18年5月1日

体力が戻らないので遠出は無理と判断して旅行とかの予定は入れていない連休だが、ちょっとはどこかへ行って行楽気分を味わいたい。
高速の中央分離帯にツツジが咲き誇る5月。
そうだ、ドライブに行こう。
近場と言えば、伊豆だ。

おからパウダーを使ったから揚げ、スパニッシュオムレツ、ゆで卵という「糖質制限弁当」を前日から作って、ワクワクしながら早起きした朝の4時。
料理をタッパーに詰め、水筒に氷と冷たい麦茶を入れて、まだ暗いうちに出発だ。
渋滞はキライなんだよね。
「そんなの誰だってそうでしょう」と言う向きもあろうが、世の中には「それよりもキライなものは早起き」という人だってたくさんいる。
我々は昔っから何でも早回し。

GWとは言え一応は平日なうえさすがに早朝ですいてる。
高速をユーミン流して飛ばしてると、大内くんの長い学生時代、くらぶの人たちとよく伊豆に集団ドライブに行ったことを思い出す。
曲がりくねった海岸線を走りながら「真冬のサーファー」を口ずさみ、「埠頭を渡る風」をハモった大好きな女友達は、去年亡くなってしまった。

いろんな思い出を語り合いながら7時ごろに第一目的地の「小室山公園」に着いた。
広い駐車場はすっからかん。
「すごいね〜、誰もいないね〜」と言いながら朝のお弁当を食べていたら、1台、また1台と車が入ってきた。
「やっぱり、わかってる人はいる!」とうなずきあい、今にも大勢の人でツツジ園があふれてしまいそうな不安にせきたてられて車を降りた。
少し歩いた先にツツジの山が広がっているはず。

しかし、ツツジはほぼ終わってた。
一面の花だったはずの山々は、しょぼしょぼとところどころ赤くなってるだけ。
「なんで?朝だから?今から咲くの?」と大内くんに聞いたら、かたわらの白ツツジの枝を観察して、
「茶色くなってしぼんでる。もう、盛りを過ぎちゃったんだね。今年はあったかかったからねぇ」。
がーん!

見渡す限りのツツジを楽しみにしていた私はすっかりふさいでしまったが、大内くんに励まされて第二目的地の「姫の沢公園」に向かう。
海沿いの道をたくさん走ってきた行きと違って、今度は山に入っていく。
じきに空気が冷たくなってきて、さすがは伊豆高原。
そうね、伊豆は、こんなふうに海も見られる山も見られる、気が向けば温泉も入れるってとこが魅力だったんだよね。

けっこう標高の高いところまで来たので、まだツツジが残ってた。
「インスタ映え」とつぶやきながら少しくすんだ赤紫の花を写真に収めておこう。
私はFBだけで、インスタはやってないんだけど。

もっと派手に咲いてるところはないかとどんどん山を登ってみたが、まあそんなもんだった。
登った山は降りなきゃいけない。帰りは行き道以上の苦労をしたよ。
駐車場まで戻ってきた時には足ががくがくした。
ひざも限界まで痛い。痛み止めのシップ持ってきてよかったけど、こんなんじゃイタリアには行けないなぁ。

対向車線に車が増えてきた道路を東京方面にのぼり、昔住んでいた戸塚のへんを通って、計画していたとおり「IKEA港北店」に寄った。
IKEAは一度入ってみたかったんだ。
家の近所なら立川だが、もちろんそっちだって相当に遠いので行ったことないの。
今日はドライブのコースに組み込んでおいてよかった。

青地に黄色いロゴでおなじみの巨大な建物に入ると、中はかなりの人混み。
事前にメンバー登録をしておいたが会員証が間に合わないので端末で「仮会員証」を発行し、バーコードを手に入れた。
これで今日はメンバー割引だ。
入会時にもらえる500円のクーポンが送られてくるのは後日、というところが痛恨である。
もっと早く入会して準備しておくべきだった。何事も早手回しに、とは最近やたらに息子に対して思うこと。
まあいいや、「ハンティング」(買い物)だ!

3階から上が駐車場で、端末を探していったん1階に降りてきたが、あらためてエスカレータに乗って2階からスタートする。
広い売り場は理想の生活空間を提案してるかのような小部屋のディスプレイによって迷路のように仕切られており、くねくねと誘導されてさまよっていると、どのくらいの距離を歩いてどこにいるのか、さっぱりわからなくなる。
当然何か買うつもりでフロアのあちこちに置かれている大きな黄色いショッピングバッグを提げているんだが、トイレに寄ろうと思い、空とは言え個室にバッグを持ち込むわけにはいかないだろうから大内くんと交代で入ろう、と話し合っていたら、入り口扉の前の壁に商品らしき折り畳み式のフックが取りつけてあり、そこに掛けるようになっているのだった。
よくできてるなぁ。

食器や小物ぐらいしか考えてなかったのに、リビングコーナーのアームチェア売り場で2人とも立ち止まってしまった。
組み立て式のスマートな作りのロッキングチェアが並んでいたのだ。
書斎に置いていた小型のマッサージチェアをシアタールームに持って行ってしまったので、1人がデスクに向かっている時にもう1人が座る場所として息子の残して行った事務椅子を流用してたんだが、これが超安物で、ひと言で言って「ケツが痛い」。
大昔からロッキングチェアには憧れていた。
真っ赤な座面のしゃれた形のものに目が釘付けになってしまった。
ひたと見つめ合う瞳と瞳、みなまで言うな、うなずいた大内くんはレジに持って行くためチェアのタグの写メを撮ってくれた。

さらに、透明のフロアマットを発見した。
書斎の事務椅子の下に敷いてあるラグがよれて使いづらいのだ。
「これは、いいモノ!」と喜んで、またタグを撮影。
あとで倉庫に取りに行くらしい。

そこここのワゴンに展開された「投げ売りのお買い得品」がとてもいい。
大小さまざま17個セットのタッパーとか、10枚300円ぐらいのお手拭きタオルとか。
そもそも棚に並んでる品もわりと安いんだが、安売りの品は思い切った値下げをしている雰囲気。
いつしか理性が飛んで、次々とバッグに放り込んでしまう。
たぶん、完全にIKEAの術中にハマっている。
いいの、安いから。いらないものでも、買うの。

ぱんぱんになったお買い物バッグを持て余してあたりを見れば、皆は商品満載のカートを押しているではないか。
大きなカートにバッグを乗せて、1階のレジフロアにある倉庫へ向かおう。
そこは、天井まで商品棚がそびえたつ巨大な空間で、「レイダース 失われたアーク」の最後のシーンの倉庫そっくりだった。
タグの写真を見ると商品番号と棚の住所が記されており、我々の探していた商品は一番下にあって自分ですぐに取り出せたが、上の方にある商品はどうするんだろうなぁ、きっと滅多に動かないアイテムなんだろうなぁ、と勝手に想像する。

さらに巨大な台車を持ってきて組立前のロッキングチェアとけっこう重いフロアマットを乗せてレジへ向かった。
カードで精算できるセルフレジが一番空いているようで、ハンドスキャナがついているから台車に乗せたままの荷物もスキャンできるかと思ったが、バッグいっぱいの小物を抱えている我々を見た店員さんが、
「10点以上の商品があるようでしたら、レジで係員がお取扱いした方がいいと思います」とアドバイスしてくれたので、少し並んでレジで精算してもらった。

ベルトコンベアに小間物をどんどん出して行き、前のお客さんの商品と区別するためのバーを置いて仕切るのは、イタリアのスーパーで見たシステムだなぁ。
流れてくる商品を、レジの人がスキャナで読み取って精算してくれる。
袋を持っていない場合、お買い物バッグと同じ大きさの有料バッグを99円で買い、それに自分で詰めるようになってる。
大きな商品はもちろんシールを貼ってもらってそのまま台車で駐車場まで運ぶのだ。
以前のノアならともかく小さなアクアに荷物を全部積み込むのはなかなか至難の業だったが、大内くんが奮闘してくれた。

ものすごく楽しかった。プチ散財。
「買った買った、お大尽のように買ったね〜」(fromよしながふみ「フラワー・オブ・ライフ」)と雄叫びを上げ、意気揚々と帰る道の途中、息子からメッセージが入った。
「コントライブの費用でどうしてもあと1万5千円ほど借してもらえないでしょうか。6月に貯める20万に上乗せの形でお願いしたい」
うーん、GW末の独人コントライブが迫っているが、資金が足りなくなったか。

「伊豆にドライブに行った帰り道。夕方なら家にいるよ。ポトフ食べにくる?」と返したら、「行く」。
「『母さんのこと大好き』って顔で来て。嘘でもいいから。今日は疲れたから、私のこと好きな人にしか会いたくない」
「ほい」
打ち合わせ終了。反応が軽いなぁ。いいのか。

家に帰り着いて片づけてたら、今回はきちんと時間通りにやってきた息子。
作りおきのポトフをふるまい、お弁当の残りを出すと、
「ドライブ?へー、なんで?ツツジを観に。いいねぇ!弁当、作ったの?うまいね!おからの粉のから揚げ?ふーん」と、胡散臭がっていた糖質制限にも異を唱えず、食卓に置いてあったメニュー本を手に取るほどのサービスの良さ。
これが「母さんのこと大好き」な顔か。

「父さんの会社でも北朝鮮の話は出る?」と時事問題を話し始め、世界に対する彼の意見やこだわりをいろいろ話してくれた。
2度行ったことのある大好きな沖縄のことを考えると、これでいいのかと思うんだそうだ。
原爆の日や終戦記念日に黙祷を欠かさない彼らしいかも。
大内くんが地球儀を持ってきて、
「沖縄の島はけっこう長い。中国に対して海をふさぐフタになってる」と語るのに対し熱心にうなずいている息子をを見て、なんだか胸が熱くなった。

気に入りのマンガを勧めてくれたり、小さい頃連れて行った日光東照宮にまた行きたいんだがつきあう?あなた車に居残ってゲームしてたじゃん、と聞いたら、
「いいよ〜、オレ、21歳の時にも自分で行ったけど」と気軽に答えてくれたり、貸してあったツインピークスのDVDボックスを返してもらうために部屋まで送って行く途中でも、かかっていたユーミンに「本当にいいよなぁ。すごい人だよ」と聴き入る彼と創作について表現について、話が弾んでしょうがなかった。
「じゃあね。またね」と別れ際にハグされて、今日はひとつもイヤな気分にならなかった。
とっても「親子」な雰囲気だった。
たとえ偽りでもいいや。
と言うか、こんなにサービス良くできるんだったら、日頃からもうちょっとターボかけろよ。

素敵な休日だったなぁ。夢のよう。
ドライブとIKEAと息子が渾然一体となって完璧に美しく豊かな1日を作り上げ、このまま死ねたらと思うぐらいだ。
夢うつつでそうつぶやいたら大内くんは、
「これから先、こういう日々が当たり前になるよ。絶対楽しくさせるから、頑張って元気でいて!」と励ましてくれた。
この人に応えるためにも、1日1日をていねいに、ゆっくりと、誠実に真摯に重ねていきたい。
今日がその一里塚。

18年5月4日

GW中2度目のハイライト、大内くんの会社のお友達Aさんのおうち訪問。
ご夫婦とお子さんたちに加えて、以前紹介していただいた遠方からのお客さまもいて、たいそう楽しく過ごした。

糖質制限中の我々のために肉を中心としたメニューをいろいろ用意していただいた。
こちらも、いつものクッキーではなく、レシピをもらって作ってみた「鶏ハム」と途中で買ったケンタッキー・フライドチキンのバーレルをおみやげに持って行き、食卓には低温調理した豚肉や鶏胸肉、角煮、温泉卵が並び、「肉々しい」。
大内くんは低温調理器に非常に興味を持ったようだ。
「糖質制限を続けていくうえで、肉をおいしく調理できるこの器具はとっても便利。豚肉がこんなにやわらかくなるなんて!」と、現在購入を検討中。
フードプロセッサ、圧力鍋と並んで、我が家の調理器具トップスリーになるかもしれない。

日記を愛読してくれているミセスAとお友達のEさんとはいつもとってもお話が弾んで楽しいが、大内くんという「会社の先輩」の赤裸々すぎる日常をあまり読まないようにしているらしいAさんもちょっとだけ読んでくれたそうで、私がひどい不眠であることをとても心配してもらい、大感激だ。
プロジェクター導入とか糖質制限とか、Aさんにはいろいろレクチャーを受けていることもあり、ずいぶんお世話になっているなぁ。
なのに、仕事の話を始めたからって「よそでやってください!」と男性2人を2階に追いやり、女性陣だけで井戸端会議を始めてしまう私は、社交性が大きく欠如した欠陥人間。

でも、女性会議は楽しかった。
皇室について、子育てについて、夫について、話題は縦横無尽。
3人とも幸福な家庭を築いているせいか、わりと忌憚のない意見が飛び交う。
ちなみに、愛読者の目から見ると私の日記には病院とゼリーの記載が多くて驚くらしい。
(買い込み過ぎたあげくに糖質制限で食べられなくなったゼリーは今日Aさん宅に引き取ってもらった。子供たちがどんどん食べてくれて、助かった)

人に会う機会が少ないので、Aさん宅訪問は生活の最上のうるおいだ。
興奮し過ぎていつも帰る時には寂しくなる。
「もう時間だからおいとましよう」とさかさかと玄関に向かう大内くんに引きずられて、「今度、泊めてくださいねぇ」と度外れたお願いをしながらおうちを出たのは夕方。

「さよならを言うことは少し死ぬこと」とかつぶやいて涙ぐんでたら、
「帰りにニトリに寄って、こないだIKEAでは気に入ったのがなかったお皿を買おう!」と機嫌をとり始める。
買い物で気を紛らわせ、なだめようという腹らしい。

うまうまとその手にのせられ、気がついたらまたしても山ほどの買い物を車に積載していた。
枕、枕カバー、ベッドパッド、テーブルクロス、ランチョンマット、コースター、タオル、お皿。
服やアクセサリには興味ないが、こういう家庭用品は心が躍って止まらない。
小金が使える身分であることに感謝しつつ、「買った買った、お大尽のように買ったね〜」第二弾だ。

お子さんが成長途上だったり家を建てたり、年若い友人たちは未来に向けて輝いている。
現状維持、さらには生活のダウンサイジングと「手仕舞い」を考える年齢の我々にはまぶしくてたまらない。
それなのにコドモのように甘えてしまい、恥ずかしいなぁ。
おまけにはしゃぎ過ぎてしゃべり過ぎたことを後悔して自己嫌悪にまみれているうえ、興奮して疲れたせいか全身のじんましんをかきむしっている今現在。タメイキ。
馬齢だけ重ねて、私はいつになったら「歳相応」になれるんだろう?

