18年12月1日
今日は超忙しい。
朝の10時に別々に病院に行くところからのスタートだ。
大内くんは多忙のあまり持病のアトピーが悪化し、全身かゆくてかさぶたになり、そこここから出血している大参事。
シーツが血だらけになるのを見かねて、濃い紫のカバーリングに買い替えた。
点々と血が着いてもこれなら目立たないが、紫一色のダブルベッドはなんだかエロい。
余談として、かかりつけの近所の皮膚科はずいぶん久しぶりで、女医さんに腕や太ももを見せ、
「お尻もひどいです。見ますか?」と聞いたら、「いえ、いいです」ときっぱり断られたらしい。
さて、医者相手のセクハラは成立するか。
ちなみにこの女医さんは私の手術痕のケロイドも治療してくれているが、
「乳房で傷が両側に引っ張られちゃうのよね、大きいから」と私の胸をつついたことがあり、我が家では、
大「セクハラだ」
私「いや、きっとあなたのことが好きだから、『奥さん巨乳。憎らしい』ってヤキモチ焼いてる」
大「それより実はキミのことが好き。百合」と、いいように言われている愛らしいツンデレキャラである。
大内くんが大量の塗り薬と「眠くなるから寝る前にのむといいかゆみ止めの飲み薬」をもらっている頃、私は眼科の検診。
緑内障の治療のためにずっと目薬をもらっているのに、あいかわらず眼圧が下がりにくい。
こないだやっとけっこう下がる薬を見つけたんだが、あいにく目に合わなくて軽く炎症を起こす。
それじゃあ、と別の薬にトライしたところ、炎症は良くなったがせっかく下がってた眼圧はやや上がる、という切ない事態。
私「もう、少々の炎症はガマンすることにして、前の薬を使うってんじゃダメですか?」
先生「そういうわけにはいかないわよ。うーん」
私「でも、可能な目薬は全部試しちゃって、今回のが最後ですよね?」
先「うーん、これでも、下がってないってわけじゃないから・・・うん、もうひと月、これで試してみましょう。それでダメだったらね、まあもっともっと別系統の薬を使うって選択もあるから!」
眼科医もなかなかに粘り腰だなぁ。
ついでに、半年前に作ったメガネの度が合わない気がして頭痛がする、と専門の人に検眼してもらい、
「かなり良くできたメガネですよ。頭痛と肩こり?んー、加齢じゃないですか?」と明るく言われて、退散した。
カルテを見て、
「昭和34年のお生まれ・・・えーと・・・ひとつ前、ですか?」と言われ、
「はい、59歳です」とはっきり答えたが、どう見ても70代のおっさんに気を使われたのが、なんとなくショック。
人生80年余のこの時代に、還暦ぐらいでそんなに神経質になりませんよ!
大急ぎで帰ってきて、それぞれにてきとーにお昼ごはんを食べて、午後は心臓の月イチ検診。
いつもは車で行くんだが、3時からカラオケ、と考えると、家に帰ってまたバスで出かける時間はない。
病院にバスで行って、駅まで歩いてひと駅電車に乗ってカラオケ屋、ってのが一番合理的だろう。
ここのところワーファリンの血中値が高すぎて困ってる。
血液がさらさらすぎるのか、身体のあちこちに内出血ができるレベル。
今日の数値は「2.9」。
適正値が「1.8〜2.2」なのに前回「3.0」だったので薬の量を減らしたんだが、まだ多すぎるのか。
先生も困って、「もう少し減らしましょうか」。
術後1年半、高すぎたり低すぎたり、全然安定しない!
腕を見せて、
「内出血班ができちゃうんです」と言ったら、聴診器を当てる時におなかにもでかい内出血があるのを見て、
「ここにもできてますねぇ。うーん・・・」と困ってた。
ここ2日ほど尿が異常な色で、採尿の時に看護師さんに「血尿ですね」と言われた。
今日の検査結果は次回の診察の時に出るので、何かが見つかるとしてもひと月先になってしまう。
先生に「血尿出てるそうです」と言ったら、
「うーん、ワーファリンのせいかもしれません。いちおう、検査結果を急いでもらっておきますから、もし何かあれば電話でお知らせします」とのこと。
あちらこちらで出血大サービス中。
最近ずっと、この先生がどうもヤブだと思う。転院を考えたい。
しかし、榊原記念病院に太いパイプを持っているようだし、心臓に関する診立てはわりと確か。心臓オタクか。
どうも私はだんだん心筋が衰える病気のようなので、この先の手術のことを考えると軽々に転院もできない。
お約束のように処方箋に「湿布薬」を書き忘れてると、薬局で気づいた。頼んだのに。
書き落としの多い先生なのでいつも気をつけてるんだが、今日は私も見落としてた。
先生、手書きのカルテやめて電子カルテにしましょうよ。
そしたら前回と同じ処方箋が簡単に作れるんだから。
「ワーファリンの量が変わった」ような重要な変更には手書きで赤のアンダーライン入れる慎重さもいいけど、何時代ですか?
昭和は終わり、平成ももうじき終わるんですよ?
娘さんも医者らしいし奥さんも医療法人の関係者らしいから、彼が引退して近隣とのパイプをしっかり継承した後継者に診てもらうことを軽く夢みて、今日は急いでるし、湿布薬はあきらめて次の予定に行こう。
5分前にたどりついたカラオケ屋の前では、もうメンバー2人が待っていた。
「まんくら時間」と呼ばれる遅刻が当たり前だったまんがくらぶなのに。
横でご新規さんが「今日は予約でいっぱいなんです」と待たされてるのを尻目に、「5名様でご予約の大内さま」はすんなり部屋に案内された。
5人目は小さなスツールに坐る前提の、人数ギリギリのすごい狭い部屋だったけど。
今日のメンツは、
A:デザイン会社社長
B:フリーのゲームデザイナー
C:役所の人
D:製鐵会社勤務
E:その妻
ここのところ立て続けだった6時間とか8時間のカラオケでAさんと「アニソン以外も歌いたいねぇ」となり、「カラオケあんまり好きじゃないから」と断っていたBさんも「あがた森魚シバリ」とかならノリが良くなるんじゃないかと、仲良しの2人を混ぜてみた。
ついでに彼らと仲良しで、時々大内くんのラインにカラオケ中の写真を送りつけてくるCさんも呼んで。
そのCさんは少し遅れてきて、真っ黄色な上着に粋な帽子といういでたち。公務員なのに。
「え?今日はどういう企画なの?」といぶかしがってるのは、メンツを見て思うのか、選曲のシバリを聞いているのか。
持ち込み自由だと言っておいたら「安もんだけど」と言いつつ赤ワインのフルボトルを持ってきてくれた。
何を歌ったかねぇ、基本的に「古い歌で行きましょう」ってことだった。
(なのに私の第1曲は「インフルエンサー」だった。アルフィーの「AUBE」も決して古いとは言えない)
いきなりみんんなが入れたがる「あがた森魚」は、実のところ12曲ぐらいしかなくて、シバリには耐えないと判明。
おまけに意外と新しい歌が多くて、誰も知らない。
「永遠のマドンナK」がないなんて!
私の病院があって3時より早くは始められず、フリータイムは7時までだから4時間、まあこのメンツならそれぐらいでいいか、と思って始めたのに、途中ではやはり「予約曲がいっぱいです」のメッセージが。
この先20曲が決まってるってことだぞ。
異彩を放つ公務員のCさんは、十八番(おはこ、と読もう)の「唐獅子牡丹」を歌うんだが、これがものすごく上手い。
渋くセクシーに歌い上げる「銭形平次」も絶品。
なのに、「最近のカラオケルームってのは、こんなリモコンで曲を入れるのか」と驚いていて、普段はスナック専門なんだそうだ。
今日から、彼の二つ名は「スナッカー」。
学生時代はキレやすくておっかない人だったのが、そこそこ温厚になっていて驚いた。
私の肩を抱いて「3年目の浮気」をデュエットして、
「大内は、いいなぁ。幸せもんだなぁ」としきりに私をほめる。
うん、すごくいい人だ!
私は中島みゆきとか谷山浩子とか歌ってたが、他の人が「カレーライス」とか「プカプカ」とか歌うから、なんとなく斉藤哲夫の「バイバイグッバイサラバイ」歌ったら、Bさんをけっこう直撃してた。
「プカプカに対抗して」とヒカシューの「プヨプヨ」を歌うAさんは、次第に英語の歌に傾倒する。
じゃあ、と私が歌うつのだひろの「メリー・ジェーン」を経由して、もちろん今とても旬なクイーンも出てだんだん「スカボロー・フェア」とかに行き、最後は全員で「ミセス・ロビンソン」歌ってた。
延長しようかの声もあったけど、割高だからやめといて、1800円の飲み放題とCさんのワインですっかり出来上がった我々は2軒目へ。
いつものJohn Henry's Study。
皆、学生時代によく来た店なので、
「まだあるんだ」「なつかしいな」と言いながら急な階段を3階まで登った。
そのあと3時間、ものすごく楽しかった。
30年以上の間にいろんなことがあって、仲の良かった人たちが少し疎遠になっていたなんてこともあるらしいが、けっこう解消されたかも。
私自身、昔はあまりつきあいのなかったAくんCくんととても楽しく話が弾んで、意外なほどだ。
大内くんが来年はマンガの同人誌を作りたいと思っている話、皆に支持されていた。
今でもマンガを描いているCさんはもちろん原稿をくれるそうだし、描かない人であるBさんもテキストならなんとか、と言っていた。
Aさんは、昔キレッキレの前衛的な力作をものしていた人なので、ぜひまた描いてほしい。
「言い出した人間の奥さんも、当然やるんだろうな」とCさんにスゴまれた私も、タブレット買ってもらって電子マンガ描く、と言ったら、Cさんは今、絵コンテ段階はスマホで作ってると言って見せてくれた。
最新技術だー。
すっかり酔っ払ってお開きとなり、人間嫌いたちも、
「1、2時間で帰るつもりだったが」
「今日は楽しかったなぁ!」と言いながら帰ったようだった。
これからの忘年・新年会のシーズン、彼らと会う機会はむちゃくちゃ多い。
大内くんも私も、まんがくらぶにしか友達がいないもんだなぁ。
Cさん、次は「カナダからの手紙」をデュエットしようね!
