の、現存するもっとも古い友人たちだ。
勝手に減らないでほしい、と、ちょっと腹を立てる。
もはや50を過ぎてしまった我々だが、この先30年ぐらいは会い続けたいものだ。

2時間半ほどでお開きになり、大内くんと家に帰って、寝る前にもらったUSBを聴いてみた。
よくわからない歌はアニソンだろうか。
でも、それ以外の歌は、基本的に、古い。
「ブルー・シャトー」とか「愛の奇跡」とか、私はこれにとてもよく似たものを聴いたことがある。
それは、大内くんが自分でようつべから拾った「大内くんセレクション」。
本人も、
「○○さん(プログラマ)の趣味は、僕の趣味の延長線上、遥か彼方ではあるが、方向性は同じかもしれない」とつぶやいていた。
キミは、「巨人の星」や「月光仮面」の3番までなんて、聴いたことはないだろうが。私も初めて聴いた。たまげた。

あまりにプログラマの趣味が理解できるうえ、話をしていても細かいところまで通じてしまう彼らなので(「線形代数が面白いですよね!」なんて話は普通しないだろう)、大内くんは、自分がもし早死にしたら独身の彼に私のことを頼んで行きたいそうである。
向こうには迷惑な話だろう。

生きている。
そんな当たり前のことが、とてつもなくありがたく思える晩だった。
これから、「櫛の歯が抜けるように」、友人が減って行くんだろうなぁ。
「僕らだって、いつ見送られる側になるかわからないよ」とプログラマ。
こちらも独身である美術評論家のタマゴは、現在同居のお母さんの面倒を見るのが大変で、あまり自分の寿命のことまでは考えが回らないらしい。
我々の中で一番老人に慣れているのは彼だろう。
プログラマも、両親が入所している老人ホームのすぐ近くに住んでいるので、よく会うそうではあるが。
みんな、親孝行だね。
同じ都内に住んでいながら数年に1度しか顔を見せない大内くんは、長男としてどうなんだろうか。

そういう私も長いこと名古屋に帰っていない。
友人のお墓が名古屋にあるので1度お参りしたいと思っているんだけど行ってない、ってことは、3年以上たってるってことだなぁ。
時々電話はするが、息子と同い年の甥っ子まで入れると3世代同居のなかなか大変そうな現場だ。
父が亡くなったのが9年前。
それ以来、母は急に老け込んだように見える。
長生きしてほしい。

自分も、あと何年生きられるのかなぁ、と考えることがある。
特に、本棚の前に立つと、
「この本たちの多くは、死ぬまで読み返さないままなんだろうなぁ」と思う。

ひるがえって息子を見ると、彼の人生はまだまだ無限の可能性に満ちているようだ。
残りの寿命が30年なのと60年なのはそんなに違うかねぇ、とも思うのだが、やはり、若いってことはうらやましい。
でも、たぶん親の世代からすると、我々を見ては、
「まだまだ若いんだから、老け込むな!」ともどかしい思いなんだろう。

人生について、ちょっとまじめに考えた晩だった。

12年10月28日

ついに「自炊」を始めた。
とは言っても、ごはんはずいぶん前から自分たちで作っている。
この場合の「自炊」とは、書籍のデータ化である。

プログラマの友人と2年前に会った時、彼が手持ちの本を全部「自炊」して家にはもう1冊の本もない、という話を聞いて以来、増え続ける本をどうしたらいいのかの光明が見えた気がして、考え続けていたのだ。
今回、またその友人と会ったので、大内くんが技術的な細かい部分をいくつか確認させてもらって、ゴーサインが出た。

まずは、近所のパソコン屋に行って、
「自炊をしたいんですが」と言うと、電子炊飯ジャーを薦められた、というのはウソで、本を切るための裁断機まで置いてあった。
スキャナは、「もうこれしかないでしょう」という感じに世の中に広まっているSCANSNAP1500を買う。
裁断機はプラスのハンドル式。
私は昔懐かしいテコ式のものが安くていいと思ったんだが、大内くんは、
「テコの原理を応用してる、ってことは、手元に来たらほどんどその力はなくなっちゃう。絶対、切り口がズレる」と猛反対していたのだ。
幸か不幸かパソコン屋さんにはハンドル式しかなかったので、迷う余地がなかった。
それぐらい、もうすぐに自炊を始めたい気分になっていたんだ。

家に帰り、大内くんがさっそくパソコンにスキャナをつなぎ、1時間もたたずに使えるようにしてくれた。
とはいえ、その間に私が裁断しておいた雑誌をさまざまに読み込ませてみる段階に、けっこう時間がかかる。
友人のプログラマも、
「とにかくやってみればわかってくるから、やってみて」と言っていたもんなぁ。