18年5月5日

GWもあと2日しかないなぁ、と思う私と「まだ2日もあるよ!」と言い張る大内くんの妥協点を求めて、2回目の市民プールに行った。
抜けるような快晴の下、眠れない早朝を利用して洗濯機を2回も回して盛大に干してきたのでたいそう気分がいい。
プールを1キロ歩いたところで、隣のコースで泳いでいた大内くんが来てつきあってくれたのでもう500メートル歩き、1キロ半。
温かいジャグジーに浸かって身体をほぐし、自転車を連ねて帰る。
脚は痛いが、やることやった感が心地いいね。

マンションに戻って車を出し、来週のための買い出しをしよう。
昨日Aさんちでご馳走になった角煮が美味しかったので、糖質ゼロの料理酒と人工甘味料を使って大内くんが作ってくれるそうだ。
豚バラの塊や鶏レバー、豆乳などを買って、まだまだ糖質制限の気持ちは続く。
カツオの冊が安かった。今夜はお刺身。

重い袋を4つも積んで帰ろうとしていたら、ライングループに着信が。
昨日会ったばかりの私の大学の後輩ミセスAが、今からキャンパスに行って学生時代の友人たちと芝生でピクニックらしい。
そんな近くにいるのか。
行きたいですぅ、と返したら、ミセスAはちょっとだけでも会いませんか、と言ってくれるし、大内くんも車をキャンパスに向けてくれたが、生肉をたらふく積んでいることなどなどを考え、ラインの交換で、集まりが終わる頃にミセスAを迎えに行ってうちで短いお茶会をすることにした。

大内くんが食材を冷蔵庫にしまっている間にいそいそと部屋を片づけ、出窓のほこりを拭いたりティッシュの位置を直したりしていて、
「乙女ゴコロだねぇ。キミは本当に女性に弱い」と笑われてしまった。
フンだ、ほっといて。

約束の時間に大内くんが車を出してくれて、4月に桜を見に来たキャンパスにまた来た。
入り口で守衛さんに「人を車で拾うだけです」と言ったら、面倒な入溝証ははぶいて入れてくれたよ。
ロータリーで待っているとミセスAが現れた。
「キャンパスでお目にかかれるなんて!」と嬉しそうに言ってくれる彼女と、そう言えばここで会うのは初めてだ。
卒業生が少ないので学生時代以外のリアルな友人を持つのは珍しいよなぁ。
おまけに、何の縁でかこんなにキャンパスの近所に住んでいる不思議。

2年以上前に来たきりのミセスAを我が家に案内し、開設したばかりのシアタールームや、ベッドにiPadを2台装備した私の秘密基地をお見せする。
いろいろ感心してもらえて嬉しい。
3人でお茶を飲んで、ほんの30分ほどだが来てもらえてよかった。
いつもマンガの話を共有している彼女は、我々の生活を「高等遊民ですね。私も目指したいです」と評してくれた。

あんまり短い逢瀬なので大内くんがミセスAを家まで送るドライブを提案してくれて、後部座席に収まった我々は1時間近く余分におしゃべりを楽しむことができた。
もちろん彼女にもたいそう感謝され、ここで上がり込むと「おさるのおにぎり」だからね、と大内くんに釘を刺されていなければ昨日の訪問の続きをしたくなるところだった。
「また会いましょう!」と約束して、お別れ。

帰り道、今度は大内くんとのドライブを楽しみ、思いがけなくものすごく充実した日になった。
「朝からきちんと動いていたから、急なチャンスを生かせてよかった」と2人で喜ぶ。
お刺身とサラダの夕食も、連休初日に借りた8枚のDVDラスト1枚を観たシアタールームも、友人と会えた興奮に後押しされて本当に楽しかった。
夕食から開けた安い白ワインを飲みすぎて、2人とも映画の途中で寝ていたけどね。

「ジャスティス・リーグ」が面白くなかったわけじゃないが、うたた寝から目が覚めるたびに闘っているばかりでよくわからなかったので大内くんにストーリーを聞いたら、、
「超人たちがそれぞれのパワーで悪をなんとかしちゃった話。特にもう1回観る必要はないと思う」とのこと。
「君の特殊能力は?」と聞かれたバットマンが、「金持ちだ!」と答えたところだけが印象的。
考えてみればあの人って身体を鍛えただけのただの人間だもんなぁ。スーパーマンとかワンダーウーマンと一緒に戦うのは気の毒かも。

いよいよ明日はGW最後の日。
楽しいお休みだった。豪華10連休にふさわしく、息子のコントライブで華麗に〆よう。

18年5月6日

GW最終日、息子の独人コントライブを見に行った。
元々の計画ではこのライブの翌日に渡米するつもりだったらしいが、費用を貯めることができなかったのでひと月ばかり延期する気になってくれたのはまあよかった。

杉並区の施設で行われ、50人弱の席は8割ほどの入り。
1人でやるコントライブは難しく、プログラムにも、
「誰か別の人が舞台上に見えたら、それは僕の背後霊・守護霊・スタンド、その辺りだと思ってください」と書いてあった。
日頃一緒にやっているコントグループのメンバーが全員来て手伝ってくれていた。

7本のコントで1時間強。
裸になったり着ぐるみを着たり、およそ売れない芸人がやりそうなことを全部やってくれた。
全然カッコよくなくて、バカバカしくて、かえって「ああ、そんなにコントがやりたいんだなぁ」と納得したかも。
アメリカに行くこともコント職人になることも、彼を止めるのはどうも無理そう。

終わって帰ろうとしたら、大内くんが見知らぬ中年男性に挨拶していた。
他には若いお客さんしかいないので息子の友人のお父さんかと思ったら、なんと大内くんの大学の先輩、弁護士さんなのだそうだ。
ありがたいのと「物好きな!」との思いに揺れながらあせって頭を下げていたら、その方はにこにこと、
「大内家の様子はいつもブログで拝見してますよ」とおっしゃる。
うわぁ、そんなとこまで読者層が広がっていたのか。
果たして大内くんの名誉とか体面とか社会的地位とかは無事なのだろうか?!

息子の今カノも来ていた。
「こんにちは!」と挨拶されて、「どうでした?」と聞いたら、「面白かったです!」という感想。
「アメリカ行きには賛成なんですか?」とも聞いてみた。
「はい。寂しいですけど、行ってほしいです」とのこと。
恋人ってのはありがたいね。

木戸銭は取らず、お代は見てのお帰りという「完全おひねり制」。
大内くんに言われて2人分で2千円払っておいた。
通常のライブ料金がだいたい1500円ぐらいだからやや少ないんだが、何しろ1人だし完成度が低かったから。
(「義理で見に来てくれた弁護士さんがすっごい大金を出してくれてたりしたらどうしよう!」と悩んでいた大内くん)

いくつか面白いアイディアのコントもあったが、いかんせん練習が少なすぎる。
舞台上には息子しかいないので録音した声を相手にする場合が多かったところ、その音声と息子のセリフがずれまくったりしていたのがイタイ。
生身の人間との掛け合いじゃないのでカバーが難しいというのはわかるんだけどね。
そうしてみると、陣内智則とかのひとり芝居はむちゃくちゃうまいんだなぁ。プロはさすがだ。

今日のお客さんの多くは学生お笑い関係者だろうが、息子のこれまでの人生に関わってきてくれた人たちがたくさん来ていたのだと思う。
なかなか難しい道を選んでしまいそうな彼を、どうかこれからもよろしくお願いしたい。

18年5月7日

唯生の誕生日。27歳になった。
生まれた時は正直言って明日の命も知れず、こんなに長い人生を無事に送ることができるとは思っていなかったので、とても感慨深い。
現代医療に支えられて施設で暮らす彼女は、自分の力ではなく社会のおかげで生活しているとは言え、独立した1人の社会人だ。
やや未完成な形ではあるものの子供を2人とも世の中に送り出して、私はかなりぐったりと隠居生活に向かっている。

微弱陣痛で3日間うんうんうなったあと、連休明けに病院に検査に行った日を思い出す。
と言うか、忘れたことはない。
おなかにモニタをつけ、午後にお産にしましょうと言われて、立会いの大内くんが食堂にごはんを食べに行ってしばらくして、急激に胎児の心音が下がった。
看護師さん助産師さんの後ろからドクターも飛んできて、内診するやいなや、
「頭が下がってきてません。下から産もうと思ったけど、このまま切ります!」と叫んだ。

え?え?えええっっ!!と思っている間にどんどん手術の準備が進み、言われるままにエビのように丸まって腰椎麻酔を受け、人生でずっと抱いていた「麻酔が効いてないのに手術されちゃう」恐怖におびえていたら、実はちゃんと麻酔は効いているらしくてなんだかおなかをひっぱられるような感じばかりした。
「もう切ってるんですか?」
「はい、切ってます」と間抜けな会話をドクターとしながら、たぶん数分のことだったろう、「はいっ」との声とともに看護師さんが走って行ったので、生まれたのかな?と思い、また聞いてみた。
「もう生まれましたか?」
「はい、出しましたよ」
「男でしたか?女でしたか?」
「さあ、見てるひまなかったから」
そうか、それぐらい緊急事態なのか、と、ちょっと目の前が暗くなった。
もちろん産声も聞いてない。
それが、唯生の生まれた時の記憶。

あの日から、まだ夢の中にいるように思うこともある。
でも、この夢は覚めない。
私たちは皆、自分の人生という長い夢をみている。
楽しいこともつらいことも、全部一期の夢。
現実ではないと思って目をそらしても生きて行けるし、目を見開いて見据えてもそれほど傷つくことはない。
自分自身の死という目覚めの時に必ず終わる夢だから、最後まで楽しんでみていよう。

18年5月8日

糖質制限をやっているとやたらに肉を食う。安くおいしく食べるために、低温調理器ANOVAを購入した。
届いたANOVEをさっそくテストすべく、温泉玉子にトライ。

しかし、説明書が全部英語で書いてあるうえ、「初期設定では華氏になっているのを摂氏に設定し直さないといけない」ということを誰も教えてくれなかったので、華氏67度(摂氏19.5度)の水に30分浸かっていた玉子はすっかりグレてしまったようだ。
温泉玉子自体どういうもんなのかよく知らないんだが、どうもこないだよその家でご馳走になったものとは違うような気がする。やさぐれ温玉。

でも冷蔵庫で2時間ほど寝かせておいたら目が覚めたらしく、その後は改心してゆるゆるの白身とほどよく固まった黄身へと変貌していた。
冷蔵庫を「更生施設」と呼ぼう。

次は豚肩ロースのかたまりを2キロ買ってきて、500グラム切り分けて塩をすり込んでしばらく寝かせたのち、63度で12時間加熱。
取り出してクレイジーソルトをまぶしてオリーブオイルで焼く。
しょうゆとバルサミコ酢と粒マスタードを混ぜたソースをかけて食べたら、すごくおいしかった。
残ったお湯は67度に上げてまた温泉玉子を作ってみたところ、今回は最初っから素直な温泉玉子の群れ。
お好みでポン酢かめんつゆをかけて食べる。

さて、今度はこないだ普通に沸騰したお湯で作った鶏むね肉の「鶏ハム」を低温調理でやってみようか。
ますます食卓が肉々しくなるなぁ。

息子のケータイ料金が残高不足で引き落とされなくて、振込用紙がうちに来た。
連絡したら「取りに行く」と言うから、この機会に肉を食わせてやろうと思ってたのに、急に「用事を思い出した」と言ってやっぱり来ないんだって。
「予定管理がゆるすぎる!」と叱ったら、
「すんません、これからは手帳を持ち歩きます」と返事が来たけど、君ら若者は何でもケータイで管理してるんじゃないのか?
私ですらあるかなきかの予定をケータイのカレンダーに登録してるぞ!
しっかりしろ!

18年5月9日

車で少し離れたホームセンターに買い物に行こうと思い立ち、ついでに息子のアパートに届け物をしてやろう。
今日か明日の夜、大内くんと一緒に行くつもりだったが、どうも帰りが遅いようだから。
「今から行くよ」とメッセージは入れたが既読にならない。寝てるかな?
まあ、シェアハウスの正面玄関の暗証番号は知ってるから、いなければ彼の部屋のドアにはさんでくればいいや。
(郵便ポストは外にあって施錠してないので、やや神経質な大内くんは心配だからと言って使おうとしない)

部屋のドアが全開なんで入ってみたらいない。
けどケータイが置いてあってバスタオルがないところを見るとシャワーだろう、とベッドに座って待ってたら、やがて帰ってきて、私を見てびっくりしてた。

「ほい、振込用紙。こういうのがこっちに来ないようにしてよね」
「はい、すんません。ありがとう。今日はどうしたの?1人でどっか行くの?めずらしいね。公演はどうだった?父さんは何て言ってた?」
「バカバカしくて、覚悟のほどを感じたって。裸から着ぐるみまでおよそ売れない芸人がやりそうなことは全部やって、なかなかいい恥のかきっぷりだったね。カッコつけてないところを見て、かえって応援する気になったよ」という会話に、満足そうだった。
「おひねり」は2万円ほど集まったそうだ。
ただでも文句言えないところを1人平均500円ぐらい払ってくれたんなら、まあまあじゃん。

「自分の裸を見せていいもんかと、ちょっと迷ったよ」
「腹が出てるから?」
「そんなんじゃねーよ。肌が汚いから、お客さんがひいちゃうんじゃないかと思ってさ」と、アトピーで荒れた肌を気に病んでいるらしい。気の毒に。
「そんなの、見えやしないよ。だぶついた腹の方がよっぽど問題だよ」と言っておく。

帰ろうとすると彼も出かけると言うので、吉祥寺まで車で送ろうかと提案したら喜んだ。
先に車に乗ってたら、しばらくして彼が現れた時には大学は違うが同じサークルにいたという女の子を連れていた。
彼女は元々このシェアハウスの住人で、息子がアパート探しをしている時に街でばったり会い、「今住んでるとこ、いいよ〜」と紹介してくれた恩人だ。
一緒に乗せていく話になったそうなので運転は彼にまかせて、私は助手席に、彼女は後部座席に乗る。

道々話していてわかったんだが、外国人らしい彼女はなんと私の母校の後輩であった。
息子とはシェアハウスのリビングで時々一緒に映画を観る仲らしい。
それを聞いたとたん、やはり母校の学生である元カノと別れて以来遠のいていた「チャペルで結婚式!」という夢が、私の中でめらめらと炎を上げて再燃した。
もちろん息子には全然別のカノジョがいるので、口が裂けても人には言えないはかない望みである。
うーん、もしかして相手は誰でもよくて、ひたすら母校のチャペルでの結婚式が見たいんだろうか、私は。
それにしてもなんだか女にまったく物怖じしないヤツである。父親には全然似てない。