18年12月2日
昨日は、若い頃を一緒に過ごした気のゆるみから、壊滅的な飲み会だった。
「夜中に思い出して恥ずかしさのあまり、きゃっと叫んでろくろっ首になる」という表現があるんだが、まさにそういう感じ。
何度も飛び起きては、二日酔いの頭痛と、この「きゃっと叫んでろくろっ首」に苦しめられた。
大内くんも全然起きられないようで、2人して昼までどろどろと寝ていた。
さすがにあんまりタイトなスケジュールなので、1日休養日だ。
本を自炊して、テレビ見て、週日用の料理を仕込んで、のんびり。
ただ、あっという間に夕暮れになっちゃうの。
昼まで寝てると1日が短いよ、しくしく。
人と楽しく過ごしたあとは泣けてくる。
「楽しくすると、お母さんが怒るからだよ。『なに1人で調子に乗ってるの。誰もあなたのことなんか好きじゃないのに、バカみたい』って言うからだよ」ってのが大内くんの分析だけど、5年前に亡くなった母の声は、さすがにもう小さくなって聞こえないと思いたい。
私が揺れて不安定になるのは、人と寄り添うと、自分の心が戻ってこられなくなるからだと思う。
オトナはみんな、他人と自分の区別がちゃんとついて、1人で立っていられるんだけど、私は他人と混ざり合って自他の境界がわからなくなり、人と融合してしまった心の皮膚を引きはがした時に赤剥けになって痛むんだ。
今は大内くんがその孤独をなぐさめてくれてるからいいけど、いつかはどっちかが先に死ぬんだよね。
とても彼無しで生きる自信はないなぁ。
「夫婦は依存し合ってもいい」と信じてきたものの、結局1人で生きてかなきゃいけないのか。
そんなことを考えながら、2人分とは到底思えない巨大な「鱈ちり鍋」を食べ、自家製アイスクリームを堪能して、お休みの夜は更ける。
12時前に寝ちゃったから言えなかったけど、大内くんは明日、誕生日だ。おめでとう。
18年12月3日
大内くん、55歳の誕生日。
しかし、ディナーもプレゼントもなしに、日帰り国外出張に行ってしまった(涙)
辛うじて早朝出発前に「おめでとう!」の嵐は浴びせたが、帰りは夜中(涙涙)
1人残されてすることもない。
しょうがないから、大内くんが過去に書いたFBの記事をさかのぼって読んでみた。
最初はけっこうバリバリ書いていたけど、忙しいからか、だんだん間遠になってる。
ここ数ヶ月、更新がない。
しかし、案外面白いのだ。
息子には、
「オヤジは、考えてることは面白いかもだが、文章が決定的にヘタ。オレはおふくろに似て、本当に良かった」と胸をなで下ろされているが、独特のほわんとしたリズムがあり、読む人を置いて行ってしまうような勝手なスピード感がありすぎる私の文章に比べて、人柄がにじみ出た温かい味わい。
着眼点も秀逸だし、下支えとなる知識も豊富。
この人の良さがわかるのに、息子はまだまだ20年ぐらいかかるかも。
私自身、日頃、大内くんの足りないところばかりをあげつらっているようだが、もちろん本当のところは大好きだし、すごく頼りにしている。
あれほど人の悪口を言わない人間は珍しい。
あわて者だけど、肝心な時にはあまり動じないで楽観的なのも助かる。
私は悩みすぎなので、いざとなったら悩まないタイプの方が一緒に暮らすにはいいに決まってる。
なにより、この人はきっとずっと私のことを好きだろう、と信じられた人は人生で大内くんだけだ。
頼りない愛情の持ち主だったら、30年連れ添おうとも疑い続ける自信はある、物事に慣れにくくて執念深い私である。
誕生日のプレゼントに、このほめまくりの文章を贈ろう。
元手がかかっていないところが、とっても素敵。
息子にも、「今日は父さんの誕生日だよ!2人してあなたのこと、思い出してた」と打っておいたら、
「おめでとう!また空いに行くよー」とキュートな誤字のお祝いメッセージが帰ってきた(笑)
アメリカから帰って以来、お互いほどほどの距離で暮らしていて、いいことだ。
私は、亭主より子供が元気で留守がいい。
18年12月5日
明日は友人と渋谷に「雲田はるこ原画展」を見に行こうと思っていたのに、血尿が止まらないのを心配した大内くんから「外出禁止令」が出た。
正直、脚の痛みで整形外科に行くのも控えて寝ているぐらいの、盛大な血尿。
だるくて目まいがするのは貧血のような気がする。
会社に行ったと思ったら、「血尿は、膀胱がんなどの深刻な病気のサイン」というURLを送りつけてくる大内くん。
尿検査をしてくれているはずの心臓のクリニックに電話で聞いてみたところ、
「あー、やっぱり血尿でした。しかも、白血球は出てないので、膀胱炎とかではないですね。一度、泌尿器科で調べてもらった方がいいです。ワーファリンを止めて様子を見たいところですが、止められないので」と先生。
そーゆーことは電話して知らせてくれるんじゃなかったのかいっ!
ひと月後に定期検診に行くまで、ほっとくつもりだったのかいっ!
会社帰りの大内くんが検査結果をもらいに行ってくれたので、明日にでもそれ持って近くの泌尿器科に行ってみようと思ったが、美容院や床屋の多くが火曜に休みのように、昔のデパートがよく月曜にそろって休みだったように、病院というものは木曜休みのところが多い。
患者が途切れるのだろうか。
目指す泌尿器科もご多分に漏れず木曜休みだった。行くのは金曜にしておこう。
18年12月6日
と思っていたら、木曜の午後、激しい腹痛に襲われた。
身動きできなくなるほどの痛み。
大内くんに電話してみたが、出ない。
しばらく丸まって考えてみて、病院もちょうど昼休みな時間なので、救急車を呼んでもいいかどうかを相談するといいらしい「#7119」に電話してみることにした。
「はい、どうされました?」と優しく聞いてくれる看護師さんらしき人に、
・1時間ほど前からの激しい腹痛
・ワーファリンを服用していて、効き目が過剰気味
・1週間近く血尿が出ている
と伝えると、
「それは、救急車を呼ばれた方がいいですね」と言われた。
「もう1時間ほどして病院のお昼休みが終わるまでガマンして、タクシーで行こうかと思っていたんですが・・・」と言ったら、
「腹腔内出血の恐れもありますから、ガマンなさらないで、救急車を呼んでください」とのこと。
しかし、救急車に乗ると行先は選べないと聞く。
すんごい遠い病院に担ぎ込まれても困るし、昼休み中でも救急受付は開いてるかも、と言われ、近くの病院の救急受付に電話して聞いてみて、そのうえでタクシーで行きます、と決着した。
「もし病院が開いてなかったら、救急車を呼んでくださいね」と念を押されて、お礼を言って電話を切った。
ここまででかなり脂汗が出ている。
手持ちの診察券を調べてみると、あと15分ほどで一番近い病院の午後の診察が開く。
救急受入れやってるか聞こうと電話したが、今は誰も出ない。
休みでないことだけHPで確かめ、支度をして向かうことにした。
最悪何があって帰れなくなるかわかんないから、読むものが山ほど入ったiPadと充電器とワーファリンを始めとした2日分の薬だけは持つ。
(我ながら周到だ、と悦に行ってたんだが、あとから大内くんに「緊急入院になっても、病院なんだから、ワーファリンは出してもらえるんじゃない?」と言われて、ショック。それは思いつかなかった・・・)
歩いて2分ほどだし狭い道だし、タクシー呼ぶ方が手間だと思い、歩いて行くことに。
でも、一歩一歩がとても遠い。
「尿管結石かなぁ。さっきググったら、『陣痛の倍、痛い』って書いてあったしなぁ。これは確かに、倍とまでは言わないけど60パーぐらいの痛みではあるなぁ。こうして痛いのガマンして歩いてると、陣痛が遠ざかっちゃって必死で歩いてた唯生の時を思い出すなぁ」とか考えてたら、主観的には10分ぐらいかかった気がする。
7人ほどの列ができてて、ちょうど開いたところ。
「救急で!」とか叫ばなくても、順次看護師さんが受付してくれてるから、と列の最後尾について待ってたが、並んでる人たちのそれぞれが、
「風邪をひいた外国人」
「ケガの子。つきそいはおばあちゃんで、保険証はお勤めのお母さんが持って出てて、今、葛飾区から向かってる」
「書類の記入の仕方がわからないお年寄り」
と、様々な事情を抱えている。
おまけに宅配便のおにーさんがお歳暮らしき包みを届けに来て、割りこめなくて待ってたんで、「どうぞ」とお先にのジェスチャーをしたら、「え?大丈夫っすか?」と言いながら、そそくさとハンコもらって去って行った。
脂汗流したおばさんに譲られても困るだけだろうか。
やっと看護師さんに話ができて、でも救急とかやってなさそうだし状態は伝えたけど「大変!」とはならないから、「7番」の番号札もらって隅に坐ってたんだが、あんまり痛くてつらいので、
「すみません、横になって待てる場所はありませんか」と聞いてみた。
「はいはい」と奥に行った若い看護師さん、しばらくして、
「ベッドは用意できるんですけど、お話の状態だと、うちではエコーとかの機械がなくて検査もできなくて、痛み止めをお渡しするぐらいになっちゃうんですよ。近くのN病院に行かれたらどうですか?そちらなら検査できると思います」って。
なんかもう、あんまりいろいろ考えられなくなって、とりあえずタクシーを呼んでもらって、そっちに向かった。
大内くんには逐一ライン入れてるけど既読がつかない。
N病院で受付して、お願いしたらベッドに寝かせてもらえて、ああひと安心、と放心する前に、大内くんに「N病院で診察待ってる。しばらく電話できない」とライン打っとく。
看護師さんの問診に答えたり、心臓のクリニックでもらった尿検査の結果の紙を渡したりしてたら、「大内さんって、いる?A病院から回ってきた人」って声がするので、「はい〜、います〜」ってか細い声を上げると、「お電話が入ってます。出られます?」って。
さっきの病院の人が心配してかけてくれたのかしらん、と思って出てみたら、大内くんだった。
「血尿のこと、話した?ワーファリンのんでるって、言った?」とまくしたてて、
「今、診察待ってるから」って言っても、
「いいから、そこにいる人に替わって。師長さんとかに」って言う。
みんな忙しそうだよ。
「無理。まだ検査もしてないし。ちゃんと全部話したから。救急車じゃなくて自分の足で来た患者なんだから、そんなに急ぐの、無理!」って言って切っちゃった。
今日は仕事で遅くなるって言ってたから、
「とりあえず、早く帰らなくていいからね」ってラインしたら、「今、向かっている。仕事は大丈夫」。えー?!
ドクターが来て、軽い問診と触診のあと、まずはCT撮りましょうってなった。
「ワーファリンの数値が高くて血尿が出てるってことだと、腸内で出血してる可能性もあります。その場合は、入院になります」
「はい・・・今現在、かなり痛いんですが、痛み止めはもらえますか?」
「いいですよ。ロキソニン・・・は、ワーファリンにまずいか。筋肉注射するとさらに内出血する恐れがあるので、ボルタレンの座薬でいいですか?」
「いいですぅ」
看護師さんが来て、カーテン引いて、「はいー、ちょっと脱がせますねー、ちょっと『大』の方、したくなるかもだけど、ガマンしてくださいねー」って器用に座薬入れて去って行ったら、少しだけ痛みが和らいだ。
細いベッドごとCTの部屋に移動するようで、うーん、これって人でいっぱいの待合室をもろに横切ってる気がする。
恥ずかしい〜!
CT撮って採血してベッドのまま戻ってきて、さっきのカーテンのスペースに安置されたと思ったら、大内くんが現れた。
申し訳ないのとほっとしたのとで、涙が出てきちゃった。
ベッドの横に坐っている許可をもらって、「大丈夫?」って心配そうで、本当に心苦しい。
鎮痛剤で痛みが和らいでいるもんだから、なんだだ「大げさに仮病を使って呼び寄せた」ような気分に陥る。
「何言ってるの。大げさなんてこと、ないんだよ。そもそも、どうして救急車を呼ばなかったの!」って叱られ、
「どこに連れてかれるかわかんないじゃん。行先は選べないんだよ。遠くだったら困るでしょ」と説明したら、ちょっと言い負かされてた。
しかし!
こんなに大騒ぎして、いざドクターの説明を聞いたら、
「何もない」
のだった!
腹腔内に血だまりはなく、尿管結石の疑いはあるものの、石も尿管の腫れもCTでは認められない。
血液検査で細菌感染がないことがわかるので、盲腸でもない。
かと言って便秘でもないようだし、
「うーん、どうしたんでしょうねー」と悩むドクターは、
「とりあえず、ワーファリンは少し減らしてみてはどうですか?」と乱暴なことを言う。
そりゃあ、今現在の値は「2.5」で、土曜日の「2.9」よりは下がってるものの、適正値が「1.8〜2.2」であることを思えばちょっと振り切れてるんだが、主治医に相談しないで減らしていいもんなの?