横に読ませるのはマチガイで縦方向が正解だ、ということがわかるのにも小一時間かかる。
カラーより白黒の方が読みやすい気がするが、それだとJPEGにならないので、PDFから変換しなければならず、大きくひと手間かかる。
何度かやってみて、やはりカラーで行くことにした。

その晩のうちに、私はついにiPadで「ご近所スキャンダル」といった低俗なレディース・コミックを読むことができるようになった!
2年越しの計画が、実を結んだのだ。
捨てられなくて、ベッドの下や部屋のすみに積み上がった雑誌の山を、全部自炊するまでにどのくらいかかるんだろう、ということは考えない。(軽く500冊はある)

技術の進歩はめざましい。
うちは、大内くんに言わせれば、
「シロウトのわりには、世間の半歩先を行っている」のだそうだ。
これから毎日自炊だぞ。
本当に本番の、コミックスに手をつけられるのはいつかしらん。

12年10月29日

終日自炊。
大内くんは大阪に出張に行って帰りが遅いし、息子はどっか遊びに行っちゃったし、ヒマだけは売るほどあった私の時間は、半日すべて自炊だった。

帰ってきた息子に、
「自炊、って知ってる?」と聞いたら、「ああ」と言って裁断済みの雑誌が積み上がった書斎をのぞき、
「ついに自炊か。この機械とか全部買ったわけ。ふ〜ん。犯罪だよね〜」と言う。
失礼な。自分でやるのは合法だぞ。
「手間かかりそうだね」と言うので、
「あなたの本も自炊してあげようか」と言ったら、
「いや、オレはやっぱり紙で読みたいよ」という返事。
それほどの愛書家でもないだろうに、と思うよ。

ごはんを食べるのも昼寝をするのも忘れて、大内くんが夜中に帰ってくるまでずーっと自炊してた。
この状態が続いたら、私はやせられるかもしれない。自炊ダイエット。

これは、年単位の計画にしといた方がよさそうだね。
いざとなれば捨てられる雑誌はともかく、寝室とリビングの扉つきの本棚に隠されたマンガの山をすべて電子化するには膨大な時間がかかるだろう。
病気療養中でヒマだったはずの友人プログラマも、たっぷり1年はかかったそうだし。

家からマンガの本がなくなったら、今はダブルベッドを置いている寝室の本棚を捨てて、広くなった部屋にシングルベッド2つにして別々に寝よう、と いう話がほぼ決まっている。
思えば、思春期から居住空間のかなりの部分を常に本に割いてきたわけで、それがなくなったらどうなるんだろう。

大内くんも、
「週末になったら、僕も自炊を試したいな。自分の本をやってみたい」と言う。
でも、どうでもいい雑誌から入ってる私とちがって、大内くんの本はいろんな意味で「かたい」ものが多いから、苦労するんじゃないかな。
そもそも、まだ活字の本は1冊も試してないんだ。OCRとか、大丈夫なんだろうか。

にわかに活気づいた大内家。
自炊は健康にいいのか悪いのか。
せっかくデータ化しても、読む時間がないんじゃ意味ないしなあ。
ま、ぼちぼちやろう。

12年10月31日

息子がレンタルDVDを借りてきて観ていたらしい。
大学が休みらしく家でゴロゴロしてるとおもったら、突然、
「これ、出かけることがあったら返しといて。延滞してるから。じゃっ」と言い放って、あっという間に出かけてしまった。

自分だって出かけるんだから返しに行けばいいじゃん、まして、延滞料をこっちに払わせようという魂胆はあまりに見え透いているぞ。
実際、憤懣やる方ない思いで返しに行ったら、2本で800円も取られた。
2日も延滞するな。
そもそも、借りて来たなら教えてくれればものによっては我々も観るのに。
「アフロ田中」と「宇宙人ポール」を観るかどうかは、ものすごくビミョーなところだが。

大学生っていうのは、こんなに使えないヤツらなんだろうか。それとも息子がバカなのか。
知能犯とも思えるしなぁ。
ものすごく腹が立つ。
「やってあげなきゃいいじゃない」と、たいていの人は言うだろう。
でも、おしめの世話からやって19年、奉仕の精神が身にしみついちゃって、もう。
せめて「ありがとう」と言ってもらいたい。言葉のしゃべれない赤ん坊じゃないんだから。
あー、ムカつく!

最新「主婦の本懐」へ
「主婦の本懐」目次へ
「主婦の道」へ