2人が降りて、運転席に移って車を出し、思いっきり回り道をしてしまったが当初の目的のホームセンターに向かう。
大内くんならスムーズに行き着くんだろうが、20年以上住んでる地元、しかも学生時代にも住んでいてバイクで走り回っていた道だというのに、やはり迷う。
迷って迷ってずいぶんドライブしてしまった。

大きなスーパーの前を通ったので降りて買い物をしたりして、やっとホームセンターにたどり着いた時は夕方になってた。
おまけに買いたかった置時計も度つきゴーグルもなかった。
ヘアブラシとフリーザーバッグはさっきスーパーで買えて、よかった。
へとへとになって帰りつき、アマゾンで時計とゴーグルを注文し、最初っからこうしておけばよかったよ。
息子の女友達には会っちゃうし、なんだか波瀾万丈な日になったなぁ。

18年5月10日

今日は晴れるって予報だったから4時から起きて2回も洗濯機回したのに、どしゃ降りになって雷まで鳴ったので、撤収。
全自動洗濯乾燥機がない頃、みんないったいどうしてたんだろう・・・

そう言えば、昨日息子のアパート訪ねた時、珍しくシーツもベッドパッドも大洗濯してベランダの手すりに干してたんだけど、前日からそのままなんだって。
「今朝、雨降ってなかった?」と聞いたら、
「そう。だからそのまま」とすました顔で、取り込みもせずに出かけてたよなぁ。

こりゃ、今日も乾かないわ・・・

それ以外にはほぼ1日中セシールのカタログと格闘してた。
引きこもりなのと服をお店で選ぶのは面倒くさいのとで、こういう買い物はほぼセシール。
最近は外出しない通販好きの奥様を「巣ごもり主婦」と呼んでくれるらしい。
うん、引きこもりよりは聞こえがいいかもしれない。
実態はあんまり変わらないんだが。
去年は全然服を買ってないので、大内くんと私の夏向けのものを買わなくちゃ。
安い服ほどまめに回転させないと、この歳ではわびしい雰囲気がただよっちゃうからね。

今回はプレゼントキャンペーンのお知らせをもらっている。
5千円買ったらタオルもしくは500ポイント、1万円買ったら両方もらえるんだって。
なぜだかこの手のお誘いにめっぽう弱く、実際にもらうもの以上の至福を感じる性格。
ついついいらない買い物をしてしまうぐらいだ。
よくやりません?あと100円買えば補助券がもう1枚もらえて6枚になって福引できるからって、いらない小物を買っちゃうの。
安いTシャツなどをかなりの量選んで入力し、最近3度目の「買った買った、お大尽のように買ったねぇ」をつぶやいた時には総額1万5千円のラインを軽々と超えるお買い物になっていた。
なのにキャンペーン番号は1人1回ずつしか使えなくて残念。

しかし、注文を確定する寸前に気がついた。
5千円のキャンペーンと1万円のキャンペーンは、番号が別々だ!
ということは、注文を分ければ両方応募できるの?
さらに、「タオルもしくは500ポイント」もそれぞれ違う番号、全部で3つのキャンペーン番号があるので、最終的には3回に分けて注文することにした。
姑息なようだがこれで最大の効果を上げることができた。
こんな操作をしている間にものすごく時間がたってしまったんだけどね。

ああ、ある種の達成感があるなぁ。
通販がない頃、引きこもりな人々はどうやって生活していたんだろう?

そう言っているうちにもアマゾンからネット注文した小物が届く。
最近、夜中に2、3回目が覚めてしまうので、暗闇でも時間がわかるように常時発光する置時計がないと困るんだが、ひとつ持っていたものをシアタールーム内で時間を見るために流用してしまい、もうひとつ必要になったのだ。
案外普通の小売店には置いてない品だった。
ほぼ同じものが買えて、満足。

それにしても宅配便のおにーさんは、いつ配達に来てもパジャマで出てきてやたらに本やら小物の包みを受け取るおばさんのことをどう思っているだろう?
いちいち何とも思わないか・・・

夜、息子から、
「そうめんとかお蕎麦とか、家に余ってない?」と聞かれた。
「少なくともこの夏は食べないので、余ってるねぇ。欲しい?」と返したら、
「ほしいー。今日、取りに行っても大丈夫?」と言うが、もう11時になんなんとしている。
大内くんは今夜も遅く、帰ってきたらお風呂に入ってバタンキューだが、どうせ会うなら少しは話ができる時にきてほしかろう。

「もう遅いから、また今度ね。土曜日以降にしてくれる?」
「わかった」で、引きさがってくれてよかった。
こっちは堅気のサラリーマン家庭だ、夜中の世界に生きる君と同じ時間帯ではつきあえない。
つくづく、棲み分けの必要性を感じるよ。
そして、何だかんだ言って、夜中に起きていてもあまり生産性は上がらないぞ。
夜勤のバイトに行くんでもなければ、寝たまえ。

18年5月11日

明日は大内くん主催の集まりがあるので、妻たる私も少しはキレイにしておこうと思い立ち、美容院に行った。
何もなくても数ヶ月に1度は行かなくてはならないところで、あまりおしゃれに関心のない身としては「髪の毛なんて伸びなきゃいいのに」と常々思っており、同じく不精な大内くんと、よく、「いっそ仏門に入ろうか」と相談しているんだが、そうもいかない。

いちおう行きつけと呼べる美容院もあるが、今回はリラクゼーション予約サイトからビューティ関連にまで拡大された値引きクーポンをプレゼントされたので、対象サロンから吉祥寺のお店を選んでみた。
宣伝が目的のクーポンなため「初めて行くサロン」という条件がついており、1年間何度でも使えるこのクーポンでとことん得をしようと思うと私は美容院ジプシーになってしまう。
それもなんだかなぁ、しかし今日行くお店が気に入ってしまったらこれまでの行きつけはどうなるんだ、と少し悩みながら、予約の時間に行ってみた。

裏通りの小さな美容院で、これはネットで宣伝でもしないとなかなか経営が成り立つまい、とよけいなことを考える。
しかし、担当の若いにーちゃんは感じが良かったし、カウンセリングもていねい。
シャンプー&ブロー、カット、白髪染めをお願いしたら、最初に「終了予定時間」と「セット料金」を教えてくれるシステムは安心できていいと思った。

美容院で私がいつもぶつかる壁は、
「美容師さんはお客さんをキレイにしようと情熱を傾けてくれるが、実はこちらはそこまで情熱がない」という、「熱意の不均衡」。
今回も、その壁は高かった。
めんどくさがりのうえ、20代の頃のままの気分で「洗いっぱなしで何とかなるスタイル」にしてもらいたいところを、
「毛先にニュアンス」「トップにボリュームを出してゴージャスに」と言われても・・・

ただ、白髪染め(カラーリング?)に関して誤解していたんだが、むやみに好きでいつもお願いしてしまう「赤味がかった茶色」は実は暗い色で、「オレンジがかった明るい茶色」にもできるそうだしむしろその方が好みにかなっている気がする。
ただし、元の髪質が太くて黒いので、「明るい」と言っても限界があり、やはり私のアタマは黒くて重い。
(なんとなく真っ赤にしたいような気がしていたのはきっと萩尾望都の「A-A'」とかに出てくる「赤いたてがみをした一角獣種の少女」のせいだなぁ)

新しい美容院で必ず言われる3点セット、
「髪の毛、多いですね」
「太くてあんがいクセがあります」
「頭の鉢が開いているので、両側に張り出して見えます」
いや、もちろん美容師さんはそんなことをむき出しにぶつけて来たりはしないんだが、「私の頭は〜ですよね?」と聞くと、皆さん絶対この3つに行きつくんだ。
今日は「後ろをふんわりとさせるカットで」と言われたため、
「ゼッペキなのといつも寝てるのとで、あんまりふんわりが長続きしません」と恥ずかしい告白をする羽目にもなった。

小さな店だと思ったが、案外席数が多いし、シャンプー席もたくさんなうえ上等な造り。
「シャンプーの椅子にお金かかってますね」と言ったら、
「そうなんですよ!そこをほめていただけると嬉しいですね!」とおにーさんが喜んでいた。
チェーンの親会社がしっかりしてて、業界の中ではホワイトな方だし、薄利多売ではなくじっくりと良いサービスを心がけているのだそうだ。
(って言っても、そう無茶苦茶高いわけでもないし)

仕上げに頭、首、肩のマッサージをしてくれて、ハンドマッサージまであった。
「マッサージは、カラーリングをしたからですか?」と聞くと、
「いえ、シャンプーについてきます」とのこと。
最近ではパーマやカラーリングをしてさえマッサージのないお店もある気がするので、たいそうサービスがいいと思った。
シャンプー中の手持無沙汰解消に小さなクッションを抱かせてくれるのもいいね。

ちなみに担当のおにーさんは24歳で、近所で1人暮らしをしていて、大学に行ってみたかったと思いつつも、人から「このご時世、手に職で自分で稼げるのがイチバン!」と言われるたびに「そうだよなぁ」と思うのだそうだ。
私はもちろん彼をほめたたえ、ほぼ同い年の「お笑い芸人志望のニートな息子」についてひとくさり語らせてもらったよ。
いやホント、息子よ働け。
勤労する若い人がみんな理想の息子に見えてくる現象。きっとこれはオバサン化してるんだろう・・・

2週間後に無料で仕上がりチェックをしてくれ、シャンプー&ブローもついてくるんだそうだ。
当然、予約をしてきた。
いかん、このままではこれまでの行きつけのお店に戻れなくなる。
2年ばかり会ってない担当さんの産休が明けて復帰してくるのを待っていたんだが。
2人目の男の子を産んだ感想、「新鮮な赤ん坊話」がぜひ聞きたい。
しかし、新規のおにーさんの「24歳1人暮らし、自炊やりますよ話」も捨てがたく・・・(料理する方の自炊です)
どのみち切ってしまった髪はしばらく伸びない。2ヶ月ばかり悩もう。

さわやかな5月の風に切りたての髪をなびかせ、ケンタッキーでチキンを買って、ネットアンケートに答えてゲットしたクーポンでコールスローをもらって帰った。るんるんである。
なんだか最近、「クーポンお得おばさん日記」になってきたなぁ。

18年5月12日

大内くん主催の勉強会、「休日講座」を開催した。
仲間うちから講師を募り、仕事や趣味上の知識を1時間ほどにまとめて講義してもらってみんなで聴く、というもので、ここ15年ぐらい毎年1回やっていたけど、去年は私が手術で入院してたためお休みを余儀なくされ、満を持した大内くんは自ら手を挙げて前から興味があったという「トルコの歴史」を発表した。

開催に当たり、ビール会社に勤務するかたわら趣味のワイン道が高じてソムリエの資格まで取ってしまった友人に聞いたら、「トルコワインは立派な一つのジャンルです!」と太鼓判を押してくれたうえティスティングつきのワイン講座を引き受けてくれたようだ。
彼の講義はいつも大人気なのでありがたい。

しかし、集まるのがまんがくらぶの面々なだけに、ドタキャンあり遅刻ありのハラハラ展開なのは毎度のこと。
正直言って私は予定の変更に弱く融通が利かない「自閉症気質」なので、これにはなかなか慣れない。
それでもFBの記載を読んで「低温調理には前から興味がありました!」と料理を楽しみにしてくれる人もいるのを励みに、前夜からローストポークと鶏ハムの製造に精を出した。

さて当日、買い物に行ってるヒマはないので前日までに買い出しをすませ、朝4時起きで掃除と料理だ。
ただでさえ不眠症なのに、コトがあると興奮してさらに眠れなくなる「遠足前のコドモ状態」で、大内くんが起きる前に2種類のサラダの仕込みを終え、15時間オールナイトノンストップANOVAの様子を見つつ、シシカバブ風肉団子の準備。
「また寝なかったの!」と嘆く大内くんも参戦して、大量のハヤシルーを作り、ゆで上がったローストポークを焼きつけてくれた。

市民会館の会議室を借りて行われる講座のあとは徒歩5分の我が家に場所を移して、「反省会」と称する宴会を開くのが通例。
「家をキレイにしようと思ったら、お客さんを呼ぶのが一番だね!」と考える見栄っ張りの我々、久々の大パーティーにかなり興奮して、お掃除にも気合いが入る。
こないだ買ったロッキングチェアを書斎から引っ張ってきてリビングに置こう、テーブルをもっと中央に出せないか、えーい、いっそソファを完全に壁際に持って行ってしまえ!

というわけで、季節外れの大掃除と模様替えに突入してしまいましたとさ。

全部終わったのは12時ごろ。
「1時半からの講座の準備」に1時には到着してなきゃなのに、直前まで、会場で貸してもらえるプロジェクターに何か不都合があった時のためにと家のを外して持って行くとか、ノートパソコンもいるとか、ティスティングの際のチェイサー用の水とか、もう大騒ぎなんである。

事前にワイン講師が我が家に送っておいてくれたのを野菜室でずっと冷やしておいたティスティング用トルコワイン6本をどう持って行くかにも少し悩んだ。
荷物が多い時はどんなに近くでも迷わず車!の我が家なので、なんとなく車を出すつもりになっていたが、前日になって気づいたのは「ティスティングするってことは、2人とも酔っ払ってしまい、帰りに運転する人がいない!」だった。がーん!
しょうがないから何もかもリュックに入れて、しょって運びましたよ。

会場で機材を借りて支度してたら、ワイン講師も早めに来てくれた。
大内くんとアタマくっつけてプロジェクターの配線に励む。
でも、結局「音を出したい」大内くんのニーズに応えない機械なことがわかって、家のやつが急きょ出動。
会議用じゃないから明るさが足りず、窓を背にしたスクリーンではなく横の壁に映すことで少しマシになったけど、ペーパー資料を用意してなかった大内くんの講義は少しわかりにくいものになった。

時間が来て、遅刻の人はまあ無視して開始だ。
歴史の講義は、眠い。
高校や大学の授業中を思い出して必死で目を開けてたけど、手元の落書き用紙もなくて、ちょっと寝ちゃった。
大内くん、すまん。

その点、やっぱりワイン講座は面白かったなぁ。
そもそも講師が話し始めたとたんに、滑舌の良さと声の大きさが前講師とは別モノ。
カラーコピーを綴じた資料も用意してくれて、至れり尽くせり。
売れない研究者の学術講義とブームに乗ったカリスマ講師による人気講義の差を見る思いだったよ。

もともと「休日講座」は、仲間内の女性が卒論に書いた「ジャポニズム」の話を聞いた大内くんが、
「こんな面白い話を僕等だけで聞くのは申し訳ないから、みんなの前でやってくれないか」と頼み込み、
「こういうのはスキモノがひっそりと集まってすみっこでこっそりやるものだと思うので、あんまり大人数でなければ」という条件で受けてくれたのが始まり。
そこから幾星霜、「お点前」や「ヒップホップダンス」にまで発展した講座を見るにつけ、「継続は力なり」と感慨深い。
思えば遠くに来たもんだ。

総員9人の頭数で、6本のワインを飲むの?と聴衆がざわめき立つのを一顧だにせず、どんどん抜栓を始める講師。
慣れたもので、小さなティスティング用のプラカップがいつの間にか1人6個配られている。
回ってくるワインをほんの少しずつ注いで味わうも、4分の3ぐらい残ったボトルが一巡してまた回って来ちゃうんで、結局ずいぶん飲んじゃいましたよ。

どれも風変りに力強くおいしかったが、1本、すごい色になって沈殿しかけてたロゼは、講師が首をかしげていたとおり変質してた。
「R天」で買ったんだそうで、申し立てれば返品・交換も可能かもだが面倒くさいなぁ、という話になっていたが、現物を送れなくて証人が必要なら、ここにいる全員が「開けた時からヘンだった!」と証言できます!