「もしまた痛みがあったら?」と心配そうに尋ねる大内くん、
「その時は近所にある大学病院に行ってください。泌尿器科も診てくれますから。今日は、軽い腸の痛み止めをお出ししておきます」と言われて、安心できたんだかどうだか。
おまけに薬局では、
「緑内障の治療をしてるって、先生に言いました?お薬がバッティングするので、問い合わせたら、削除になりました」って言われた。
別の病院でもらってるカロナールでも腸の痛みはおさまるから、そっちをのんでくださいって。
あらゆる方面に人騒がせをしてしまった、と打ちひしがれ、痛みが治まってきたのもあって、申し訳なさばかりがつのる。
「熱とか検査結果とか、目に見える証拠がないと病気とは認めない」主義の母親に厳しくされたせいか、自己申告の症状は証拠能力が薄いんだよね。
大内くんはもちろん、
「いくらでも言いなさい。人間、具合が悪くないのに悪いと思い込むなんてことはそうそうない。『悪い気がする』時は、本当にどこかが悪いものなんだから。悪くなかったら、むしろ、めっけもの!」って主義で、今回のような「空振り」も絶対責めないけど、私の脳裏では、「気のせい!」と威圧する母の声が鳴り響く。
あいかわらずまっ赤に血尿が出てるのを眺め、「心の支えはこれだけだなぁ」とつぶやいたら、「血尿の具合を確認しにきた」大内くんに叱られた。
「我が家は自己申告がちゃんと通るんだからね!」って、私は、自分ってやつが一番信用できないんですけど!
でも、心配してすっ飛んできてくれて、本当に嬉しかった。
大内くんの顔を見たら、ものすごく安心した。
問題は、この「重症感」が何やらとても甘やかなこと。
人の注意を引くためなら命もあまり惜しくない、という厨二病の状態にいまだあるような気がするよ。
来年は還暦なのに。嗚呼。
それにしても、あの激痛はなんだったんだろう(涙)
18年12月8日
楽しみにしていた忘年会がある。
もちろん大内くんからは、「ドタキャンでも仕方ないでしょう」と勧告された。
出席予定の友人たちのうち、先週の日記を読んでくれた人は当然欠席だろうと思うらしく、次々に「無理をしないで休んでください」と親切なメッセージをくれた。
でも、行きたいんだよぅ。(遠足の日に熱があっても、ごねにごねたタイプ)
体調が良くない、のは確かだが、血尿と貧血なんて人に感染るものではない。
幸い、先輩んちでの家飲みだからと、車で行く、私は飲まずに帰りの運転をする、つらくなったら床に転がっている(どうせ開始後2時間で床に酔っ払いが転がり始めるんだから)という条件でやっと大内くんの許可が出た。
楽しいことのあんまりない生活なので、気の毒だと思ってくれたらしい。
万が一泊まりの宴会になった時のために、寝袋も持ってっていいって。
「車で行きます」と言ったら、家主である長老は少し驚いていた。
「忘年会で、飲まないなんて!」である。
また、距離はさほどでもないが道がたいそう渋滞するのだそうで、何通ものメールで細かく抜け道を指示してきた。
「あいかわらずよく気のつく人だ。僕はとてもこんなにいろいろ気が回らない」と大内くんが感心していたよ。
ところが、大内くんの運転の才は長老の気配りをも凌駕していた。
大事に大事を取って1時間半もみておいたら、ヤマ勘とカーナビの力で30分ほどで着いてしまったのだ。
電話を入れたら「どうぞどうぞ」と早めに入らせてくれたのでよかった。
はからずもお客さん第一号になった我々。
もともと本やマンガを山のように持っている人だが、この夏にプチ合宿を開いてくれた別荘にすべて運び込んでいるので、東京のマンションは無駄がなくシンプル。
まだ新しい室内を見せてもらったり、手元に置いてある本棚の中身に感心したりしてるうちに、お客さんが次々やってくる。
持ち寄り制のため、前夜から12時間かけて低温調理した800グラムのローストポークと4日間漬け込んだタンドリーチキンを焼いたのを持ってきた。
あと、大根の千切りと明太子を持参して、キッチンを借りて調理した。
マヨネーズとめんつゆも借りた。と言うか、分けてもらった。
「明太大根のサラダ」、作ったのを持ってくると、水が出ちゃうんだもの。
どれもおいしいと評判を取ったよ。
今日のメンバーは7人。
A:家主。ソフト会社をたたんでセミリタイア中の前期高齢者。やもめ。
B:Aの元仕事仲間。今は野良プログラマ。
C:B夫人。
D:会社経営者。既婚。
E:ニートにしてプータローを自認する、実は地主階級。
F:製鐵会社勤務。
G:その妻。
Bさんは、私が頼んでおいた古い同人誌の束を持ってきて貸してくれた。
まだコミケがなくて「マンガ大会」が行われていた高校生時分、東京の即売会に泊まりがけでやってきて買い集めた記憶のある懐かしいその同人誌を、度重なる引っ越しに耐え切れず処分してしまったことは一生の後悔だ。
Bさんのように自宅にマンガをたくさん持ってる、と言うより「マンガの倉庫に住んでる」生活はなかなかできるものではない。
とは言え、私の知ってる人は多かれ少なかれ激しい愛書家で、裁断が前提の「自炊」などする人はいない。
Dさんは、先日メッセンジャーでの会話に出てきたバンドデシネの流れから、「ホドロフスキーのデューン」メイキングDVDを持ってきてくれた。
いきなりの鑑賞会。
もちろんそのまま場はぐだぐだになり、一緒に持ってきた「マッドマックス」4枚組は「それは面白くない!」と長老に却下されたため、全部大内家に貸してくれた。
「それより『深キョンのドロンジョ様』を観るのだ!」との一喝で、始まる実写の「ヤッターマン」。
どうしてみんな、ボヤッキーが生瀬勝久とかトンズラーがケンドーコバヤシとか、観ただけでわかるのか。
「あんな鼻とヘルメットつけてたら、わからないよ」とぼやくと、Dさんに「相貌失認ですか」と笑われた。
(「たぶんそう」と答えたが、今、簡単なテストをやってみたら、スコアは74%だった。普通の人はだいたい80%ぐらいで、60%を切ったら相貌失認の恐れがあるらしい。なんだ、わりと大丈夫じゃないか!)
てんでに勝手な話をする中、映像は流れ続け、次は「シン・ゴジラ」。
その次はキャンディーズのラスト・コンサート。LDなんだそうだ。
その時、Aさんのケータイに娘さんからラインが入った。
会社の宴会で、おじさん向けのクイズが出ているらしい。
女性アイドルの若い頃の写真が4枚、誰が誰かわからない。
「見せてください」とケータイを受け取った大内くん、一瞥するや、
「早見優、中森明菜、小泉今日子、4枚目は、えーと、堀ちえみですね!」と言い放った。
なんでそんなのわかるの!?アイドルオタク?!
「昔の彼女らの顔にくわしいわけじゃないよ。今見るアイドルたちの、若い頃の写真はどれかなーって当てるのが上手いだけだよ」と言っていたが、なんにせよ、上のテストをやってみたらきっとすごくいい成績だろう。
警察に入ってパチンコ屋で指名手配犯を探したらよかったのに。
(しかし、やってもらったテストの結果は83%。平均こそ上回ったものの、瞠目するほどの成績じゃなかった。本人も、「キミとそれほど変わらない・・・」とガッカリしていた)
私がCさんと女子会的に話し込んでいる間、大内くんはAさんDさんEさんと政治的な討論会をしていたらしい。
Bさんはいつものように黙って面白そうに見ていた。
漏れ聞いたところでは、Aさんは何もかも警察が悪いと主張し、Dさんは何やらの実現を考え、Eさんはアナーキーなようだ。
自称無職のEさんにからまれた大内くん、
「いいじゃない、みんなそのうち君みたいになるんだから。勤めてるのも、今だけなんだから」と言うので、
「それって、実のところ無職をバカにしてない?無意識に傲慢じゃない?」と横から突っ込んだら、むしろ爽快なEさんは、
「だから、わしの方が先輩じゃん!あんたもわしのとこまで来るんじゃん!先輩に対してなんでそんなに上から目線なの〜!」と文句を言っていた。そこでしたか!
そんな大内くんの人柄について、Dさんと話し込む。
Dさん曰く、
「大内はね、『足るを知る』人なんですよ」。
うん、私もそこが魅力だと思うなぁ。
背伸びしない、自然体で。
やっぱり大内くんは、愛されてる!
ところで、料金の安い昼間のカラオケマラソンをまたやりませんか、と提案したら、固定メンツのAさんEさんはOKだが、にぎやかなのが好きなAさんは、3人ではカラオケにならんと主張する。
平日休みもけっこうあるというBさんと主婦のCさん夫婦をその場で勧誘すると、夫NG妻OK。
では、とさっそくカラオケ屋さんに電話を入れて4人で予約し、来週半ばにカラオケ成立〜。
「そんなに毎週毎週カラオケがしたいんか!」と酔っ払ったEさんに絡まれたが、いざ現場では、誰よりもよく飲みよく歌う(がなる?)彼であるので、気にすまい。
企画する人がいないとわざわざやらないってだけで、みんな、カラオケが大好きなんだよ。
夫婦者のBさんCさんがそろそろ、と言うと、Dさんも別の集まりがあるからと帰ろうとする。
「終わったらまたおいでよ〜」と大内くんと2人がかりで誘ったが、「いやぁ〜」と逃げて行ってしまい、どうなるのか。
あんまり楽しいので、このへんで我々も帰るのはあきらめてお泊まりの構え。
Dさんが戻って来るのを待とう。
運転手の予定だった私も腰を据えてワインをいただき始める。
順々にお風呂をいただいて飲み続け、22時頃にはいつものようにEさんがつぶれた。
おなかを丸出しにして床暖房の上にバッタリのびているので、「おなかに何か描かれちゃうよ」と声をかけたら、Aさんが嬉しそうに太書きの油性マジックを持ってきた。
仕方ないから、顔描いてあげた。なるべく可愛く。でも、ヒゲもつけちゃう(笑)
そして写真を撮って、まだ前の飲み会が続いてるらしいDさんに送ってみる。
「早くきて〜!」とキャプションつけて。
Aさんは、
「終わったらこーい!家とどっちが近いか、よく考えろ!」って叫んでる。
勧誘むなしく、1時ちょっと前にDさんから「帰ります〜」と返信アリ。
「軟弱者〜!」と地団太踏む我々。
しかしなぁ、家庭のある人なので、無理に外泊に誘ったりしちゃあいけないよなぁ。
「家のあるやつぁ 家へ 帰〜れぇ〜」と思わず「明日のジョー」の替え歌を。
ところで私はおなかが空いたよ。
タンドリーチキンやローストポークはとっくになくなっている。
「酔っ払うと、ラーメン食べたいよね〜」と家主に訴えると、料理をしない独り者として、山のようにカップめんのストックがある、と戸棚を見せてくれた。
「食べたい!」
「オマエは、糖質制限だろう!炭水化物のカタマリだぞ!」と警告されても、もう止まらない。
大内くんがすでに倒れて寝ているのを幸い、「麺造り」味噌ラーメンをひとつもらうことにした。
お湯入れてAさんの分も一緒に作ったところ、熱湯4分の生麺タイプには慣れてなかったため、スープは後入れなのに先に入れてしまった。
それだと、麺が固く仕上がってしまうらしい。
いつもはきちんと指示書を読んでから取り組むのに、さすがに酔っていたか。
Aさんもたまにその手の失敗をするらしく、「そういう時は、こうする」と30秒レンジにかけていた。
リカバリー策を講じているのはさすがだ。
おいしくラーメンいただいて(8ヶ月ぶりのインスタント麺は、胃の腑に沁みた〜)、用意の寝袋で寝ようとしたのが午前3時。
すでに累々と転がっているEさん(ソファに毛布)と大内くん(寝袋)を見たAさんは、
「リビングは楽しそうだなぁ。オレもこっちで寝ようかなぁ」と自分の寝袋をひっぱり出してきた。
別室にちゃんと自分のベッドあるのに。
じゃあ、そのベッド使っていいですか?と聞こうかと思ったが、よそのおじさんのベッドつーのもなんだし、大内くんと同じ床で寝たかったので、横にぴったりくっついてみた。
5分もしないうちに「枕が欲しいなぁ」と切実に思い、90度向きを変えて、寝袋に入った大内くんの足を枕にさせてもらう。
では、おやすみなさい。
18年12月9日
ただし、床暖房というのは、暑い!
2時間しないうちに寝袋の中で汗びっしょりになって目が覚め、おまけに寝相の悪い大内くんはとっくに私の枕をやめて「く」の字に横向いてる。
しょうがないから部屋の隅っこの床暖房がない部分を探して、自分の上着を丸めて枕にして横たわる。
次に目を覚ましたのは6時。
それきり、眠れなくなった。
持参のiPadで本を読んで、皆が起きるのを待つ。
8時頃に大内くんがもぞもぞし始めたので、揺り起こして、2人でぼーっとしてた。
9時前には全員起きて、
「何か朝食を作りましょうか」と言う大内くんに、AさんEさんは首を横に振る。
飲みすぎて食欲がないらしい。
「じゃあ、皆で掃除でもしましょうか」とあくまで前向きな大内くん。
「ルンバがいるから、掃除はしなくていい。ソファを動かすのだけ、手伝ってくれ」と言われ、男性軍は宴会仕様だったリビングを通常モードに戻していた。
「誰か、ラーメンを食ったのか?」と空のカップ容器を片づけながら家主が言う。
あれ、私、自分の分は洗って捨てたけど、さらに夜中にEさんが起きて食べた?
よくよく聞いてみたら、Aさんは自分が食べたことをすっかり忘れていた!
「差し向かいで、一緒に食べたじゃないですか。私が間違えてスープを先に入れてしまったんで、レンジしてくれたじゃないですか!」と言っても、記憶がないようだった。
眠そうにソファに座り込んでいるEさんに、
「おうちに帰ってお母さんの前で服を脱ぐより先に、お風呂でおなかを洗ってね。お母さんびっくりしちゃうから(笑)」と声をかけると、「え?おなか?」と服をまくって、見てウルトラ驚いていた。
へへへ、ごめんね〜
しかし、誰も彼も覚えてないのかぁ。酔っ払いたちは、壮絶に記憶がザルになってるなぁ。
解散となり、マンション下まで見送りに来てくれたAさん、車で駅まで送ろうかと申し出たが道がめんどくさくて歩いた方が早い、と断って歩き出したEさんに手を振って、教えてもらった我が家方面への抜け道を走り出す。
「楽しい宴会だったねぇ。床暖房の上ですごくよく寝られたから、ここしばらくの疲れがすっかりとれたよ!」と元気いっぱいの大内くんの運転。
あなたは12時ぐらいからもう寝てたもんね。
Aさん推奨の抜け道はすごく優秀で、来た時よりもさらに早く家の近所まで帰り着いてしまった。
物理的にはこんなに近くに住んでるのか、Aさんは。
図書館に寄ったりケンタッキーでお昼ごはんをイートインしたり平日のための買い物をしたりして、家に帰ったのは14時頃。
昼寝して、料理の作り置きして、夕食の支度して、ああ、テレビの録画がどんどん溜まって行く!
「お風呂を洗って帰るのを忘れた!Aさんに謝っておかなくちゃ」と言われて、お礼とお詫びのメールを打ったら、気にしなくていい旨ほがらかに返ってきた。
同時に、今回欠席だったおじさんメンツを1人、来週の「無職による平日カラオケ」に誘ってくれたようで、CCが。
こないだ私が誘った時は「年内は忙しいので、もう無理です」って返事が来たのに、長老たるAさんの誘いにはOKが出てた。
人望と実力の差に打ちひしがれつつ、カラオケ屋に人員増加の連絡をして、楽しい楽しいお泊まり忘年会の週末は暮れて行く・・・
あと3週間で年末だ。
今週も元気に頑張ろう。
なぜかわからないけど、あれほど激しかった血尿は宴会の途中からぴたりと止まったんだ。
もしかしてストレスが原因で、遊んだら晴れたのかしらん?
いや、やっぱりワーファリンの量が多すぎて、謎の腹痛もそのせいかも。
少なくとも、痛かったわき腹には直径5センチほどの内出血の痕ができている。
中で血が固まってるっぽい、しこりのある血腫だ。
緊急に行った病院の医師のアドバイスに従ってワーファリンを0.25mg減らしたから、血尿も治まったんだろう。
診てもらっておいてよかった〜!
18年12月10日
さすがにくたびれたし、先週は病院騒ぎも起こしてしまったので、のんびり寝て過ごす。
先週買った本やら昨日図書館で借りた本やら、資源は潤沢だ。
昔は、気になる本はまず図書館で借り、5回ぐらい借りている間に文庫本が出るから、安くなってから古本屋で買っていた。
よく大内くんから、
「この本、何度も枕元で見るけど、また借りたの?そんなに借りるんだったら買えばいいのに」と言われたが、新刊書のうちは場所も取るし、なにより高価すぎる。
私の読書はミーハーなので、宮部みゆき、東野圭吾、林真理子など、世間の人も新作を読みたくて躍起になっている作家ばかり。
したがって、貸出解禁をみんな目の色変えて待っている。
図書館も本屋に並んでから買うそうで、しかもICカードを貼って登録したりビニールカバーをかけたりと、手間がかかる。
そのため、実際の貸出開始は発売日から10日ほど後になることが多い。
告知されたその日の夜中、日付が変わるのをPCの前で待ちうけて、「予約」のボタンが出た瞬間にキーボードを叩く。
次の画面で、「25人待ち」になっていたりする。
私は、24人にタッチの差で負けたのだ。
1人が1週間かかって読むとして、24週間、半年待ち。
人気の本なら図書館ひとつにつき3冊ぐらい入るが、それでも2カ月待ち。
いつからだろう、その激しい争奪レースに、参加しなくなった。
たぶん自炊を始めて、手元に膨大な本やマンガを置いておけるようになり、常に「電子積読」が存在するため、新刊書を無理に読もうとはしなくなったのだと思う。
「手いっぱい」というやつだ。
それでも、時々発作が起こる。
ブックレビューで新刊が出たのを知り、本屋で平積みになっているのを見ると、買いたくてむずむずする。
夜中にアマゾン見ていて、「ぽちっと」してしまうことも。
しかし、もっとも忌避すべきはリアル本屋で、大量の「生本」が並んでるのを見て頭に血が昇り、気がつくと高価な新刊書を複数買っている。
「ああ、せめてブックオフで買えば、今頃なら2割引きぐらいにはなっているのに」と肩を落とすことも。
こないだも発作を起こし、文庫本が出るまでずっとガマンしておくつもりだった宮部みゆきと東野圭吾の新しいのを買ってしまった。
「杉村三郎シリーズ」と「ガリレオ」シリーズ最新作なんだもん。
問題は、買ってから1週間以上読まないぐらいならもっと待ってブックオフに行くべきだった、という点。
アマゾンですら今なら200円ぐらいは安い。
だからリアル本屋は怖いんだ。
たった2冊で3500円超え。
ブックオフなら30冊も買えるんだぞう。
図書館の方がもっともっといい。タダで一気に10冊とか20冊とか貸してくれる。豪儀だ。
「新しくない」という1点にさえ目をつぶれば、自分では決して買わないような本まで地平を広げて好きなだけ読ませてもらえる。
いくら興味があって勉強したいからって、「セクシャル・マイノリティQ&A」とか「ギャルと『僕ら』の20年史」とか「余命半年」といった本を全部買っていたら棚も財布ももたない。
いや、棚はもう度外視でいいんだね、うちの場合は。
「図書館の棚の、名札がある作家だけでも読みつくせない」と言ったら、大内くんが深々と同意してくれた。
わかってもらえてとても嬉しかった。
「桜庭一樹」「伊坂幸太郎」「清水一行」とか、なんてたくさん書いてるんだろう。
この人たちを読み始めたら、また1年2年は退屈しないんじゃないかと思える。
まして独立した名札を持たない、図書館的にはマイナーな作家さんだって、充分に売れっ子なのだ。
「湊かなえ」だって「坂木司」だって、最近まで「ミ」や「サ」の名札でひとくくりにされていた。
ブックオフではまだ独立させてもらえてない店舗も多いぐらい。
そう言えば、ブックオフではよく、違う作者の棚にまぎれこんでる本が発見される。
せっかく「田口ランディ」をまとめて読もうと思って探してるのに、なんで「田辺聖子」の棚に入ってるのか。
これでは永遠にめぐり会えない。
もっと深刻なのは、100円(正確には108円)のコーナーに「まだそこまで落ちぶれていない文庫本」が紛れ込んでる場合。
「おおっ、こんなものが100円落ちに!」って喜んでレジに持って行って、正札通りに計算されて気づかないで多く払ってしまう可能性があるじゃないか!
そんな「場所が間違ってる本」を見つけたら、こっそり直しておく。
棚がギチギチで入れる隙間がない時は、2段ぐらい下の余裕のある棚から順次ずらしてでも、スペースを作って戻しておく。
「今日は5冊も戻した」と大内くんに言ったら、
「僕も見つけたら戻している。しかし、スペースがない時には無理はしない」のだそうだ。
多少方針は違っていても、話のわかる、趣味の合う人と結婚していてよかった。
もっとも、あれほどの「ほこりっぽい古本好き」には到底なれない、とつくづく思うが。
18年12月12日
先日の飲み会で、また8時間カラオケマラソンをすることに決まってしまった。
私が言い出したことのような気もするし、みんなやりたいのに言わない空気を具体化してしまう強引な実行力が災いしている気もする。
いずれにせよ、5人のメンツが集まって、8時間歌いまくった。
今回はアニソン縛りは設けなかったので、私はおもに中島みゆきを歌っていた。
飲み放題でビールを2杯ずつ注文しながらすみやかに酔っ払うタイプのGくんも、みゆきフリーク。
競い合うように「エレーン」「地上の星」「宙船(そらふね)」「恩知らず」「荒野より」「歌姫」などを歌いまくる。
「かもめはかもめ」を歌ったあとで、渡辺真知子の「かもめが翔んだ日」を歌ったら、「かもめの歌はたくさんあるなぁ!」と一杯機嫌の長老が「かもめの水兵さん」を入れて、歌っていたよ。
年代検索ができるリモコンで「古い歌」を順次入れていた長老は、「スーダラ節」や「ズンドコ節」に飽きるとやはりアニソンに戻ってきて、朗々たるバリトンのMさんと一緒に戦隊ものとか歌ってた。
「古いフォークソング縛りをやろう」って言ってたから、昔取った杵柄の「血まみれの小さな鳩」とか「さなえちゃん」とか掘り出して覚えてきたのに、あんまり喜ばれなかったぞ。
もちろんアルフィーもたくさん歌った。
「ウルトラマンオーブは高見沢さんだぞ」って言われても、知らないので、「AUBE〜オーブ 新しい夜明け」はどうでしょう。
「Nouvelle Vague」も、アニメのベルばらの画面をかぶせたものがネットに出回ってたぐらい、おフランス革命だよん。
「STARSHIP〜光を求めて」は映画「SF新世紀レンズマン」のテーマソングなので、アニメオタクのMさんに、
「当時、観たんですか?」とびっくりされたけど、いえいえ、あとからアルフィーで知っただけです。
高見沢さんのカウンターテナーが最高の、名曲です。
「最後の全共闘世代で、オタク第一世代」なのが自慢の長老のために、アルフィーの「学生運動三部作」と勝手に思っている「シュプレヒコールに耳を塞いで」「幻夜祭」「LIBERTY
BELL」歌おうと思ったのに、ひとつも入ってないじゃないの(泣)
「歌ガイド」がないと歌えないからってGくんが主張するからDAMにしたけど、曲数が少なくていやなのよ。
女性のS夫人はおだやかにキャンディーズなどを。
3人の本人映像に、「こないだ、うちでこれのレーザーディスクを観たぞ」と長老が自慢すれば、Mさんが「誰々さんは、VHDをまだ持ってるらしいですよ」とオタクな会話をしていた。
Mさんは、画質は良いとされるが記録時間が短かったベータにこだわるあまり、オートカセットチェンジャーを購入したツワモノだ。
私も勤め先の関係でベータ派だったが、そこまでのこだわりはなかったなぁ。
その「いつも静かに笑っている」Mさん、何やら小さな紙切れを取り出すと、「快傑ハリマオ」を1番はそのまま歌い、2番からは、「真っ赤なお鼻の〜トナカイさ〜ん〜は〜、いつ〜もみん〜なの〜わ〜ら〜い〜者〜」って朗々とやり出した。
「でもこの年のクリスマスの日〜、サンタのおじさんが言い〜ました〜」
爆笑。歌詞書いてきたんかい!