トルコの赤を飲んだ皆さん、「シシカバブが食べたくなる!」と口々に叫んでいて、はい、これあるを見越したわけでは全然ないですが、「シシカバブ風肉団子」が用意してあるんだ。

両講座とも熱が入り過ぎてすっかり時間超過してしまったし、これ以上試飲を続けるとうちまでたどりつけなくなりそうなので、てきぱきと撤収。
私はいつものように「先に冷やしといた方がいいもの」を受け取って速攻自転車で先に帰り、大内くんは後片づけ、お客さんたちは「直行組」と「買い物組」の二派に分かれて、それぞれ道がわかる人を1人つけててんでにやってきた。

お客さんがくる順にシアタールームを見せたり持ち寄り物資を受け取ったり「部屋が広くなってる!」と驚く声に説明をしたりで忙しく立ち働き、大内くんの音頭で乾杯した時にはもう目が回る寸前だった。
おかげでそのあとは大内くんが1人で台所に立ってくれて、なんだか最後まで皿洗いしていたような気がする。

「低温調理に興味がある」と言ってくれてた友人男性にANOVAを見せて、使い方を説明したり利点を数え上げたりしたのち、論より証拠のお料理を出した。
彼だけでなくほぼ全員が「やわらかい!おいしい!」と絶賛してくれて、大評判。
ANOVAの委託実演販売がやれそうだなぁ。
我が家も友人からそういう感じで勧められて買っちゃったし(笑)

「次回の講師は反省会で決めてしまう」のがモットーの大内くんがてきぱき動いて、サブカルチャーについて大学で講師をしている男性と、めずらしい参加者であるくらぶの「長老」にお願いし、すでに次の開催が決定した。

仕事が詰まっているので、と女性が1人先に帰る、前の用事が終わらなくて結局「反省会」だけの参加となった男性が来る、酔っ払って不調になった男性2人が立て続けに帰る、といった出入りを経過して、終バスが出てしまう10時半に間に合うように楽しい会は終わったが、今回の大収穫は、長老が酔っ払ったのをいいことにほとんど拉致するように我が家に泊めてしまったこと。
ここから始まる長く陽気な夜についてはまた明日。

参加してくれた皆さん、どうもありがとう!
来年もよろしく。

18年5月13日

さて、長老だが、大学2年の私が高校の先輩の紹介で他大学のマンガサークルに入った時、ものすごくお世話になった人。
当時住んでいた1DKのマンションがたまり場になっていて、私も留年しそうなぐらい入り浸り、そこから幾組ものカップルが生まれた時に最初の短い結婚をした。
その後、同じサークルの後輩として入学してきた大内くんと出会って結婚したので、もちろん私の評判は地に堕ち、もっぱら大内くんの前後の代の人々とのつきあいの方が多いんだけど、面倒見のいい長老が最近セミリタイアしてヒマになったせいか、下の代の催し物にも顔を出してくれるようになった。

そういうわけで、長老が、
「オソロシイ女だったあこちゃんをオレたちが放流してしまったばっかりに、純真無垢な青年だった大内くんには迷惑をかけた」と謝ると、今や純真無垢な中年男性になった大内くんは、
「いえ、長老があこちゃんをクラブに入れてくれたおかげで今があります。ありがとうございます」と真面目にお礼を言っている。

ワイン、糖質オフビール、またワインですっかり酔っ払った私と大のビール党で何缶を消費したかわからない長老は、タイムスリップしたかのように「マンガ、SF、アニメ何でも話」に突入した。
明け方近くの酔っ払いは笑い転げる。
徹夜マージャンをしては、「ノーテンだった」「フリテンだった」「役満に振り込んだ」とあらゆることに笑い転げていた頃みたいに、何を言っても可笑しかった。

しまいにギャラリーの大内くんがロッキングチェアで眠り始めたのでお開きにして、
「11時に起こすから、吉祥寺に行って『もりやすじ展』を見よう」と言ってシアタールームと化した息子の部屋に残っているベッドで寝てもらった。

寝たのは5時だが8時には目が覚めてしまった。もちろん私だけ。
なんだか、身体中が「酒っぽい」。いわゆる二日酔いだ。
10時に大内くんを起こし、11時に長老を起こして、リビングで三人三様にぼーっとしていた。
「今、街はすんごく混んでる最中ですよね」と大内くんが言うので、迎えビールを飲み始めた長老を囲んでさらにぼーっとする。
学生時代の朝みたいだ。いいなぁ。

2時過ぎてやっと腰を上げ、バスに乗って吉祥寺へ。
「糖質制限中なので」と大内くんが前から行きたかったステーキハウスを提案し、
「おまえら、よくそんなに肉ばっかり食うなぁ」と長老が呆れる中で100グラムステーキを食べたが、予想以上においしかった。(大内くんだけ150グラム食べた)
「糖質制限中でもここなら外食ができる。また来て、今度は200グラムを食べる!」と喜びながら「もりやすじ展」へ。
思いのほか小さな展示だったが、彼が大好きな大内くんは喜んでいた。

3人で魚屋を冷やかしてそろそろ帰ろうという頃には、長老が生涯かけてコレクションしたマンガを運び込んだ別荘で「合宿」をしてくれる企画がまとまり、昨日来ていた時から出ていた話なので、聞いてた人たちに再度案内をして実現させよう。
「また泊まりに来てね」と言ったら、「なんか宴会があったら呼んでくれ」と言いながら長老は帰り、我々はドンキホーテで買い物をして、降り始めた雨の中、傘もささずに青春の熱気に火照りながら家路についた。

「何十年ぶりかに本当に生き生きとしたキミを見た。丁々発止、火が出るようなやり取りだった。長老とキミの波長が同期し、増幅してスピードを増すのに圧倒され、横で口開けて見てるしかなかった。長老はゆうべから何度も『楽しい〜!』って叫んでて、本当に楽しそうだった。キミが上の世代の集団に受け入れられていた理由がわかるよ。こんなに頭の回転が速い女性を見て、男子高出身の僕はもちろん驚いたし、共学出身の長老も驚いただろう。キミがいつも僕相手ではスピードをセーブして会話せざるを得ない、と思ってたけど、手綱を解き放たれて自由に疾走するキミを見られてよかった!」

というのが大内くんの感想だ。
まあ、確かに楽しかった。
この40年、いろんなことがあり、特にここ20年ほどはさまざまな薬のせいで思考も行動も鈍っていたんだが、去年からめきめきと覚醒してるもんなぁ。

「でもね、なんだか疲れちゃった。テンションが上がり過ぎた」としょんぼりして泣いてるのを、
「こんなキミを、他の人は知らない。長老みたいにキミを認めてくれる人が必要なんだとは思うけど、僕のいいところは、能力が不足しているせいで絶対キミが望むようにはキミを評価してあげられないから、『もっと優れたところを見せよう』ってキミを無理に頑張らせないことなんだよ。優れたキミを認めて評価する人は多いけど、僕はそのすごさについていけないってとこがお値打ちなんだ」と力説し、慰めてくれる人と結婚してよかった。

「オレは『ADHD(注意欠陥多動症)』だから」と笑う長老に、
「病名として診断がつくわけじゃないけど、かつてはなかったそういうカテゴリーに入れると理解しやすいってことだね。私が『高機能自閉症』なのと同じ」と言ったら、
「おまえのどこが自閉症なんだ!」とたちまち却下されたけどね、最近の「あこちゃん研究者」たちの定説なんだよ。
「まんがくらぶに病的な人は多いですが、いずれにせよ『高機能』がつきますよね」と横から言い添える大内くんは極めてフツー(笑)
ただ、「その計り知れない凡庸さにもかかわらず今の仕事が勤まってるという点、充分、高機能かも」と言われても素直にうなずくところは大変評価に値する。

やはり部内結婚だった奥さんを9年前に亡くした長老は、何度も何度も彼女の話をしていた。
なつかしむようでも悲しむようでもなく、淡々と、まだ彼女がいるようだった。
私たちはみんな、誰かに救ってもらってるんだなぁ、と胸が熱く、痛くなった。
「なにもかもがなつかしい」
この歳ではまだ早いのかもしれないけど、いつでも「早め早め」な性格なので、もう青春の総決算をしてしまいそうだ。

18年5月14日

週末に無理をし過ぎてびっこをひいてしか歩けなくなったので、行きつけの整形外科に行ったら、そこの院でやってるリハビリのメニューを受けるよう勧められた。

老人たちに混じって別室に並んだベッドに横たわり、ひざに電極をたくさん貼りつけてもらい、15分間微弱な電流を流す。
これを週に2回ほどやると痛みが取れるかもしれない、とのこと。
可能な限り通うことにしよう。
出不精を超え、それぐらい痛い。

ただ、私の場合「病気」というよりは「症状」なので、先生は、
「とにかく体重を落として筋肉つけてね」とも言う。
痛くても頑張ってストレッチとかするしかないんだろう。
明日っからプールで水中ウォーキングを本格的にやろうかなぁ。
だからね、それぐらい痛いのよ。

金曜日にフライドチキンの骨を噛んでしまって奥歯の詰め物が取れたので、予約取って治療に行った。
あんまり痛むから土曜もやってる歯医者さんでよかった、と思いながら朝に電話したら、
「先生が学会に行ってお留守なので、今日は休診です」と言われてから月曜まで、かなりガマンしたんだ。
すぐに削って新しい詰め物の型を取ってくれたが、できあがるのは来週の月曜。

削ったところがずきずき痛むうえ、口の中に例の「きゅいーん」って機械を入れた時、先生ったらうっかり舌の横を傷つけたんだと思うなぁ、傷ができて腫れてきたじゃないの。
これがまた、痛い。
口がよく動かなくて唇の内側を噛んでしまい口内炎がどんどんできるのも痛い。
少なくとも舌の傷は医療事故じゃないだろうか。ぷんすか。

夜、息子が来て、宴会で残ったハヤシを食べてさらに残った分は持って帰ってくれた。
「ハヤシライス、アジのたたき、トマトとアボガドのサラダ、グリーンサラダ、温泉卵、豚肉のスープ」という、ハヤシライス以外は多国籍適当糖質制限メニューだけど、「うまいね!」って喜んで食べてくれたよ。

週末に1泊2日の出稼ぎバイトでイベント会場の手伝いをしてきたらしい。
2日で3万円稼いだせいか、
「やっぱり仕事しなきゃダメだね!」と妙に機嫌が良かった。
その割に、バイトを使う責任者たちに対する文句が多くて生意気だけどね。
人買いに時間を買われてなんぼのバイトだ、しゃきしゃき働け。

それでも今夜はたいそう感じが良かった。
「そうめんとか蕎麦とか余ってたら欲しい」と言うので、糖質制限で食べないことだから、とありったけ持たせたら、
「くれるものなら何でももらうから」と、実に経済的な姿勢だった。
食糧もタダじゃない。
実家が農家なおうちのように、食料品の現物支給を受けるのは手っ取り早い節約だよ。

10キロの米袋まで持って行くと言うし明日も仕事だそうなので、車を出して2人して送って行ったが、素直に感謝し、気持ちよくいろんな話をしてくれた。
私がいつものようにコムツカシイ箴言を言いたくなり、
「創作の道は険しくて、『こんな茨の道を行くのは世界中で自分だけだろう』って思えるかもしれないけど、母さんだって若い頃に通ろうと思った道だよ。そこから逃げ出して年とった人に言われたらイヤだろうけどね」と言った時も、
「え、なんで?別にイヤじゃないよ!」と、ただ目を丸くして聞いていてくれた。

シェアハウスの前で米袋や食料品と一緒に彼を降ろして帰る道すがら話したら、大内くんは、彼のことをどうしても自分の子供だと思うから、期待したり甘くなったりしてしまうのだそうだ。
私は実はあんまりそういうのなくって、ただひたすら、年くった人間と若い人間の違いがあるだけだなぁ。
よその若い人と話しても多分同じことを言うと思う。

それに、大内くんにあって私にない、こういう「教育者」や「親」の視点はうらやましいかも。
「小学生なのにこれだけできれば大したものだ。練習を続ければきっとうまくなる」と長い目で思えるところ。
子供でも、つい厳しい目で見てしまう。
「未熟だなんて言い訳にならない。真剣だって言うなら真剣に相手をするだけ」って思う。
こっちもコドモなんだろうなぁ。

「その公正さがキミのいいところだよ。自分のことをよくわかってるしね。なかなかそこまで客観的にはなれないよ」
今日もほめられた。夫の欲目だが、喜んでおこう。

18年5月15日

天気がいいので朝から2回洗濯機を回したら、なんだかすごく勤勉な気分になった。
そうだ、プール行こう。

両ひざの変形性関節炎が進行しており、運動して筋肉をつけないといけない。
「体重減らして、脚の筋肉つけて。でないと、歩けなくなるよ」と医者から脅されているんだ。
体重の方は今、糖質制限で鋭意努力中なので、筋肉の方も少し頑張るか。

家の近所の市民プールにはこないだから大内くんと2回ほど行ったが、1人は初めて。
ジムもあるのでマシントレーニングしよう。
常駐してるインストラクターさんと言うか監視員と言うかのおねーさんに、
「ひざと心臓が悪いんですけど、軽い運動をして慣らしながら足腰の筋肉をつけていきたいんです。発作を起こす、倒れる、というようなタイプの病気ではなくパフォーマンスが悪いだけなので、本人が苦しくなれば休みます。体力がなくても始められるマシンを教えてください」とお願いして、ひと回り一緒に歩いてもらい、レクチャーを受けた。
水中ウォーキングもやりたい、と言ったら、まずジムでマシンをやってからプールに行くのがいいだろう、と教えてくれた。