この宴会芸は「真っ赤な」で始まる歌なら何にでも適用可らしい。
長老がいろんな「真っ赤」ソングを入れて大喜びしていた。
家族のごはんを作らなくっちゃ、と言って5時頃にS夫人が帰ったあと、さらに2時間、歌い続けた我々。
完全に酔っ払ったGくんは「もっとカラオケするんじゃ〜!」と叫んでおり、おだやかに微笑む正気のMさんが「いやいや、もう」とあとずさりして逃げようとするので「確保〜!」と私がけしかけたら、とっつかまえてくれたのはいいが、カラオケ屋の向かいにある絨毯屋さんの店先で店じまいをしていたおばさんの邪魔をしたので、「いいご機嫌ですねぇ」と笑われてしまったのだった。
3人になり、「とにかく作戦会議をしよう」との長老の提案で、一番安くコーヒーが飲めるマクドナルドの2階席へ。
(「マクドだ。マックじゃない。マックは、コンピュータ!」と主張する、関西原産でプログラマの長老)
私は受け取り番号の記されたレシートをなくして大騒ぎし、カウンタのおねーさんに「大丈夫ですよ、受け取りなしでもいいですよ」と笑われ、Gくんは静かに書き物をする一人客ばっかりの2階でべろんべろんになってるので、酔ってもわりと周りを気にするゆとりのある長老が耐え兼ね、「井の頭公園に行って暴れよう!」と号令をかけた。
コンビニで燃料としてそれぞれビール、ワンカップ、ジンジャーティーを仕入れ(誰が何を買ったかは、ご想像にまかせよう)、暗くて寒い井の頭公園の池のほとりを歩いた。
「池のかいぼりをしたら、ケータイが百万個出てきたんだぞ。橋の上やボートで風景を撮っていて、落とすヤツがたくさんいるんだ」とうんちくを披露していて、いくら何でも誇張だろう、と今調べてみたところ、自転車は何百台も沈んでいたらしいが、ケータイは「複数個」とのこと。
先日の宴会でも私にのしかかってセクハラしていたGくんは、大声で、
「大内夫人と××(とても書けない)したら、いかんのか!大内くんが、怒るのか!」と言いながら千鳥足で歩いていて、うーん、彼は私じゃなくて、大内くんが好きなんだと思うなぁ。
大内くんって、時々すごく愛される。
奥さんにちょっかい出して、彼をやきもきさせたいんだよ。
ベンチに座って休んで、「楽しかったですねぇ。また来年、やりましょう。よろしくお願いします」と長老に言うと、
「なんで来年なんだ!年内に、またやろう!」。
ここ3ヶ月の間に何十時間カラオケしたかわからないのでもういいかげん飽きたかと思っていたが、まだやれるのか。
「じゃあ、日頃お休みが合わなくて来られないSくんが来週休めるそうだから、○日にしましょう。誘ってみますよ」と言うと、長老は手帳を出して、
「んー、その日はあいてるなぁ。よし、予定を入れとこう」と何やら書き込み、Gくんもケータイで予定を見たのか、
「わしも大丈夫〜」と言っている。
カラオケ成立だ。
話が決まったのでまた立ち上がって3分ほど歩いたら、Gくんが酔眼朦朧と言う。
「で、わしは、カバンを持ってないんだが」
え?そもそも、持ってたの?
よく聞いたら、財布もケータイも持ってるらしいので、元々カバンなんか持ってなかったんじゃないかと言われていったんは納得しかけた本人が、
「じゃあ、わしのiPadはどうなった?」と自問する。
そう言えば、カラオケ屋ではiPadをアプリでリモコンに仕立てて曲を入れてたねぇ!
さっき座ってたベンチに急いで戻ろうとしたが、酔っ払い3人組の悲しさ、どこをどう歩いてきたのかとんと記憶がない。
「この木の下をくぐったねぇ」
「この倒れた柵をまたいだ覚えがある。大内夫人が蹴倒したんだ」(嘘だ!)
このベンチ?そのベンチ?と見て歩いたが、荷物はない。
マックかカラオケ屋まで戻ろうか、と言い始めたので、とりあえず電話をしてみた。
「7時まで18番の部屋で歌っていた大内ですが、忘れ物はありませんでしたか?」
「7時半頃、二階席の真ん中あたりのテーブル席でコーヒーを飲んでいた3人連れですが、忘れ物をしたかも、と思って」とそれぞれ店員さんに聞いてみたが、ないらしい。
「iPhoneにiPadを探す機能があるだろう。それで探せないか」と長老に言われて、ケータイをひねくりまわすGくん、あまりに酔っ払っていて、手元もおぼつかない。
「貸してごらん」と取り上げてみたが、私にもよくわからない。
そしたら、小さな懐中電灯を手に暗がりをのぞきこんでいた長老が、叫ぶ。
「あった!」
あまりに暗くてよく見えなかったが物陰にベンチがあり、その下に、Gくんのカバンは置き忘れられていた。
そもそも、そんなとこにベンチがあって坐ってたなんて、誰も覚えてなかった。
こうして荷物も見つかったことだし、と池をもう半周して、帰ることに。
「今から大内家に行って泊まる!」と言い張るGくんは「はいはいはい」と華麗にかわして長老にお願いし、バスに乗って帰ってきた。
大内くんが接待を終えてやっと帰ってきた時、私は安全に暖かく、家にいた。
でも、なんだかブルーになってた。
「若い頃を、思い出しちゃったの。酔っ払って、公園をぐるぐる歩いたの。バカ話して、笑いが止まらなかったの」と言っていたら、ますます悲しくなる。
青春だいなぁ、って気分なんだよ・・・
大内くん自身、人に「持って行かれやすい」ので、こういう気分をとてもよくわかってくれる。
「楽しかったんだね。落ち着けば、大丈夫だよ」となぐさめてもらって少し気分が良くなった。
Gくんに、
「毎日ちゅーとかしないだろう?する?してるんか〜!」とバカにされて、亡妻をこよなく愛する長老でさえ、
「おじさんは口が臭くて、リステリンしてからでないとキスはできないから、毎日はめんどうくさいぞ」って相手にしてくれなかったが、仲良しなダンナさんは本当にありがたい。
こんな日は、ぎゅーしてちゅーして、ぐーと寝る!
18年12月13日
今週末は人に会う予定が2つも入っているので、その前に美容院に行かなくちゃ。
もちろん2日続けて街に出るなんて超絶珍しく、できれば回避したかった。
昨日のカラオケ前に予約を嵌め込めないかとトライはしてみたものの、やはり年末で、急な変更は無理だった。
泣く泣く、今日もバスに乗る。
前に切ってから2カ月足らずだけど、最近、
「髪が伸びて可愛くなった。ぜひキープしてほしい」と大内くんが喜んでいることだし、少しお金と手をかけておこう。
名香智子のダンスマンガ「パートナー」で、主人公のゴージャスなお母さんが昔の恋人に、
「きみは綺麗になった。やはり女はカネをかけないとだめだな」と言われて、
「それと愛情です」ときっぱり言い放っていたのを思い出す。
大内くんは普通のサラリーマンだから金の部分はそこそこでしかないが、愛情はたっぷりかけてもらってる。
元々の素材の天井がそう高くはないこちらとしても、惜しみなく努力をしなくては。
もう5回ぐらい切ってもらってる息子と同い年のおにーさんは、なかなかカットが上手い。
いつものようにひとしきりマンガの話をしたが、最近友達とスマブラばっかりやってて、マンガを読むヒマがないんだそうだ。
来年早々に「約束のネバーランド」の新刊が出るから、次に来る時までには読んでおいてください、ネタバレできないと苦しいから、とお願いしておく。
最近の若い人は雑誌や出版社のくくりでマンガを読まないんじゃないかと思ってヒアリングしたら、その傾向はあるが、「ネバーランド」はジャンプっぽくない、ぐらいのことは思うんだそうだ。
私「ディストピア的なところが?」
美容師さん「話が暗いですからね」
私「でも、『努力・友情・勝利』のジャンプ路線では?」
美「うーん、『ハイキュー!』みたいなわけにはいきませんからねー」
「ネバーランド」はアニメになりますよね、と言われてアニメの話になった流れで、8時間アニソンカラオケマラソンの話を。
「え〜、8時間はすごいですね〜」と驚かれつつ、もちろん髪型の話もする。
私「主人が気に入ってるんで、もうちょっと伸ばしてみたいんですよね。でも、還暦直前のおかっぱ頭はキモいですかね?」
美「いやー、スタイル次第では、別におかしくありませんよ。グラデーション・ボブみたいにすれば」
私「人が、どんな好みでどんなスタイルにしてもらいたいかって、本当に千差万別ですよね。頭の中のイメージが見えるわけじゃないですしね」
美「そうですね。だからこそ、何度も通っていただく意味があるんですよ。お話してる間に、持ってるイメージが伝わってきますからね」
私「いい歳なのにマンガばっかり読んでて、8時間アニソンを歌う女の、自己イメージとか?」
美「そうそう(笑)」
私「若い頃に文学少女だった人とパンクだった人では、好みがまるっきり違うんでしょうね」
美「ロックとかパンクやってた方は、やっぱりパーマ好きだったりしますね」
私「でも、パンクに縁がなかったからこそ、一生に一度は髪の毛真っピンクにしてみたかったりするんですけどね(笑)いつか、完全にまっ白になったら、赤や青のメッシュ入れたいです!」
美「あー、カッコいいですね〜。白くなるといろいろできますよね〜」
しかし、実は今回はあまり満足の行くカットにならなかった。
前髪を、もっと短く薄く切ってもらいたかった。
3回リテイクを出して、まだ不満だとは言いそびれ、「はい、いいです」と言ってしまった。
レジでお金を払う時までずっと、
「今、もうちょっと直してくれって言ったら、困りますか?」って言いたかった。でも、言えなかった。
自分が気が弱いだけなのに、わかってくれないなんて、って相手を恨んでしまう。
「私は前髪を『あり得ないぐらい』薄くしてもらいたいんだよぅ。毎回そうお願いしてるんだから、そろそろ覚えてよぅ。プロなんだからさぁ」と恨めしく思ってしまう。
まあいい、もしかしたら美容師さんのブローで前髪がまっすぐ下りすぎているだけかもしれない。
1回髪を洗って自分でいいかげんなブローをしたら、却って好みの感じに仕上がってるかもしれない。
まったく、美容院ってのは難しいもんだ。
「坐るといつもおんなじ髪型に仕上がる」ので楽だと語る、床屋派の大内くんがうらやましい。
18年12月14日
一昨日の夜中、Gくんあての「無事に帰れましたか?」のメッセージに対して数時間後に来た返事によると、なぜか最終電車が終わった時点で立川にいたらしい
家は埼玉なのに。
何をどう乗り過ごしたのだろうか。
高尾まで行ってしまって立川までやっと戻ったところで電車がなくなったのか、と思っていたら、今日になって、逆方向の東京まで1回行ったあと、立川に戻ったのだと判明。
高尾までは行ってない。だからって何が良かったというものでもないが。
私は当日その場でカラオケの話をまとめ、メンバー候補者Sくんの留守電にメッセージを入れて、お店も押さえた。
長老が手帳を出して予定を確認したのも見たし、Gくんにもケータイなりなんなりに予定を書き込め、と勧告した。
それぐらい素面だった。
なのにどうして、2人は、完全に忘れているのか!
「来週よろしく」とのメッセージに、「ん?来週、なんかあるのか?」って返してくるのはなぜなのか。
その時すでにこちらはもう1人のメンバーSくんを確保し、大内くんまでも勧誘しているのに。
長老に至っては、
「カラオケエネルギーを再充填するので、再来週の方がありがたい。風邪気味だし」って、来週で大丈夫って言ってたじゃないか、
「わしは厚着をしてきたから平気」って、からっ風がぴゅうぴゅう吹く井の頭公園でもっと飲もうって言い張ったのはあなたじゃないか、なんで風邪なんかひくんだ。
私は昨日、コートを着せ掛ける美容師さんから真剣に、
「こんな薄い上着で、寒くないんですか?!」って心配されて、
「この格好で井の頭公園をさまよってましたが、平気です」って答えたんだぞ。
まあ、2人とも予定は予定でもう決まってます、お店も予約しました、って言ったら、「へーい」っておとなしくなってくれたけど、これでまた、「大内夫人が強引に決めた」って話になるんだよ・・・
国松くんの世話を焼いては「うるせえ女」扱いされていたおチャラが気の毒だ、ってこの歳になってしみじみわかる・・・
ところで、大内くんは今夜、職場の忘年会らしい。
「いつも一次会で帰ってしまって申し訳ないから、今日ぐらいは若い人につきあってゆっくりしてきたいんだけど、いい?」と聞かれた。
「もちろんいいよ!二次会で飲んどいで」と言うと、なんと最近の若い人たちの二次会は「卓球」なのだそうだ。
普通の流行り?局所的?
「負けるな!勝ってこい!」と活を入れて送り出したが、勝負の行方はどうだろうか。
最後に卓球したのは15年ぐらい前、小学生の息子が相手だったんじゃないかなぁ。
しかもきわどい勝負だった気がする。
大内くん、たぶん動体視力はあんまり良くないタイプなんだよねー。
もしかしたら日付が変わってから帰るかもしれない人には、勝者であってもらいたい!
「十二月の勝者」だ!(って、「二月の勝者」っていうマンガがあるんですよ。要するに中学受験の話なんですけどね。面白いですよ)
18年12月15日
FBを見ていたら、お世話になった人が駅前のホテルでのミニライブに出演するらしい。
夜に忘年会が入っているけど、むしろどうせ出かけるんだから都合がいいとも言える。
電車でひと駅となりに移動すれば忘年会の店で、時間的には出演シーンを聴いてからで充分間に合う。
ひと粒で二度おいしいスケジュール管理は、得意とするところ。
連絡したらチケットを取っておいてくれると言うので、安心して、午前中は買い物に行く。
大内くんはさすがにくたびれたらしく、早起きを拒んだものだから、いつもの八百屋に行くのが昼頃になってしまった。
もう三浦大根が出ている。
1本500円はすさまじいが、おでんはこれでなくては始まらない。
今日は買わないけど、お正月の仕込みをする時に絶対買う!しかも2本!と張り切る大内くん。
白菜が丸ごとひとつで198円。安い。
鍋にも入れるしサラダにもなる。
この際、クリーム煮とかにも挑戦しようか。
ロメインレタスが安い。安売りのレタスがもうないようだから、これにしよう。
こないだ初めて買ってみて、大内くんはこのちょっと苦い葉っぱが気に入ったようだ。
2個100円。
大根1本100円は安いよなぁ、キャベツも何にでも使えるのに78円。
チンゲン菜4株が100円って安すぎるだろう。
ああっ、レタスはレジの前にザルで安売りしてた!ふた玉150円!
ロメインレタスを戻すか?えーい、両方買ってしまえ!
2人でひとつずつ、野菜でいっぱいになったカゴをレジに出して、入り切らなかったレタスのザルを、
「これもおねがいしま〜す!」って台に置いて、週に1度の野菜の買い出しではいつも4、5千円かかるので、千円札を5枚すぐに出せるようにして待っていたら、
「1924円です」・・・
「えっ、間違ってませんか?!」と思わず叫ぶと、おねーさんはレジを見直して、ちょっと笑った。
「合ってる。今日は、葉物が多いから、かさばるけど安いのよ。いつもけっこう高い野菜買うじゃない」
それって、ナスとかブロッコリーとかトマトのことかしらん。確かにトマトは高い。
お金払って、袋詰めしながら、2人してなんだかにまにまと笑ってしまった。
安いのも嬉しいし、おねーさん我々が毎週買い物するの覚えててくれたんだぁ、って。
20年以上通ってて、おねーさんとは10年ぐらい顔を突き合わせてるんだから、当たり前か。
あとスーパーを2軒回って1週間分の買い出しをすませ、さかさか帰って支度して、よし、ライブに行こう。
駅前のホテルの地下の受付に、チケットちゃんと取り置いてくれていた。
本人も客席に坐ってたので、大内くんとご挨拶。
将来的には私の雇い主になってくれるかもしれない方である、丁寧にしなければ。
ライブが始まると、若い男性のシンガーソングライターがギターを弾いて歌い出した。
日頃は路上でやっているので、こんな立派な屋根のある会場でやれて嬉しいと語る彼は、ギターがものすごく上手い。
続いて出てきたキーボード弾き語りの女性も、よく伸びる声が魅力的だ。
これでもメジャーデビューには至らずストリートやミニライブでの活動なのか、と思うと、売れない芸人の道をコツコツ歩んでいる息子のことを思い出さずにはいられない。
世の中には好きな道しか歩けない、何かの神様にとっつかまっちゃった人たちがいるのだろう。
お目当てのバンドが始まった。
これはおそらく、他に仕事を持つアマチュアの「おやじバンド」なのだろう。
60〜70年のロックをカバー、とのことで、「Jumpin' Jack Flash」「Twenty Century Boys」「Smoke
on the Water」「フレンズ」(これだけ日本語)などをやってくれた。
わかる曲ばかりで、よかった!
メンバーオリジナルだと言う「Love & Peace」もいい曲だった。
戻ってきたところでよくよくお礼を言って別れ、次の会場へ向かう我々。
息子の保育園時代からのママ友達との忘年会だ。
大内くんの仕切りで今回は6人が集まった。
私より、彼のママ友なんだよね。
今なら「超絶イクメン」と呼ばれたであろうなぁ。
1人だけ女の子の親であるなおみちゃんママの話を聞くと、女の子は早くてしっかりしてるのでびっくりする。
保育園時代からそうだったけどね。
男の子たちはなんだかぱっとしないんだ。
もちろん筆頭はバイト生活のうちの息子。
他の男子は、少なくとも就職してる。海外出張だってしちゃう。スゴイ。
小脇に抱えたり自転車に積んだりして移動させていたコドモたちが、もう25歳。
他の子たちの消息を聞くと、いち早く結婚して赤ちゃんを産んでいた女子がたちまち離婚していたのには驚いた。
やはり女の子は早い。
男子は、結婚どころじゃないのに。
コドモが家を出てヒマになってるのは我が家だけで、他のご家族はまだ一緒に暮らしているようだ。
サラリーマンのけいすけくんに夜中にごはんを作っていて、寝るのは2時過ぎになると悲鳴を上げてるお母さん、大変だなぁ。
ひと足先に勝手に子育て終了宣言させてもらえて、自分としては本当に楽。
息子が家にいた頃のことを思い出してみると、確かに家にいるうちはついつい面倒みちゃうんだが、出てってもらったあとは寂しさよりも解放感が先に立つ。
おにいちゃんズがいる関係ですでに「おばあちゃん」であるりょうたママみたいに孫の顔を見るのもいいが、まだ軽く10年かかりそうな話。
あまり「いいお母さん」ではなかった私でも「いいおばあちゃん」にはなれるだろうか。
糖質制限はしばし忘れて、コースの「高菜としらすのせいろ飯」まで食べた。デザートの「マンゴーソースの杏仁豆腐」も。
「ずっと続けてるの、すごいわね〜!確かに、夏よりやせたわね〜」と言われるのは嬉しいね。
先月の京都旅行あたりからけっこう制限がゆるくなっているせいか、2キロほどリバウンドしているのはナイショのヒミツである。
3時間近い宴会を終えて店を出て、10年前にはよくこのままカラオケになだれ込んだものだが、最近はめっきり勢いが弱まった。
少なくとも我々は力尽きてる。
「3次会で夜中の1時に行ったジョナサンで、やはり宴会帰りの別のママ友たちに遭遇した」なんてのもなつかしい思い出。
喜びも悲しみも幾歳月、すべての記憶は大内くんとともにある、と手をつないで帰りました。
明日も宴会。大丈夫かしらん。
18年12月16日
年に2回、市の催しで「柳家喬太郎さんの勉強会」があり、一生懸命チケット取って聴きに行っている。
友人男女を誘って大内くんが作った団体名が「喬友会」。
この人は本当にネーミングが上手。
他のことにはそれほどセンスを感じないんだが、なぜ名前つけだけがこんなに上手いのか。
で、市から来るチラシをもとに「喬友会」メンバーの賛同を得て、「春風亭昇太」を聴くという「課外活動」を行うことになった。
いつものホールとは違う、公会堂での独演会だ。
バスが混んでて遅れるかも、とメッセージを送ってきた友人女性も無事到着し、4人で並びの席に着く。
昨日、名古屋の友人とラインしていた時に「明日、昇太に行くんだ」と言ったら、「昇太さんは最近ちょっと元気がないかも」とのコメントをもらい、歳だからなーとか思ってたら、実は今日の高座は素晴らしい出来だった!
彼にしては珍しく古典を3つ、「権助魚」「火焔太鼓」「時そば」。
特に「時そば」はかなり改変されていて、初めて聞くバージョンだった。
最初はGパンで出てきてトークショー。
前座さんが短い噺をやってる間に着替えたんだろうね、お着物で登場して一席やったと思ったら、高座で立ち上がってどんどん脱ぎ始めた。
下に着ていたのは長襦袢っつーのか、あれはあれで着物なのかわからないままに、たたんであった新しい着物をするすると着る。帯もくるくると巻く。
当たり前だが、うまいもんだ。
袴を穿いて紐を結び、脱いだ着物は丸めて舞台袖に「ぽーん」と投げた。
前にも見たことのある「着替えショー」で、着物を投げるのは賛否両論だったが、良しとなったのか?