過去に大内くんの会社が契約しているスポーツジムにも行ったことがあるが、市民体育館はけっこうな数のマシンが並んではいるもののさすがにそこそこ安い機械だ、と見て取れる。
まあ質実剛健、筋肉さえ鍛えられればいいんだ。
インストラクターがひっきりなしに話しかけてきたりしないのも、うるさくなくてかえってありがたい。
面白がっていろんなマシンを少しずつ試し、仕上げに有酸素運動のボート漕ぎを10分ほどやって、全体で40分ほどで終わりにした。

次はプールでウォーキング。
平日なのでかなりすいていた。
ベビー・スイミングなのだろう、小さな小さな水着に身を包んだ「歩けるが、まだ話せない」年齢(1歳〜2歳?)ぐらいの赤ちゃんたちがお母さんに手を引かれてよちよちと大量に去って行った。
ああいう人たちって、おしめが取れてなくてもプール入れるんだっけ?
管理する方法があるなら知りたいもんだ。今さらだけど、孫育てには役立つかも。

「水中歩行レーン」には平均年齢65歳〜70歳な感じの男女が5、6人。
男性は1人で黙々だが、女性はプールで知り合ったものか、2、3人で並んだり3人の場合は1人が後ろ向きに歩行したりしておしゃべりしながら歩く。
ジム通いが大好きな大内くんのお母さんも、よく「スポーツジムで会う友達」の話をしてたなぁ。
私も通ってたらそのうちお友達ができるのかしらん。
聞いてると「子供や孫の話」が多いようだ。「病気の話」になりにくいのは場所柄、健康的な人ばかりなのかも。

全員が上がらされる10分間の休憩をはさんで1時間、1キロ歩いた。
フィットネス型の水着と度つきのゴーグルに投資してよかった。実に快適だ。
上下別れた水着がこんなに便利なもんだとは知らなかったよ。
着替えが楽だし、トイレも行ける。女性の水着のトイレは、そりゃあもう地獄なもんだったから。
見た目より機能性。
そもそもその「見た目」で喜ぶのは男性だけだろうし、今の私にはかけらもないが用もないんだ。

さわやかに、と言いたいがプール上がりのだるさと早くも襲ってきた筋肉痛と闘いつつ、体育館のほぼ正面に位置する優秀な八百屋で買い物して、本屋に寄って帰った。
本屋では、顔なじみのおばさんに、
「今日もお元気そうですね!」と挨拶され、なんだかいつも元気に見えてしまう自分が少しイヤになった。
不調が多く不健康なんだが、絶対そうは見えないと思う。声と態度がでかいからだろう。押し出しがいい?
まあ、濡れた髪に短パンでリュックしょった姿は、ジムに行ってきたようにしか見えないんだけどね。
そりゃあ、「お元気」だろう。

今夜は低温調理器ANOVAで2時間加熱したステーキを、帰ってきた大内くんが焼いてくれた。
やや火が通り過ぎだけど、将来の可能性を充分に感じるやわらかさ、おいしさだった。
もともと週に1度はステーキを食べてたところに糖質制限を始めてさらに食卓にのぼる回数が増えているので、最適な「低温調理ステーキ」を自家薬籠中の物にしたい。

ステーキ肉を加熱して余ったお湯でまた「温泉卵」を作る。もはや冷蔵庫の常連。
しかし、真空パック器では大失敗をした。
卵を8個入れた袋を装置にかけてバキュームしたら、「ばきばきばき・・・」って、見る見るうちにすべての卵が割れたのだ。
こんなに強力なもんだとは思わなかった。

割れた卵はすぐにスパニッシュオムレツに回しましたけどね。
肉がないから挽肉が作れない、じゃあツナ缶を使おう。
大内くんが週末にハヤシ作った時にたまねぎ全部使っちゃってるじゃないか、えーい、ねぎで代用だ。和風和風。
結果、なかなかおいしいオムレツができて、これも糖質制限の常備食として冷蔵庫にストックしておく。
アクシデントを全部工夫で乗り切ってとっても自画自賛の気持ちになったが、30年も専業主婦をやっていて今さらこの程度のことでほめてもらおうなんて、まったく性根が甘いよね。

18年5月16日

今日も医者のハシゴ。
眼科に緑内障治療のための目薬をもらいに行かなくちゃなので、待たずに診察受けられるよう診療開始の9時より早く行ってみた。
私の前には1人しかいなかったうえ、勤勉な女医さんは9時前から働き始めたので、眼圧検査と視力検査を終えた私が診察席に座ったのは9時5分のことだった。
眼科って、急に具合悪くなった、すぐに診てください、ってことが少ない科だからだろう、だいたい朝はすいてるんだ。
夕方になると子供連れでにぎわってしまい、かなり待つ。

眼圧はほぼほぼ期待通りに下がっているらしい。
緑内障の治療と言っても眼圧を下げておく以外には何もなく、いったん視野が欠損したところはどうやっても回復しないので、目薬を使って予防にこれ努めるしかないんだそうだ。
私の場合まだ欠損部分が小さいので、まめに検査を受けて目薬を欠かさない以外にやれることはない。
「秋にはまた大きな検査をしましょう」と言われ、それまでは2カ月に1度ぐらい目薬をもらいに来て診察を受けることになる。
今日はこれで放免。

ゆるゆると自転車をこいで吉祥寺に向かい、また整形外科のリハビリを受けた。
こちらも朝早いので10分と待たずにすんだ。
10分間ひざに電気を流してもらい、多少は痛みが減ったかな?と思うのは気のせいかもだが、やれることをひとつひとつやるしかない。

駐輪場のすぐそばにあるドンキホーテで会員証を作って、安売りのクーポンをゲットする方法を学び、「98円の卵」とか「118円のティッシュ」とかをゲットする喜び。
しかし最近のお店は安売りやポイント、ケータイの会員証などのシステムが複雑すぎるにもかかわらず、バイト店員さんたちはあまり教育されてないのか、自店のことなのによく知らない場合が多い。
現場は様々に混乱していた。
むしろ常連客たちの方が慣れていて、クーポン発券機にさっとケータイをかざしてプリントされたものをどんどん取り、無言で流れるように買い物して行く。
朝の10時からドンキで食料品買ってるサラリーマンってなんだろう。会社の兵糧?

お昼ごはんにとケンタッキーでチキンを買い、先日ネットアンケートで答えたらもらえたクーポンを使ってアイスコーヒーを無料でゲット。
お会計の時にまたアンケート後に有効になるクーポンもらった。無限連鎖講。
最近なんだかクーポンおばさんだ。

それにしても脚が痛い。
昨日から、ももの裏側とか、バリバリに筋肉痛だ。
「運動した日に筋肉痛が出るなんて、身体が若いよ。最近、僕なんて筋肉痛まで3日ぐらいかかる」ってのは、ほめられてるんだろうか。

ほとんど脚を引きずるようにして夕食の仕込み。
今日もステーキだけど、2時間を1時間に減らしてみました。
厚切り肉のせいかちょっと赤すぎたけど、たいへんジューシィで、方向性としては間違ってないしレアの好きな大内くんは喜んでた。
もうしばらくいろいろトライして、最適な時間を発見しましょう。

なんとなく気分が前向きなのは、生活がうまく回ってるからかなぁ。
息子がアメリカ行き目指して熱心にバイトしてるって印象を受けたこと、態度が良かったこと、に影響されてる気がする。
心配事のない世界では、人は幸福だ。

18年5月17日

大内くんは日帰り海外出張なので、朝の6時前に家を出てしまった。
あいかわらず眠れなくて、困った時は洗濯をする。
このところ動きすぎて疲れているから今日はゆっくり休もうと思ったんだが、貧乏性と言うのだろうか、なるべくたくさんスポーツセンターに行って運動しないと、このまま脚が痛くなり続ける気がする。
結局、自分の中の貧乏神に負けた気分でマシンとプールで汗を流した。

日によって違うのか、今日のプールは混んでいた。
1レーンに15人ほどの老人がぐるぐるぐるぐる歩いているわけで、開放感がないことおびただしい。
老婆が4人も5人もダマになってしゃべりながら歩いたり止まったりしているのもたいそう邪魔っけであった。
おまけにこないだはないと思った男同士のおしゃべりも散見された。

一番驚いたのは、おじいちゃんがおばあちゃんに「やあやあやあ」と声をかけている光景だった。
夫婦とかではなく、ただのプールの顔見知りらしい。
半裸の老人が男女で語らうとは想像したことがなかったが、さすがは男女共学世代の始まりである。
そこまで驚くのは失礼な気もするけど、親世代はそんなことしない人々だったからなぁ。

結構くたくたになって、それでも八百屋と本屋は回って、帰ってお風呂で髪を洗う。
本当はプール後に洗ってきちゃいたいとこだけど、市民プールのシャワーはシャンプー禁止なんですねぇ。
こんなにくたびれたんだから寝られるだろうと頑張って横になってたのに、全然眠れなかった。
ひたすら眠いだけ。
不眠症とはこんなに辛いものか、長いこと睡眠薬を飲んでいたのはそういうわけか、とあらためて自分で自分を気の毒に思ったよ。
身体に悪いからもう飲みたくなくて、眠れない方をガマンするつもりだけど。

先日セシールで買った服のうち気に入らないものがいくつかあったので、「引き取りサービス」を初めて使った。
これまでのように自分で箱詰めしてコンビニから「着払い」で送るかわりにネットで申し込んでおくと、希望した日時に宅配業者さんが来て、記入した返品伝票と商品を入れた箱をまったく何の問答もなくさくっと引き取って行ってくれる。
なんて便利なんだ!

昔は「お客様都合」として送料を負担しなければならなかった「気に入らない時」を、「イメージ違い」という文言で大通しに受け入れるようになったのは通販としては画期的だと思う。
そこに「引き取りサービス」を充実させたことで「現物を確かめられない」という通販の弱点を克服し、店頭で買うのと同じ感覚を持ち込んでくれて本当に立派。
今後ともご贔屓にするつもり。

夜中に帰ってきた大内くんの仕事が終わらなくて、まだ寝られないよー、眠いよー。
どうせ眠れないのに眠りたい、人間て不思議で不便。

18年5月18日

心臓の手術をした病院での、機械弁がうまく動作しているかの1年点検があった。
3週間前にひととおり検査を受け、今日はその結果を聞きに行った。

今日もレントゲンと心電図をとり、そういえば入院中はこのセットを毎日やったなぁと思い出して、あとは血液検査。
ワーファリン値はかかりつけ医院の方で毎月測っているが、やっぱりここでもやるのか。
明日またかかりつけの方で検査受けるんだけどな、連日の酷使に備えて腕はどっちを温存しておこうかな、などと考えながら、この1年でかなり飽き飽きしてしまった採血。
昔は細い真紅の糸のように試験管に吸い込まれて行く血液を見るのが大好きだったし、腕の血管が太いので針を刺されるのは全然苦にしないのだが、やはりもう飽きた気がする。

検査の流れは優秀な工場のラインに乗っているようにスムーズだけど、さすがに診察はかなり待つ。
大勢の患者さんたちと一緒に、1時間も待っただろうか、やっとドクターに会えた。
名前を見ると、2度目の緊急手術の時に執刀してくれた若手らしい。
(顔まで覚えている、と大内くんがあとで言っていた。私から見るとほぼ無駄かつしゃくにさわる記憶力)

結果はおおむねOK。
もう、この病院は卒業でいい、とのこと。
今後は、今かかっている「かかりつけ医」にお世話になって診察・投薬を受けて行く。
薬と縁が切れないので一生どこかしらの病院には通い続けることになるけど、ここにはもう来ないんだね。
来るとしたらそれはわりと一大事なので、そういう日が来ないことを祈る。

ただ、肝心かなめのワーファリン値が低すぎるのだそうだ。
「2.2〜2.8」ぐらいが適正なのに、「1.2」。
それはいくら何でも低いだろう、先月も測ったが「2.2」になるように調整しており、ここ3ヶ月ぐらいその値を保っていたはずだ。
「新しい弁なのでそうすぐに血栓はできないと思いますが、この値はまずいです」
「明日行くので、聞いてみます」
「そうしてください」で終わったが、1度できた血栓は消えないので、今頃脳梗塞を起こすべく血管を流れているんだとしたらあまり嬉しくない話。
私はいいとしても、倒れた人の介護をする羽目になる大内くんが困るだろう。

聴診器すら当てず診察が終わりそうになったので、
「胸の傷が痛いんです」と言って見てもらう。
「キレイにくっついていますよ。ケロイドにはなっていますが。皮膚科で治療を受けてるんですか?そちらで続けてください」
確かに「くっついて」いなかったら大ごとだけど、ケロイドになって痛かったりかゆかったりっていうのも日常生活には支障があり、病院案件。
医者の論理では「心臓外科医の仕事は切って中身を治すこと」であり、できた傷のケアはそれはそれで専門家に任せる別の工程のようだ。

同様に、ずっと体調がすぐれないことを相談し、
「手術による侵襲から回復するのに何年もかかることもありますか?」と聞いたら、
「人によってはかかります。弁と血管は問題ありませんので、気長に体調を整えてください」という答えだった。
治すべきポイントは治したので、あとは自助努力せい、と。
まあ当たり前なんだけど、ちょっと途方に暮れるなぁ。
「心臓が悪い」時はあんなに病院中一丸となって面倒みてくれたのに、入れた人工弁がきちんと動作しているからって、冷たいぞ(涙)

全国から重症患者が集まる、あまりに優秀な専門病院なので、市井のかかりつけ医院のように患者の不安までケアしてる余地はないんだろう、と納得し、まあ今後はいつもの病院に相談して行こう。
問題は、そっちの先生もけっこう心臓が好きで、心臓がちゃんと動いてるかどうかには熱心だが全身状態が悪いことに関してはあまり興味がない、という点だ。
言えば胃腸薬でも頭痛薬でもバンバンくれるけど、次回以降もその薬をそのままくれたりして、「で、具合悪かったのは治った?」とは決して聞かない。
「かかりつけの家庭医」には向かないタイプだと思う。

いずれにしても、1年にわたる「術後」が終わった感がある。
大内くんは心配そうに、
「『何年もかかる』って先生も言ってたじゃない。まだまだ身体を休めてほしいのに、無理をし過ぎ」といたわってくれるが、そろそろ自分なりに「普通の生活」をしなければ、と気持ちがあせる。
20年ぐらい不健康だったので、実は「普通」ってほとんど忘れてるんだけどね。

18年5月19日

かかりつけ医での定期検診があったので、ドクターに昨日のワーファリンの値の話をしたら、こちらでの検査でもやはり値は低かった。
「糖質制限を始めました」と言うと、
「野菜をたくさん食べてますか?」と聞かれた。
確かに多いかも。
横から大内くんが、
「パセリとか食べてます」と言ったら、「ああ、それですね!」。