なんだか可愛くて、私は好きだが。
中入りをはさんで、また別の着物を着て現れて「時そば」を演って、おしまい。
お客さんもよくあったまり、たいそう盛り上がっていた。
満員の公会堂から出て行く人々の多くは、目の前のバス停に行列を作っている。
友人男性が予約を入れてくれてる駅前の蕎麦屋は5時半に開くので、まだ1時間以上あるねぇ。
我々は自転車だし、駅前で買い物がしたかったので、友人男女に「バス?歩き?」と聞きつつ、脳裏で「どっちにしろ、2人で行動するだろう」という未来予想図を展開させていたら、「じゃあ、適当で」と答えるなり、2人は別々の方向に動き始めた。
そうなるの?!
「この2人は、お似合いなんだが」とか35年間思っているこちらの思惑なんか、スカッと外してくれるよ。
さすがは筋金入りの独り者たちだな!
自転車置き場から自転車を掘り出して、寒風の中ペダルを漕ぎながら、
「男性はバス停方向に向かった気がするが、女性はどうしたかねぇ。歩くのが好きな人だから、歩きかねぇ。あの2人はなかなか予想通りに行かないねぇ。まあ、今さら、ないかぁ」と大声で話しながら自転車を走らせていたら、ひと気のない道をずんずんと彼女が歩いていた。
振り向いて、「なんだか声がすると思ったら」と苦笑していたところをみると、聞こえちゃったんだろうか・・・
冷や汗をぬぐって駅前まで行き、大内くんの強い希望で古本屋に寄ることに。
「今月はかなり買っちゃったし、今、読む本がたくさんありすぎるんだよね。先月は京都で散財しちゃって、しばらくリアル古本屋はおっかないよ」としり込みしてたら、
「もし欲しい本見つけたら、僕が払うから」と請け合ってくれたので、そんならGO!だ。
滅多に来ない店にはいろいろある。あうー、見たことのない坂口尚があった!
値段がついてなくて、どうやら店主がパソコンの台帳もしくはネット価格を調べて値付けするらしい。
「これ聞いてみて。500円以内だったら買う」と2冊組の文庫本を渡すと、大内くんが持ってってくれて、しばらくして振り返る。
「500円だって」
買いです!けっこういい勘してるなぁ、自分!
大内くんが自分の本と一緒にお会計してる間に出口近くの棚をぼんやり見てたら、持ってない鳥飼茜が。
奥付を見ると値段が書いてある。100円。
「これもお願いします」と追加し、さらに棚を見てたら、なにこの「アラサーちゃん」って。
絶対面白いやつ。全5巻、どれも100円。
「これもお願い」
ああ、どんどん増える!もう帰ろう!
大内くんが買った本はかなり大型だったため、デイパックはもうぱんぱん。
駅前の魚屋で明日のカキフライ用のカキを買った時には入れる隙間が全然なくて、結局レジ袋を手に提げて蕎麦屋に現われるという不細工なことになった。
いつも落語を聴いたあとにくる居酒屋兼蕎麦屋(「もともと蕎麦屋は居酒屋だよ」と友人男性)は、安くて美味しい。
ジャズレコードがかかり、エキゾチックな店員さんがカタコトの日本語で注文を聞きに来て、やがて店員さんたちが静かにギターの生演奏を始めるという、なんだかもう無国籍というかハイブリッドというか、ナチュラルファンキーな店なんである。
季節のつまみはどれも美味しかった。この季節はやっぱりね、ということでカキ率高し。
「蒸しガキのポン酢ソース」はちょうど4個で、ジューシィだった。
「カキの蒲焼」ってどんな味かと思ったら、甘辛くはあるけど予想を裏切ってふんわりした味で、外側は香ばしいのに身の中心はギリギリの半生。
「三種盛り」は「芋けんぴ」「キャベツの酢味噌がけ」「あさりのしぐれ煮」。
芋けんぴに七味かかってるって反則。でも美味しい。
キャベツの下からイカが出てきてびっくり。これは酢味噌に合うでしょう!
しぐれ煮も甘辛で生姜がぴりっと効いてる。
あと、サーモンの刺身は、2つに折れないぐらい分厚くてとろっとしてた。
里芋の煮物って、丸くて小っちゃいのが茶色く煮てあるやつを予想してたよ。
まさか巨大里芋の切り身で、灰色に煮えてて、みぞれ大根とかつお節がかかってるしょうゆ味で、それですごく美味しいってとこまでは想像が羽ばたかなかった!
私だけずっと「ブランデー仕込み梅酒のサワー」、みんなは日本酒をぬる燗でどんどん飲んで、落語の話とか仕事の話とか友達の消息とか、いろんなことをしゃべって楽しかった。
「喬太郎もいいけど、また昇太を聴きに来よう!」と「喬友会」の活動が少し広がった日だった。
週末、友人女性のところにカキが届くかもしれないんだって。
「もしたくさんで食べ切れなさそうだったら、手伝ってもらうかも」と言われて、もちろん諾である。
簡単なものというとカキフライだが、彼女のキッチンで揚げ物をするのも申し訳ないから、彼女とカキをそっくり我が家に運んでしまおうかとも思う。
「今日は美味しいカキを満喫して、実はさっき、駅ビルでカキを買ったんだ。これで週末にもカキかもなのか〜楽しみ〜」と浮かれちゃうなぁ。
8時頃になって「そろそろ」とお会計をしたら、8千円ちょっと。1人頭2千円強。
「え〜」「うそ〜」と叫んでしまったよ。安すぎるじゃん。
だからこの店は好きなんだ。
「カキよろしく〜」と手を振って、我々は自転車で帰った。
今週末はかなりハードスケジュールだったけど、これで一段落だ。
すべてうまく行った。流れるようで、かつ楽しかった。
あとは火曜のカラオケをこなして、降ってわくかもしれないラッキー・オイスターに期待しつつ、つつがなく年末がやって来る。
体力はとっくにレッドゲージだが、「息をつめて走りぬけよう」。
(しかし、タイトルだけはよく口走ってしまう「ほんまりう」のこれ、持ってないのは残念。入手不可能ではないが、高い・・・)
あっ、年賀状書かなくちゃ!
18年12月18日
また8時間カラオケマラソン。
大内くんと2人で1時間早めに行って喉をあっためていたので、我々にとっては9時間だったわけで。
持ち込み自由のお店で、タッパー4つにレタスをぎっしり敷き詰め、山盛りの鶏のから揚げとタンドリーチキンを入れて行った。
芽キャベツもゆでちゃおう。
クックパッドで見つけた「味噌マヨネ和え」で。
長老とGくんはいつものメンツで、目玉商品は10年ぶりぐらいに会うSくん。
変わらないなぁ。50過ぎなのに前髪ぱらりで、こめかみのあたりが少し白くなければ大学生みたいな外見だ。
昔から大好きな沢田研二を、見事に振り付きで歌ってくれた。
あと、西城秀樹も。
お返しに、彼の好きだった爆風スランプと谷山浩子を歌う。
もちろんアルフィーも歌う。
もう何回目のマラソンかわからず、アニソンのタネは尽きたと思っていたのに、新メンバーのSくんは「こんなのもあったか!」と言うようなものを歌ってくれる。
このふた月ぐらいの間に4回以上カラオケで顔合わせてる長老は、
「歌った歌ばかりになってしまった。せめてひと月はあけてくれ。」と愚痴る。
「1ヶ月ばかりじゃ、新しい歌を仕入れるのも難しいでしょう」と言うと、
「そのぐらいあけば、前に何を歌ったか忘れてしまうから大丈夫!」なのだそうだ。
いつものようにあっという間に時間が過ぎて、先日は寒い公園をさまよって風邪をひいた人も出たので、今回は大内くんが、
「うちで飲み直しましょう!」と元気よく提案し、「おう!」と呼応する酔っ払いたちと、家まで歩いた。
大内くんと長老はどんどん先に行っちゃって、残る2人とあとを追うも、どの道を行ったかわからなくなっちゃった。
ケータイで連絡を取ろうとしても応答ナシ。
そりゃあ自分ちだから道はわかってるが、大内くんがいないと心細いじゃないか。
幸い、少し行くと公園の公衆トイレの横に佇んでいる2人を発見できた。
私は脚が痛くて、ふらふらと裏通りを歩く途中、大通りに出てバスかタクシーで帰ろうと何度も思ったけど、みんなでわいわいと夜道を行くのがまるで学生時代のようで楽しくて、30分以上かけてついに歩き切った。
感激だ。自信がついた。
明日は会社の大内くんとこれ以上飲めない私は遠慮しておいたが、すでに半日飲み続けている他のメンツは景気よくアルコール燃料の投下を行っていた。
お茶でも飲もうと戸棚を開けたら覚えのない焼酎の紙パックを発見し、びっくりして小さな声で、
「なんでうちのお茶の棚に『いいちこ』が入ってるの?」と大内くんに聞くと、
「Sくんが帰りのコンビニで買っていたのを、隠しておいた。彼は、飲みすぎない方がいい」と心配していた。
めいめいビールなどを飲みながら、残ったつまみを食べて飲み直し。
SくんとGくんが私的リレー漫画を始めてて、面白かった。
紙とサインペンをさっと持ってきた大内くん、GJ!
買ってきたビールを飲んでしまったようなので、家にあるお酒と言えば特大の焼酎ボトルだけ。
リクエストに応じて炭酸水とレモン果汁と氷を出したら、Sくんは嬉しそうにレモンサワーを作り始めた。
家ではそればかり飲んでいるらしい。
「大をしたあと、ウォシュレットで洗うのとペーパーで拭くのとどちらが先か」で論争が起こるとは考えたこともなかった。
ウォシュレットが先に決まってるじゃん、と言う私に対して、長老はペーパーが先派の急先鋒。
「飛び散るじゃないか!」って主張されても、そんなに何かが付近に付いてるとは思えない。
私と同じ陣営の大内くんが大真面目に、
「するっと出ることが多いものですから」と述べたため、長老に、
「犬みたいなヤツだな!」と笑われていたんだが、普通はそうじゃないの?