緑黄色野菜はワーファリンの効きを悪くするビタミンKをたくさん含んでおり、それがあまりにも多い「納豆・クロレラ・青汁」は三大禁忌なのだが、注意されていないものでも食べすぎると値に変化が出るらしい。
今回から薬をまた増やすことになった。

「しかし、野菜は食べてください。それに合わせて薬を調節すればいいことですから。薬に合わせて食生活を変えることはありません。そのために血液検査してるんですから」とのことだ。
体重や血糖値が下がるのはいいことなので、糖質制限自体はこのまま続けていいらしいが、正統派の医師らしくあまり新奇な説には傾かないようで、
「身体は糖質を必要としてますので、極端な制限は良くないかもしれませんが」と注意書きつきだった。
いやぁ、けっこう極端にやってるかもしれません(笑)

というわけで、ここ数ヶ月「2.25mg」で安定していた薬の量を「2.5mg」に変更した。
またひと月後に測定するのは変わりないし、飲む回数とかは同じなので、苦労するのは薬剤師さんだけだ。

しかし、けっこう劇的に数値が変化するもんだなぁ。
大内くんは昨日「低すぎ」と言われてからずっと、
「どっちかの病院の測定器が間違ってるのか?なんでそんなに差が出たんだろう?」と悩みまくっていたそうで、
「黄緑色野菜っていう理由がちゃんとあるとわかってほっとした。気がついてもよさそうなもんだったけど」と胸をなで下ろしていた。

私としては、次回の検査で今度は数値が上がり過ぎてたら、またはやっぱり薬が足りなくてまだ増やさなきゃいけなかったら、と思うと、安定するまでまたけっこうな道のりがありそうで面倒くさいなぁ、と思っているんだが。
そして、野菜を食べる量を安易に変えないように注意しなければ、と妙な力こぶを入れている。
血糖値測定器を買おうか、と考え始めていたが、むしろワーファリン値測定器を自宅に持つべきか?
もっとも、血糖値は食べ物で調整できるが、ワーファリン値は高い低いが毎日わかったところでそれに合わせて医師に薬を処方してもらわなければならなくて、あまり意味がないかも。
なんだか泥沼に踏み込んでしまった気がするけど、今さら機械弁を取り外すことは不可能だ。あーあ。

18年5月20日

GWの行楽の一環で「IKEA港北」に行ったのがすごく楽しかったし、また買いたいものがあったので、今回は「IKEA立川」に行ってみた。
家からは車で45分ぐらいかなぁ。

立川には、同じ保育園のママ友が実家に引っ越したあとで1回バーベキューに呼ばれたことがあり、なんとなくその近所だ、と大内くんは言っていた。
無敵の方向感覚を持つ男なので、信じていい気がする。
車を乗り回すそのママ友は、近所のIKEAに行き放題なんだろうか。うらやましいかも。

港北と同じぐらい巨大な店舗はほぼ同じ造りで、まだ会員証ができてこないのでケータイに送っておいたバーコードで会員認証をしてもらう。
まず入ってみたレストランでも、120円のドリンクバーが会員価格だと60円だったりする。
カフェテリア形式の中から、「サーモンとアスパラのマリネ、鶏のから揚げ、ソーセージ、グリーンサラダ」という糖質制限上あまり問題ないお皿を選んだ。
けっこう安くておいしかった。

工場風の天井の高い内装のレストランは広々としており、椅子もコーナーごとにいろんな種類が置いてあるのがインテリア店らしく、面白い。
大内くんが天井ばかり見上げているので、
「なに?鉄板?」と聞いたら、
「うん、たぶん、上の階の床がそのままむき出し」と言っていた。
どういう鋼板を使っているかとか話し始めそうだった、愛社精神のカタマリ。

フロアを見る前からもう、わくわくして興奮して饒舌になる私だが、
「家族連れがいっぱいいてディズニーランドみたいだけど、入場料はかからないし、ちょっと食べるだけでも高いレストランや売店で何か食べたりおみやげ買ったりするより、ここの方がコスパいいと思わない?買ったものはほぼ確実に生活に役立つんだし」と言うのはいくらなんでもケチすぎるかも。

紙コップを買うと好きなだけ飲めるドリンクバーなので、
「ということは、この紙コップを取っておいたら帰りにまたタダで飲めるのかなぁ」とつぶやくと、
「さすがにそれはちょっと。飲みたければまた払ってあげるから」と穏健な思想の大内くん。
いや、もちろんそうですよ。言ってみただけですよ。
こんなに発想がケチなのに、今から信じられないような散財をするんだよ、この主婦は。

今回はもう、最初から大きなカートを引きずって歩く。
前回とてもよかったスープボウルとお皿を買い足し、最近常備食をよく作るからとタッパーを買い、調味料を作りたいからとガラスの密封容器を買い、昔クリーニング屋からもらった針金のハンガーはもうぐにゃぐにゃだからと10本ひと組のハンガーを2組買い、靴下などの小物を干すのに足りないから洗濯ハンガーを買い、もちろん興味を持ったけど買わないものは数知れず、歩き回りすぎて足が痛くなるまで買い物をした。

そして、最後に、絶対買うと決めていた本日の目的は「もう1脚のロッキングチェア」。
こないだ買ったのがあんまりよかったので、リビングに2つ置いて並んでテレビ見たい!と思うの。
大内くんは同じ真っ赤がいいと言い、私は同じのではつまんないから黒にしよう、「赤と黒」だし、と言い、しばしもめた。
まあ、黒は案外すぐにほこりっぽくなっちゃうから、私が折れて赤になった。

1階の倉庫で大物のチェアの箱を探してカートに乗っけるのも、レジで小物をベルトコンベアに乗せて行くのも慣れたもの。
そして、何時間もこんなに楽しんだのに、お会計は思っていたよりずっと安かった!

くたくたになって荷物を積んで帰ったが、ああ、楽しかった!
大内くんにとってはまだこのあとも本番が残っていたようで、私がどんどん荷ほどきする小物を収納し、古いお皿やタッパーを選別して捨て始めた。
「捨てないと、新しいのが入らないよ」と言うのはもっともなんだけど、タッパーの中には結婚前から使ってるものもあり、ちょっとセンチメンタルバリューが大きすぎるんだよ。35年物だからねぇ。結局、捨てたけど。

特に趣味もなく、本と生活用品を買う時しか興奮しないので、こういう散財はお互い許容範囲。
ちょっとの投資で生活が一新できて、やっぱりたまには雑貨を買い替えるべきだね。
2脚も組み立ててすっかり慣れてしまったロッキングチェアに並んで座り、ゆらゆらしながら話す。

「名古屋のママがさぁ、こういうヘッドレストのついた椅子にはタオル掛けてたじゃない?」
「そうだったね。僕は、ちょっと貧乏くさいと思ったよ」
「うん。昔は布団にも襟布を縫いつけたぐらいだからしょうがないんだけど、このチェアのシート部分が3千円ぐらいなんだから、せっかくの真っ赤が汚れたり褪せたりしたら、数年に1度買い換える前提でもいいと思うのね。数百円のタッパーを新しくするだけでこんなに幸せになれるんだし、小金が使えるって、本当にありがたいことだねぇ」

しかしその実、私はずっと恐れている。
日本の少子化が進み、生産性が落ち、かつてのような「いい時代」ではなくなる日のことを。
そしてその時、年金で暮らしているはずの我々の生活はどうなるのか・・・
そう考えるとあんまり贅沢に慣れるのも考えものなんだけど、
「せっかく一生懸命稼いでるんだから、少しは楽しい思いをしてよ。使えば使うほど経済が回るって考え方には僕は疑問を持ってるけど、キミにはなるべくいい思いをしてもらいたいと思ってるんだよ」と熱心に言ってくれるダンナさんで、本当によかった!

18年5月21日

歯医者に行って詰め物が取れたところを治してもらった。
新しい詰め物を入れて、もうちっとも痛くない!快調!
これでまた半年後の定期検診まではおさらばだ。

ついでに最近絶不調のひざをなんとかもっと近所で診てもらいたいと思って、歯医者と同じ並びに入っているわりと評判のいい整形外科医をのぞいてみた。
しかし、朝の10時半ごろだったのがいかんのか、ほぼ20人以上の老人がびっしりと坐っていて、なんだかとってもたまげた。
くるりときびすを返して出て来ちゃいました。
もちろんその前に受付で「比較的すいてる時間帯」は聞いたけどね。
午後の診療の始まる時間が狙い目だそうだ。
やはり老人は朝が早いものらしい。
今度、出直してみよう。

プールか、はたまた吉祥寺の整形外科医で電気療法か、と考えてはみたが、なにしろ暑いし脚が痛すぎる。
大内くんからも、
「急に運動し過ぎ。真面目なのはいいけど、もう少しゆっくり始めなさい」と叱られているので、今日は休もう。
家の風通しを良くしてベッドでマンガを読む。

息子がツィッターに「アメリカでコント武者修行」について書いていた。
「お金がなくてカードが作れないため、ビザが取れずにいる。予定より出発が遅れてしまい、予告した手前恥ずかしいが、今頑張って資金を稼いでいるのでもう少し待っていてください」と正直だ。
真面目に向き合っているようで、なんだかほっとした。
先週も「出稼ぎ」のようなバイトをしていると言ってたもんね。

その告知に対して、大学時代のサークル同期が、
「カードなら俺のを貸すし、限度額いっぱいまで使っていいから来週行け。今カード作れないヤツは来年も作れないぞ!行け!早く!」と檄を飛ばしていた。
美しい友情だ。
息子が彼の好意と援助を受け入れてすぐに渡米してしまうのか、やっぱり自分で資金の一部を貯めて残りを親から借りるのかわからないけど、こんなふうに応援してくれる仲間がいるのは心強い。

この同期は、私が慶應お笑いサークルのカッコいい男の子にハマって彼のライブを観に行った時に会場でばったり会い、
「息子にはナイショにしてね」と頼んだら、
「僕はツィッターよく観察してるんで、何が起こってるか全部知ってるんです」と不敵な笑みをもらしていた記憶が消えない。
私が慶應の子をフォローしたことも、ライブのチケットを自分で取ったことも、全部ツィッターでバレバレだったのだ。
ああオソロシイ。

ちなみに同期も慶應の子も今はカタギの勤め人だ。
でも、彼らが働きながら時々ブログやpixivに創作物を投稿しているのを私は知っている。ふふふ。
SNSは新しい人間関係を産んでいるなぁ。

そう言えば、息子のコントグループの一員である男の子がツィッターに書いていた「部屋で育てている小さなユーカリ」の話、
「半分が完全に枯れて半分がめちゃめちゃ元気なので、萩尾望都の『半神』みたいになってしまいました・・・」って、萩尾御大の絵まで上げて、キミら、いったいどうしてそんなもの読んでるの?
「ポーの一族」とともに育った我々の世代でも、読んでない人は読んでないようなニッチな名作なのに!
息子と私がむやみに話が通じてしまうわけだよ・・・

18年5月23日

朝から美容院に行く。
先日、値引きキャンペーンにつられて新しいとこに行ったら、担当のにーちゃんもお店のサービスも感じ良かったうえに、2週間以内にもう1回来て仕上がりをチェックさせてください、シャンプーとセットを無料でします!と言われたので、ふらふらと予約をしてしまったの。

大内くんには、
「脚が痛そうだし、具合も良くなさそうだから、なにも今日、美容院なんて行かなくてもいいんじゃない?予約?断れないの?」と渋い顔をされたが、
「ついでにいつものひざのリハビリに行って電気流してもらうから。今日が終わったら、しばらく出かけないから」という約束で見逃してもらった。
「本当だね?今週はもう、出歩いちゃダメだよ。GWからこっち、張り切りすぎなんだよ。プールとかリハビリだって、そんなにしゃかりきになって行くもんじゃないんだからね。ちょっと元気になると限度がない」
なんだか散々叱られた。しくしく。

10時前に病院に行って診察券を出し、1時間ぐらいしてから来ます、と声をかけておいて、美容院へ。
担当さんがにこにこと迎えてくれた。
スタイルも色も気に入りました、と話したら、シャンプーをしてくれて、どうしてもハネが出てしまうサイドとかぺたんとなってしまう前髪とかのスタイルのつけ方を熱心に解説しながらブローしてくれたので、めんどくさいからそこまでしないと思います、とは言えなかった。
息子とほぼ同い年のこのスタイリストさんに、とっても気を遣ってしまうなぁ。

ここまでは話通り無料なんだが、
「髪質に合わせてシャンプーとコンディショナーのレベルを変えました。よりまとまりやすくなると思います」と言われるし、前回から、
「やっぱりシャンプーを良いものにするのが髪には一番いいんです」と力説されて、ドラッグストアの安売りシャンプーではいかんのだろうなぁ、と考え始めてたもんだから、つい、
「じゃあ、そのシャンプーを買って行きます」と言ってしまった。
ホストにいい顔したくてドンペリを入れるおばさんのスタート地点はこういう感じかもしれない。

レジで支払いをしたら、普段のシャンプー・コンディショナーの5倍はするね。
「主人が、『高いシャンプー買ってもいいよ』って言ってくれたんですけど、たぶん想像を超えてますね」と言ったら、にーちゃんは無邪気に、
「あ、ご主人も一緒に使われるといいですよ。髪の細くなってる方に、とってもいいんです!」と勧める。
ハゲ防止かい。消費量を増やさせて、どんどん買ってほしいんだろうな。
「いや、その悩みはないんです。私と同じで、髪が固くて困ってるタイプなんで。そもそも主人は髪も身体もまとめて石鹸で洗ってますから」と答えたので、さすがに絶句された。
「働かない息子」に加えて「雑なおじさんである夫」。
どこでも私が半年も通う店には、「大内さんちの伝説」が鳴り響いてしまうと思う。

しかし、にーちゃんはカットもうまいが口もうまい。
「カットは2カ月に1度ぐらいしかしない」と話したにもかかわらず、
「次のご来店は・・・そうですね、6月半ばの週がいいんじゃないでしょうか」と言われ、店を出る時には1か月後の予約を取らされていた。
幸いネット予約なので、よく考え直して延期しよう。
ああ、若い子はいろいろ鬼門だ。

おばあちゃんばっかりの病院に場違いなキメキメの髪で戻り、すぐに呼ばれてひざに電気を流してもらう。
美容院より気が張らなくて、こっちの方が私にはふさわしいんだなぁ、としみじみした。
キレイにしてもらうことが女の喜びなら、関節痛を良くしてもらうのがおばさんの喜びなのである。

帰りにドンキに寄って「本日のクーポン」で安売りの卵とペットボトルのお茶を買い、ケンタッキーで昼と晩のごはんのチキンとコールスローを買って無料クーポンでアイスコーヒーをもらう頃には雨が降り始めていた。
3時間以内なので無料ですんだ駐輪場から自転車を引き出し、かなり濡れながら帰りついたら、せっかくブローしてもらったヘアスタイルは無残にぺしゃんこになっていたよ。
ワックスつけてところどころ髪の束を小さく立ててくれてたにーちゃん、申し訳ない。
「しょせんこんなのがお似合いなんですよ」と、「孤独のグルメ」の井之頭五郎くんみたいなニヒルな顔しちゃうなぁ。

「低温調理の際にお湯が減らないように鍋にフタをしたい」と思ってアマゾンさんに頼んであった「ボウルのフタ」が届いた。
25センチで鍋のサイズにぴったりだが、直径8センチほどのANOVAを突っ込む穴を開けなければならない。
ネットでこの知恵を見た時はキッチンバサミかカッターで切ったと書いてあったんだけど、私が買ったのは思ったより硬いポリプロピレンで厚みもあり、しばらくの格闘ののち無理だとわかった。
こういうのは熱線でもあれば簡単に切れるんだろうが、そういう工具はないし、ホームセンターとかで切ってもらうことも考えたけど、もともと費用をかけたくなくて送料込みで千円で入手したものにあんまり工賃をかけては元も子もない。

しばし悩んで、FACEBOOKに投げてみることにした。
幸い私の「友達」には模型やハンドクラフトをたしなむ人が多いので、何かしら意見がもらえるだろう。

そしたら、いくらもたたないうちに複数の人から、「糸のこ」「金のこ」「ホームセンター」「やっぱり糸のこ」といったリアクションが舞い込んだ。
すごい。ネットのチカラ。
工作用に糸のこがあってもいいと思っていたこともあり、さっそくアマゾンでポチっとした10分後に、仲良しの工作女性から「糸のこなら持ってる」とメッセージが。
あう、注文しちゃったよ。
まあいい、今後まわりで困ってる人がいたら、私がその誰かの何かを切ってあげることもできよう。

タブレットを握りしめて感謝していたら、こちらも現代の恩恵、メッセンジャーで息子から連絡があった。
「実はマネーショートしてしまって当面の交通費をお借りできればと思っているのですが。今週の日曜までは朝から夜までバイトで家にいません。申し訳ないけど、振り込んでくれたらありがたいのだけれども」
そうか、遠方にバイトに行く日々のようだから、忙しいんだねぇ。

大内くんが帰ってきて、振込してくれた。
「5千円、と言うけど、1万円振り込んでおくよ。バイト料はまだ入らないのかな?」
「月末締め来月払いが多くて、今、交渉してるところ。すまないねぇ。稼ぐのは大変だし、自分で調節するのはもっと大変だね」
そんなセリフを言うようになっただけでもずいぶん進歩したよ。

6月に彼がピン芸人としてコントライブに出る情報を聞きつけた大内くんは、チケットを予約しておいてくれるように頼んでみたようだ。しかし、
「あー、やめといた方がいいよ。あんまりおススメできるような会場ではないねぇ。すごい狭くて、疲れる。若さでしか乗り切れない気がする」とのことなので、足腰に自信のない人たちはやめておこう。

なかなかタイミングが合わずにまだ見たことのないピン芸人としての息子は惜しいが、どうも向こうも見られたくないと思ってるような気がする。
ピンは、難しいからかしらん。
よく考えたら「独人ライブ」見てるのか、我々は。あれもピンだろうなぁ。
だとしたら、ピンには芸人の悲哀が詰まってる。綺麗事の入る余地はまったくない。頑張れ。

18年5月24日

昼過ぎに、アマゾンから糸のこが届いた。
配達員さんが重そうに持って来てくれたもう1つの荷物は、マグネシウムのバスソルト4.4キロ。
最近「足が攣る」と大内くんに言ったら、彼もまたふくらはぎが攣るんだそうだ。
予習してあったことではあるが、これは糖質制限をしていると電解質のバランスが崩れて「こむら返り」を起こしやすくなる現象。
マグネシウム入りの入浴剤で改善した人の体験談を読んでいたので、迷いなくこちらもポチっておいた。もう届くか。

バスソルトはお風呂の楽しみにとっておいて、さっそく糸のこをふるう。
細かいプラ屑が出るのでベランダに新聞紙を敷き、ひざが痛くてしゃがめないため丸椅子を持ち出して座って作業。
汗が相当出ると1分でわかり水風呂を張っておく周到さを発揮しつつ、15分もフタと格闘しただろうか、ほぼ期待通りの「穴」を切ることができた。
洗ってプラ屑を落として鍋に乗せ、ANOVAをセットしてみたら、おー、キレイにはまった!
夜通し60度以上をキープするとさすがに湯量が不安で、減ったお湯を寝る前に足しておいたりしたもんだが、これでかなり改善されるだろう。
実際の効果以上に、そういうちまちました工夫をする自分が愛おしい。
水風呂に入って汗を流し、鍋とフタの写真を撮ってFBに上げ、アドバイスをくれた人たちにお礼を言っておこう。

帰ってきた大内くんに、
「フタ、見てくれた?」と聞くと、帰りの電車の中でFBチェックしたらしく、「見たよ!すごいね!」とほめてくれた。
「キミは、リサーチ力と実行力に優れたミセスQCだ。僕だったら絶対こんなことは考えつきもしない。キミが覚醒してからと言うもの、我が家の生活はどんどん改善されて、質が向上して行く!」
「ふふふ、もうひとつ改善するよ。マグネシウムの入浴剤買ったから、きっと足が攣るの、治るよ」
「すばらしい!」

で、お風呂に入れてみましたが、ラベンダーオイル入りのバスソルトはなんだか柔らかく身体に沁みいるようで、体感の細やかな大内くんは、
「もう良くなったような気がする。これは、ぜったい身体に良いやつ!」と喜んでくれた。

庶民のラグジュアリーなこの生活を支えているのはアマゾンと物流。
こんなに引きこもりなのに、何の不自由もなく、思い通りの暮らしができる。そら恐ろしいほどだ。
昨日注文したものが今日手に入ることに慣れてしまって、本当にいいんだろうか?

今日もまた息子から連絡があった。最近多いね。
来週どこかで家に来たいそうだ。
お金を貯めた後の話とか、渡米に向けた具体的なことを詰めたいらしい。
もしかして大学の同期からおカネなりカードなりを借りることにしたの?と聞いてみたかったが、ツィッター上の何もかもを親が知っているというのはあまり嬉しくはあるまい。あえて話題には出さないでおこう。

家に来るなら何か食べさせてやろうと、「食べたいものある?」と聞いたら、「カレー食べたい」。
こっちは糖質制限中だよ、と困って、
「たくさん作っても母さんたちが食べられないからなぁ。他のもので頼む」と返したら、
「そういえばそうか。じゃあ、鶏肉の香草焼きとか」と私の得意料理を言ってきた。
なんとなく機嫌が良くなり、他にもないかと聞くと、
「生春巻きとか。あ、でもあれライスペーパーか」って気遣ってくれるのでますます嬉しくなって、
「母さんたちは具を食べて、あなたの分だけ巻くから大丈夫」と請け合う。
「ありがたい」と喜ばれ、来週の金曜と決着した。

実のところ「香草焼き」はパン粉を乗せて焼くんだよね。でも、パン粉の部分を食べないようにすればいいから。
あとは、カルビクッパを作ってやろう。
息子のはごはんにかけて、私たちは豆腐にかけて食べる。
厳密に言うとカルビのたれが甘いけど、まあ、それぐらいは。
いよいよ甘いものに飢えてきたら作ろうかと思ってた「人工甘味料のパルスイートで作るバニラスフレ」のレシピで、デザートも作ってあげようかな。
前向きに働いてると思うと、応援する気になるんだよ。親なんて、単純。
ご馳走並べて待ってるよ。

18年5月25日

大内くんはまた日帰り海外出張。
大変だから無理に帰ってこなくてもいいよ、って言ったら、
「今回はもう飛行機も手配しちゃったから予定通りに帰ってくるけど、今後は1泊してくるかも。ありがとう」って。
だって、夜中に帰ってきて報告書書いたりしてるの見るのは気の毒なんだもん。

朝は早くから出かけちゃったのでごろごろしてたら、息子から家族グループにメッセージ。
またバイトに行く交通費がなくなっちゃったので、貸してください?!
息子への送金用のキャッシュカードは大内くんが握ってて、手続きもいつもやってもらってるからなぁ。

「父さんが出張に行っちゃったから、夜中までムリ。お借り入れは計画的に」と返事したら、「そうかー」と困ってたけど、そこへ救いの大内くん。
「今、空港なのでトライしてみる」
息子が「すまない・・・です・・・」と言ってる間に、手続き完了したらしい。
「1万円送金した。必ず銀行でおろすこと。コンビニだととてもお金がかかるから」
「うん。最近はそうするようにしてる。必ずお返しします。すまない」
「じゃあ、行ってきます。あとは対応できないので、お母さんを困らせないでね」
こんなやり取りを経て、頼りになる父さんは機上の人となったのでした。

それにしても息子は困ったもんだ、と思いながら過去日記を読み返して傾向と対策を練るほどに家を出る前後のあちらさんの態度のひどさは今の比ではないことをあらためて思い出し、あんちくしょうめ、と1人で煮えくり返っていたら、また突然メッセージが。
「名刺って、必要だねぇ」
どうやら、新しく会った人に話を面白がってもらえて、名刺くださいって言われることが増えてきたらしい。

10年近く前に友人がパソコンとプリンタで、紙は指定通りのマーメイド、フォントも私好みのMSゴシックでシンプルに作ってくれた名刺があるので写メ撮って送ったら、
「お、いいね」。
「友達が作ってくれたんだよ。今は自分で作ることも簡単だし、ある程度の枚数なら業者さんに頼むこともできるから、何か考えたら?アイディアのあるものを作れば、話のきっかけにもなるしね」
「そうだね、そうしようと思った話」
「楽しみだね。1枚ちょうだいね」

と言って終わったんだけど、数か月前に比べるとずいぶん愛想が良くなったというか、多少の無駄話ぐらいは振ってくるようになった気がする。
「人に自分の考えを話す習慣がない」と言ってたのが、まあ少しは人恋しくなる余地も出てきたということか。
こっちは逆に、彼がいつも家にいるわけじゃないから、「そばにいるのに話が通じない寂しさ」を感じなくなってありがたいよ。
やっぱり離れてみるもんだね。
来週来たら、おいしいもん食べさせてあげよう。

18年5月26日

大内くん、午前中マンションの理事会で忙しいんだけど、終わってからつきあってくれないかなぁ。
となりの武蔵境駅近くにできるマンションのモデルルーム見に行きたいんだよ!

ヒマだと何を考えつくか自分でもよくわからない。
75歳ぐらいになったら老人ホームに入ろうと思ってて、でもそれまでずっとこのマンションに住んでるのも広すぎて困るし、歳とったらバス便は不便だし、どこかで駅に近い新築に買い替えた方が将来の資産としては優秀なんじゃないか、と考えるのはわりと自然だと思う。
いかんせん、今はプチバブルで物件はおっそろしく高いから、まあ5年後ぐらいまでは無理だろう。貯金も少ないし。
でもなんとなく研究だけはしておきたくて住宅情報見てたら、モデルルーム見に行くと「アイスクリーマー」もらえるの!

「どうしてそうせっかちなのかなぁ。そもそも糖質制限してるのにアイスクリーム作ってどうするの」とあきれる大内くんを、
「ヨーグルトとパルスイートで低糖質のシャーベット作ってあげるから」とたぶらかして、ギャラリーに来ました。
すごくもっともらしい顔をして営業のおねーさんのお話聞いて、見せてもらったモデルルームはとてもキレイ。
ここ15年ぐらいご無沙汰だった新築物件の豪華な内装や最新の設備に目が眩む。

今はディスポーザーとミストサウナが標準装備だろうか。
バブル物件で高値をつけるために付加価値を上げてるような気もする。
鏡を使いまくった内装はもちろんオプションで、キッチンの大理石天板に造り物のフルーツはのってても冷蔵庫や食器棚は置かない。狭く見えるから。
洗面所にも、香水のビンは置いても洗濯機は置かないの。
非現実的な空間になってるね。

今の我が家が質実剛健な設備を備えていることをあらためて確認し、次に買う物件もいたずらに豪華すぎない地味なものにしておこうと決意して、相談テーブルに戻って肝心のお値段を聞いた。
ここまで話が進まないと決して教えてくれないんだよ。
三鷹や吉祥寺ほどではないけど人気の武蔵境に徒歩6分の3LDKは、真面目に生きてるのがイヤになるほどのお値段でした!
横ですました顔してる大内くんも、目玉がこぼれ落ちそうになってた。

「んー、予算オーバーですねぇ。とってもいい物件だと思うんですけど」と逃げ出しながらも、アイスクリーマーは後日郵送してもらうの。
おみやげつきの物見遊山しちゃった。
この新築マンションが10年物ぐらいの中古になったら買えないかしらん。
その日のために駅前も見ておこうと行ってみたら、新しい図書館がすごく大きくてよかった。
イトーヨーカドーもあるし、北口の「すきっぷ通り」はなかなか感じのいい商店街。
知ってるようで知らない街とお近づきになるのはいいね。

イトーヨーカドーの地下でちょっといいチーズ買って帰って、業務スーパーで買った超安いワイン飲んで新しいスター・ウォーズ観た。
「こういうのこそ、スクリーンにプロジェクターで映して観るありがたみがあるね。息子の部屋をシアタールームにしたりマンション見に行ったり、キミとの暮らしは退屈しない」と喜んでくれる大内くんは基本現状維持が好きで自分からは変化を求めないけど、いざ新しい提案をされるとわりとノリノリになるんだ。

私の母は5年も同じ家に住むと飽きてしまう女で、子供の頃やたらに引っ越しにつきあわされた。
長じて私もつい引っ越しの多い生活をしてしまったけど、今の家には最長不倒記録で14年も住んでる。
人生であと2回だけ引っ越しをしよう。
3回目の移り先は天国の予定。

18年5月27日

金曜に息子に頼まれて交通費として1万円振り込んだんだが、3千円しか入ってなかったとクレームがきた。
2日間の出稼ぎに行った先の埼玉でお金が足りなくて、野宿したらしい。
「この季節、夜はまだまだ冷える。命の危険を感じた。帰りは前に母さんに教わったとおりJRで電車代借りられた。おかげさまで帰れた」のだそうだ。

振り込み担当大内くんが調べたらちゃんと送ってるので、たぶん入金したとたんにケータイ代の引き落としがあったものだろう。
来月にならないとバイト代が入らなくてバイトそのものに行けないと泣きつかれ、もう1度1万円貸しておいた。
なかなか自活できないねぇ。
働きに行くようになっただけマシではあるが、生活力なさすぎ。
金曜日に訪ねてきたら、メシを食わせて説教しよう。

18年5月28日

いよいよ脚が痛くて歩けなくなりバスで吉祥寺に行くのも困難になってきたので、やむをえず家から自転車で2分の整形外科に行ってみた。
4年ぐらい前、ひざが悪くなり始めた頃に行った時はなんだか怖いドクターに冷たくされた覚えしかないうえ、非常に混んでるんで行きたくなかったんだけど、かなりせっぱつまっていわゆる「藁にもすがる思い」。
比較的すいてると言われた午後の診療前に行ってみたところ、5人ほど並んでると思ったら、中に入れてもらったとたんにどんどん入ってきてあっという間に15人ぐらいにふくれた。
待合室はいっぱい。

こんなに混んでるってことは腕はいいんだろうなぁ、前に隣の皮膚科に来た時に薬局で薬待ってたら、おばあさんが、
「そこの整形外科の先生はとっても親切で」って言ってたなぁ。
真性の病人や老人に優しいタイプで、私みたいに単なる運動不足や太りすぎでひざを壊した若い人には邪険なのかしらん。

じきにレントゲン室に呼ばれ、台の上で寝てたら、先生が中でつながってる通路を通って診察室から来て、
「ひざが痛い?ちょっと曲げるよ。痛い?うーん、水が溜まってるね!」と言いながら4枚撮って、そのあと診察室の前の小さな椅子が並んでるとこで待つように言われた。
先生は2つの診察室を内部で行ったり来たりして診療してるようだから、私の前のおじいさんがこっちの診察室に呼ばれたってことは、次に私が呼ばれてあっちの部屋で待ってたらおじいさんの次に診てもらえるんだな。

ところが、そこで看護師さんが「大内さん…」とすまなそうに言うには、レントゲンを見るモニタがつながらなくなっちゃって、いったん待合室に戻って待っててほしいんだって。
その後の流れを見てると、レントゲン写真を見る必要のない患者さんをどんどん片方の部屋に入れて、もう片方で不調なモニタを調整してるっぽい。

40分ぐらい待たされて、
「先生、意外と優しかったけど、私はよくよくこの病院と相性が悪いのかしらん」って考えてたらやっと呼ばれた。

「ひざが悪くなったきっかけは?」と聞かれて、
「去年心臓の手術をしてから1年ほとんど寝てたので筋肉が落ちて、もともと悪かった変形性関節炎が悪化したんじゃないでしょうか…」と言ってから、大内くんの、
「自己診断しないで、お医者さんに『わからないけど、痛いんですぅ』って訴えるんだよ。向こうはプロなんだから、わかんないって言って、診断を仰ぎなさい。キミは医師に良く思われようとし過ぎ」というアドバイスを思い出した。
ああ、またやっちまったい。

でも先生はてきぱきと問診を進めて、
「弁置換?じゃあ、抗擬血薬飲んでる?ワーファリンとバイアスピリンね、うんうん。大動脈を人工血管に交換ね、なるほど」とどんどんキーボードで打ち込んで行く。

「そこに寝て。うーん、だいぶ水が溜まってるね。抜くよ」と言ったかと思うと、注射器刺した。
ちょっと驚いたみたいに、
「たっぷり30cc溜まってた。血液じゃなくて幸いだったけど、黄色いね。かなり炎症が進んでたよ。痛かったでしょう。はい、脚を水に濡らさないでね。シャワーも明日までやめといて。人工血管はね、感染症になると大ごとだから」って早口で一気に言った。

ここんとこずっとつらかったんで、「痛かったでしょう」って言われただけでじんわりきちゃった。
抗擬血薬や感染症の心配もしてくれて他科の知識も豊富なうえ、診断が的確じゃないか!
こないだまでかかってた吉祥寺の整形外科は親切なおっさんだったけど、毎回痛いって言っても、
「んー、水は溜まってないねぇ。シップ出しとくね。電気流すリハビリしてってね」って片づけられて、しまいに、
「運動して動かしてね」って言うから一生懸命プールとかジムとか通ってる間に悪化してたとは!
もしかしてヤブ?
いやいや、自分の身体のことが自分でわからないのが一番いけないんだよね。

「来週また診せに来て。しばらくリハビリに通って」って言われて終わって、ここでも電気?と思ってたら、10分ぐらいして呼ばれたリハビリは、PTさん(理学療法士)の細かい問診の後、痛くて曲がらない右足を丁寧に曲げ伸ばししてくれるちゃんとしたやつだった。
当面、週2回ほど通うといいらしい。
予約制だから待たなくていいし、なにしろ家から近いのがありがたい。

2日後のリハビリの予約取って薬局でシップもらって帰ったけど、PTさんも、
「カルテ見て、抜いた水も見ましたが、かなり悪化してましたね。ひざの液体っていうのは普通、水道水みたいに透明なんです。あれだけ黄色い液が大量に抜けるってことは、そうとう長期にわたって炎症起こしてたんでしょうね。ずいぶん痛かったでしょう」って言ってくれた。
吉祥寺の先生を恨みはしないが、患者ってのは無力なもんだ。
もっと早くセカンドオピニオンを求めるべきだったのかもしれない。

あらためて自分の身体感覚の鈍さに呆れたよ。
ひざを触って、
「水が溜まってる気がする。今度病院行ったら、ちゃんとズボン脱いで脚を触ってもらって!」って厳命した大内くんは、私から見るとシロウト離れしてる。
「私<吉祥寺の先生<大内くん<近所の先生」の順で名医だった!

そうそう、PTさんに糖質制限やってるって話したら、彼もかつてそれでダイエットして17キロ減らしたんだって。
「かなり肥満だったんですよ。曲がりなりにも人様に身体の動かし方教えたり健康のお話をする仕事なんで、これじゃいかん!と思ったんです」とのこと。
前にかかってた整体の先生も若い理学療法士で、やっぱり糖質制限の話で盛り上がったんだが、「理学療法士は糖質ダイエットが好き」の法則?

これでいきなり良くなるわけじゃなくて、むしろ水を抜いた刺激で痛みが激しくなってる。
ただ、重く腫れたようだったひざのあたりが、すっきりはしたかも。
「このまま歩けなくなるかもなぁ」と不安になるほどだったので、わかりやすく水が溜まっててそれを抜く、という「解決」があって本当に良かったし、近所で診てもらえることになってありがたい。

4年前には二度と来たくないと思うぐらい怖かった先生が、今日はほとんど怖くなかった。
数値化できない「痛み」や「不快感」を訴えていると仮病を使ってるような気分になりがちなので、わりとすぐに「どこが痛いの?どっこも悪くない!」って両断されたように思っちゃうんだよね。
「自分を信じて、不調は思いっきり訴えなさい!なんでそんなに卑屈なの?」と大内くんにまた怒られそうだが、今回は「水」という物証が出て、とても心が安らか。

18年5月30日

家の中でよろよろと歩くのに「杖」をひっぱり出してみる。けっこう具合いい。
4年前のイタリア旅行の時すでにひざが悪かったので買ったんだが、デザインがしゃれてるし折りたためるところがカワイイの。

じゃあ杖ついて病院行くか、って言うと、面倒くさくて、「歩けなければ自転車に乗ればいいでしょ!」って乗りつけ、院内では大仰にびっこひいて歩いてる。
自転車にも乗れなくなったら車で行くかも。徒歩5分なのに。
つくづく歩くのがキライなんだなぁ。て言うか、折りたたみなんだから、杖持とうよ>自分。

ここんとこずっと外出先では足を引きずってた。
一緒にいる大内くんの手前、
「恥ずかしい?ごめんね、歩き方がヘンで」って謝って、
「全然かまわないけど、かわいそう!」って同情されて、症状が辛いことよりも疾病利得を喜ぶタイプなんで、優しくされると嬉しいんですよ。
もちろん大内くんは脚が痛くない時でも充分優しいんだが。

病人気分にはひたれるが、基本的にそこにいる人はみんな病人である場所、それが病院。
しかも老人が多くて杖どころか車椅子も来ちゃう整形外科では、私なんか「エアロビのやりすぎで筋でもちがえた?」って目で見られそうなヒエラルキーの底辺。

患者さんには2種類あって(いや、もっとあるのかもしれないが)、「ケガなり病気なりが治るまで一時的に通う患者」と「生きてる限り通い続けることになる患者」がいる、ということを学んだので、大儀そうに腰をさするおばあさんたちに、
「スミマセン、私ももうひざの軟骨がすり減ってるんです。長いお仲間になるかもなんで、よろしくお願いします」的なオーラを一生懸命出す。
誰も見てないのに「キャラづけ」をして「それっぽい顔をしてみる」癖がどうしても抜けないのは、自意識過剰という治らない病気だよね…

今日もリハビリしてもらって、20分ばかりだけどじっくり右足を伸ばしてもらったら、歩けないほどの痛みが消えた。
家に帰る頃には戻ってしまうひと時の極楽ではあったものの、
「こうやって痛みを取って、痛くない状態を少しずつ長くしていきましょう」と言ってくれたPTさんが頼もしく思えた。

水を抜いたからと言ってすぐに良くなるものではなく、刺激でむしろ痛くなることもあるそうな。
改善しないから今日もドクターの診察に並ぼうかと思ったけど、やっぱり来週でいいや。
PTさんがガンガン予約入れてくれて、金曜もOKだし月曜に診察に来るならついでにリハビリもしましょうね、って。
今の状態が不安なんで、ひんぱんに専門家に会いたい心理状態。

思えば去年の手術以来病院通いが激しいのは、あちこち不調が噴き出してるのもあるけど、基本的に不安が大きいんだと思う。
「私はどうなってるの?いつ治るの?」って。
たぶん、治らないこと、気長につきあわなきゃいけないことが増えたという事実が頭にすんなり入ってない。
過去と現在と未来が断線している、時間把握が苦手で気が短い精神構造が仇になってるんだろう。
人は私を「刹那主義者」と呼ぶ。

整形外科のとなりの皮膚科で月イチのケロイド治療の注射を受けて薬もらって帰った。
4軒の病院と薬局が集まってメディカル・コートと名づけられた一角を、なんと全クリしているなぁ。
決して病院が好きなわけじゃないよ。待つのも並ぶのもキライだし。
しかし薬と注射はわりと好きかも…外部の力におすがりしちゃうタイプ?
とりあえず寝て、自然治癒力を高めよう。

薬と言えば、寝る前にビタミン剤をのむようにしてから調子がいいかも。
一緒にのんでる大内くんも「キューピーコーワゴールド」のビンを眺めて、
「こういう古典的なのが意外と効くんだねぇ」と感心してたから、「マスチゲンでものむ?」と聞いたら、なんだか照れていた。そういう薬かい!?

今日のミセスQC。
毎晩のむ薬のビンは寝室のキャビネットの上に置こう。
リビングのクロゼットの中の薬棚から毎回取ってくるのは効率悪すぎ。
「僕はそこから2錠ずつ出すのに全然疑問なかった。すごい!」って言われて、人類の原動力は「面倒くささ」だとしみじみ思う。
大内くんは勤勉すぎて、進歩しない。

18年5月31日

息子からまたSOS。
「今夜の9時に六本木でバイトが終わったあと帰る交通費がない。2千円振り込んで」

会社と家でそれぞれのパソコンの前に坐ってた大内くんと私が即座に反応したものの、今振り込んでも下ろせるのは明日だってことを彼は理解してないみたいだ。
幸か不幸か、今夜は大内くんが接待で六本木に行く。
10時には終わるだろうから、現地で息子に会って現金を渡せそう。
こんな間のいい偶然があるもんだろうか。
本当に息子ってヤツは「何か持ってる」としか思えないが、ラッキーの無駄遣いだ。

そして、対照的に大内くんは「ツイてないヤツ」。
今夜に限って接待は早めに終わって8時過ぎには解放されたにもかかわらず、9時過ぎまで六本木のルノアールで息子のバイトが終わるのを待つ羽目になってしまった!

それでも9時20分ごろルノアールに現れた息子にたいそう感謝されつつ、タクシーで一緒に帰ってきたそうだ。
(ちょうど帰り道のアパートに落としてきたって)
24歳プータローの若造にとって、働き盛り稼ぎ盛りの父親がタクシーチケットでさっそうと帰るのに同乗させてもらったのはなかなか印象深い出来事だったろう。
「すげっ!タク券だっ!」と感嘆していたそうだから。

「母さんは元気?具合はどうなの?」と心配してくれたらしい。
「元気にしてるよ」と答えたら、「よかった!」と安心した様子だったそうだ。いじらしいじゃないか。

「オヤジが運転手のかたに話しかける言い方がていねいで、オレに似てる。オレってオヤジに似てるんだなぁ。ダンドリが悪くて、いつも母さんに叱られるんだよ」
「あの人は二手も三手も先を読むからね」
「そうなんだよ、スゴイ人だよねぇ」
と、男2人でなんだかしょんぼりと肩をすくめていたそうな。
ちょっと笑える光景。

大内くんにとっては父親の威光を見せつけつつ親切を施し、傷をなめ合いながら談笑して一緒に帰る、という結果オーライで楽しい晩だっただろう。

今日と明日はイベントの会場整理、来週は連日深夜の工事現場で肉体労働にいそしむという息子。
頑張ってるね。
明日のバイトの後、渡米の計画を話しに来るようなので、ごはん作って待っていよう。

朝、家を出る時に、夜、出先で一文無しになることがわかっていても、「なんとかなる」とか「親に頼めばいいや」と安易に考えるのはやめてもらいたいんだが、小学生の夏、家からずっと離れた遠いプールに1人で行った帰りに30分後にしかバスがなかったからっていきなり有り金はたいてアイス買って、なめながら家方向に歩き出して、なめ終わるまで「どうやって帰りつくか」全然考えてなかった自分のことを思い出すと、要するに息子の精神年齢はとっても幼いんだなぁ、と。

しかもこの話のオチは、買い物帰りの母が車でたまたま通って、驚いて私をひろい、
「ママが通りかからなかったらいったいどうするつもりだったの?!」と詰問するのに対し、
「さあ、なんとかなると思った。じっさい、なんとかなったでしょ?」とあっけらかんと答えた、というものなのだ。
「あんまり呆れたんで、叱る気にもなれなかった」と語っていた母の気持ちが、今はわかる。
私の人生もなんとかなった。
息子よ、支えてくれる「いい人」と結婚できるかどうかが運命の分かれ道だぞ。

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