明日会社のある大内くんは早々とお風呂に入って寝て、残り4人は結局朝までしゃべってた。
お茶を飲んでいる私以外の3人は延々アルコール漬け。
よくこんなにべろんべろんになるまで飲めるなぁ、と他人事ながら感心した。
一番ペースの速かったGくんは3時頃に倒れてしまって、長老とSくんと私の3人で話し込んでた。
朝になり、大内くんが起き出す頃になってやっとみんな寝て、布団を敷きつめたリビングは何やら「保育園のお昼寝」みたいな感じになっていた。
50男の集団(1人60越え)が累々と横たわり、画としてはかなり汚いものなんだけどね。
さて、大内くんを送り出して私も寝よう。
こんな中からきちんと出勤するんだから、エライなぁ。
18年12月19日
4時間ほど眠って起きたら、まだ汚い保育園は続いていたので、ベッドの中でマンガを読む。
昔のことを思い出して、島本和彦の「アオイホノオ」なアタマになってしまっていた。
1時頃になってやっとリビングの人々が起き出す気配。
お茶を淹れてあげたが、飲む元気があるのはSくんだけ、長老は前期高齢者だけあって寝起きは良さそうだが寄る年波に二日酔いは辛かろう、そしてGくんは絶対飲み過ぎ。もはやゾンビ。
と思っていたら、Sくんはいつの間にか湯呑に焼酎とレモン果汁をブレンドして飲み始めている。
「迎え酒か、いいなぁ」とか言って、長老も始めてしまうし。
個人的に空腹になり、さすがに昨日の残りのタンドリーチキンとかは皆さんも飽きてるだろうと作り置きの大根の煮物とか玉子焼きとかのタッパーを出して勧め、遅いブランチを。
やはり箸を伸ばしたのはSくんだけ。
なんだか元気だなぁ。
結局いつの間にかみんな飲み始めていた。
話し続けている人あり、不機嫌になってる人あり、黙々と飲んでる人あり。
私も酔っ払ったら楽しいだろうなぁ、と思うんだが、絶対に気持ち悪くなる方が先なので、やめておいた。
素面でも自由連想的におしゃべりが止まらないのは、昔からの特技だし。
ぶっちゃけた話、30年以上の知り合い(人によっては40年物)ばかりで、互いの黒歴史を知り尽くしている、いまでも真っ黒な関係の人々。
ここには書けないような話も多い。
若いもんをひとつところに集めてフタをし、シェイクシェイクシェイクすると、あーら不思議、醸された思い出からは、30年後に脂汗がしたたり落ちるのでした。
つくづく思うのは、私は大内くんと結婚してから、「他人に認められないと生きて行けない」骨がらみのビョーキがかなり治ったということ。
今でも人の同意や賛辞は喉から手が出るほど欲しいが、「主食」というか、最低限の栄養は大内くんからもらっているため、のたうちまわるほどには飢えずにすむようになった。
それでも、何が起こっても「わしは天上天下唯我独尊だから」と平然としていられる長老の悟りを、私も身につけたい。
40年近く前、学外部員としてマンガサークルに入部するより先に中学の先輩の縁で連れて行かれたのが中野にある長老の住み家のマンションで、そこはサークルのたまり場と化していた。
私が出入りし始めた頃はちょうど男女10人ほどが入り乱れて合作マンガを製作しており、ほとんどの女性が自宅生で行儀よく門限までに帰っていたにもかかわらず、いや、それだからこそ「送る」という行為が発生した賜物か、ほぼ全員がカップル化して卒業後にはばたばたとご成婚してしまった。
「マンガ」によって起こる化学反応、化合物生成力恐るべし。
私もついでに1回結婚させてもらったことは小さな声で言おう。
その頃、梁山泊のヌシのように見えた長老が、まさかこれほど几帳面で綺麗好きで小うるさいオヤジであったとは。
思えばほとんどいつも誰かがいて大勢住み着いているように見えても、決して部屋が荒れ放題のゴミ溜めにならなかったのは、この人がひそかに片づけたり掃除したりしていたのだろうと今はわかる。
世の中にはいろんな梁山泊がある。とんだ宋江もいたものだ!
別荘にも現在の自宅にも泊めてもらって初めて知ったんだが、テーブルや机には「汚れるから。あとで丸めて捨てればいい」とカレンダー等の大型の紙がテーブルクロス代わりに敷かれ、トイレには「男子も座り小便!」との張り紙が。しかもご丁寧に、上げるとちょうど目に入るようフタの裏に。
我が家でも、ランチョンマットのないところに熱いカップを置くと、
「このテーブルは、熱いの置いても傷まないのか?コースターの上に置いた方が良くはないか?」と気遣い、自分が使っている割り箸の下には不要なレシートをさりげなく置いて「箸置き」にしている!
なのに、「面白いかどうか」が最大の評価基準で、決して物事をネガティブに見ない豪傑でもあり、大人物というものは「大胆にして細心」なのだなぁと心から納得がいく。
根が暗くて、大胆になり切れず「やけくそ」どまり、細かいくせに緻密さに欠ける自分をふり返ると、いやもう、全然ダメでしょう・・・
とっても人に褒めてもらいたいタチなので、長老に「おまえは、面白い!」「物事を判断するバランス感覚が優れている」と言われ、天にも昇るほど嬉しかった。
同時に、いつも大内くんが言ってくれることと同じだと気がつき、さて、私の夫は長老並みに見る目がある人なのか、それとも私のその特徴が誰にでもわかるほど顕著なのか。
かなり素敵な二択だ。どっちの結論に転んでも、思わず「なははは」と笑ってしまいそう。
6時頃にGくんだけが「気持ち悪いから、帰る」とふらふらと離脱した。
「今だと通勤帰りでバスが混んでるぞ」と長老に警告されても、
「歩くから大丈夫」なのだそうだ。
30分以上かかるのに、平気なのか?
残ったメンツでまたひとしゃべり。
愛書家でパソコンに詳しい2人に、我が家の自炊について相談してみる。
「3ヶ月から半年に1回バックアップを取って、HD5つぐらいをぐるぐる回して、ハードの消耗も心配なので数年に1個は新しいのを導入して、HD1つは貸金庫に入れて1つは遠方の友人に預けてあって、東京から少し離れたところにあるクラウドサービスとも契約してデータ送ってある」と説明したら、すごく感心された。
「そこまではやってない会社も多い。そこらのデータ会社よりバックアップがしっかりしてる。それだけやってれば、パーフェクト!」なのだそうだ。
お墨付きがもらえて、安心した。
とにかく怖いのはデータが消えてしまうことだからなぁ。
そのあとも機嫌よく飲んでいた2人が帰ったのは9時頃。
我が家の焼酎の特大ボトルは7割ぐらい減っていた。
帰ってきた大内くんに、「みんなすごく飲んでた」と見せると、
「Sくんの『いいちこ』を隠したぐらいじゃ何の役にも立たなかった。まあ、楽しかったんならいいか。昔みたいだったねぇ」と嬉しそうだった。
なんだか夢のような2日間だった。
34時間ぐらいの、プチ合宿。
くたびれすぎてもうなんにもできないけど、長い眠りの中で青春の夢を見ていたような気分だ。
少し悪夢なのに、バラ色なんだよ。
人が死ぬ時はこんな夢をみるんじゃないかと勝手に思う。
18年12月21日
子育てについて友人とラインで話す。
「親に『何よりあなたのためを思っている』と言われるのが一番イヤだった。だから、子供には絶対それだけは言わないように気をつけた。いろいろ言うのって、子供のためじゃないもん。自分のためだもん」と語っている自分に気がついた。
「自分のためには雑誌1冊買ったことがない」と言われるのはイヤだった。
母親も買えばいいじゃん、と思った。
どう考えても好きでやってることを「あなたのため」と言われるのは、本当に間尺に合わないと感じた。
他にしんどかったのは、
「あなたはこんなもの(こと、人)、好きじゃないでしょう」と言われること。
なぜ私の好みを、生活を、人生を規定するのか。
「こんなものが好きだなんて」と叱られる時の方がマシだった。
「これが好き」な私を、どこにもいないものとして無視され、葬り去られるのは何よりつらかった。
結局自分のことしか考えてないくせに、あなたのことを思って言うんだなんて嘘ばっかり、って、親を、憎んだ。
今でも、自分の望みを子供の望みと勘違いしている親を見かけることがある。
素直に、驚く。
あと、子供に嫌われる心配をまったくしない人。
親って、そんなに何をしても絶対嫌われないものなの?
子供から人生を奪おうとして、万が一子供が首尾よく逃げ出せたとしたら、残りの一生かけて親を憎むとは思わないの?
それに、もし絶対に嫌われない存在なんだとしたら、だからこそ「嫌えないのに、大嫌い」なんて解けない思いを子供に持たせちゃ可哀想なんじゃないの?
「親は何よりも子供の幸せを願っている」って言うなら、そのぐらい考えてあげようよ。
というわけで、私自身は息子と距離を置くしかないと思っている。
理想の同居人は、ある程度家事をやってくれる人だし、私と話すのが好きな人。
その2点に大きく抵触したため、1年前に家を出てもらった。
正直、今の方がずっといい関係だ。
もちろん寂しい時もあるけど、そんなに何もかもってわけにはいかない。
きっと、向こうもそう思ってる。
「メシが出てこないのは不便だけど、オレは自由だ!」って。
アメリカから帰ってきて以来、お金の無心とかしてこなくなった。
もう1カ月以上顔を見ていないし、音沙汰もない。
正月に来るかどうかだけ確認したら、カノジョを連れて顔を出すそうだ。
お世話になった人へのお年始1件と初詣に行くが、一緒に行くかね?と聞いたら、
「仕事明けでご一緒できるかわからないから、別々にしましょう」とあっさりした返事が返ってきた。
なんとなく情緒が安定しているのを感じる。
バイトとお笑いの生活が軌道に乗っているのだろうか。
自分の好きな生き方をしている親と子供が、慣れ親しみ思い出を共有する他人として、尊重し合い、好意を持ち合えるオトナ同士となり再び出会えたら、それが一番ステキなストーリーだなぁ、と考えて暮らす毎日。
18年12月23日
ここのところ、とても忙しくしていたような気がする。
この2日間は何もしないでのんびり過ごした。
特に、大内くんを寝かせてあげないと。
日頃は5時や6時にしゃきしゃき起きていて、本人も「歳だから」って笑ってたけど、休日に放っておいたらやっぱり11時ぐらいまで目を覚まさないもんだ。
基本不眠がちで2時間ごとに起きてしまう私と違って、本質的に「眠りの国の住人」だよね。
「王国に、帰してあげたい」と真剣に思うんだが、「覚醒の国の姫」と恋に落ちてしまったんだから仕方ないんだよ。
ざくろの実を食べてしまったペルセポネーみたいにあっちとこっちと行ったり来たりするとか、お互いどうにか譲り合って暮らそうね。
ずっと気になってた映画「カメラを止めるな!」、やっと観られた。
U-NEXTが止まりがちで、せっかく監督がカメラを止めなくても、これじゃ台無しだ。
それでもすごく面白かった。
大内くんは、
「こんな面白い映画が作れるのか。僕が映画に求めるすべてが入っていると言ってもいいぐらいだ!」と大感動していた。
でも、世の中で話題になってたことなんて全然知らなかったんだって。
「キミのおかげで面白いものが観られる」つったって、いいのかね、そんな感度の鈍い状態で生きてて。
いくら忙しいサラリーマンだって、もうちょっとアンテナ張ろうよ。
せめてFBぐらい読んでくれ。
映画のおかげでゾンビ物のマンガ「アイアムアヒーロ―」が猛烈に読みたくなってしまった。
こんなふうに、ちょっと刺激されて思い出したマンガや小説を、すぐさま読み返さずにはいられない。
いくら時間があっても足りないのはそのせいか。
新しいものも読みたいのにー。
みんな、新巻とかすぐ読めていいなぁ。
忘れっぽいので、過去作から読み返さないと話がわからない。
シリーズ最新作を読む時は、たとえおぼろげに話を覚えていても、過去のシリーズを読み返して味わっちゃうし。
そんなわけで、せっかく宮部みゆきや東野圭吾の新作をハードカバーで買うという大盤振る舞いをしても、杉村三郎シリーズやガリレオシリーズを読んでからでないと始まらなくて、なかなか最新の話に行き着かないのだった。
18年12月24日
友人女性のところにカキがたくさん届いたと言う。
「冷凍庫に突っ込んであった『賞味期限を過ぎた殻付き生食用カキ』と一緒に消費したい。手伝ってもらえるだろうか」とのお話を受け、大喜びで彼女とカキを迎えに行った。
まずは、家で仕事をしている彼女の身体があくのを、近所までにじり寄って待とう。
ブックオフに寄ったり魚屋で豆アジを探したり、いろいろやりたいこともある。
ここのところずっと「豆アジの南蛮漬け」を作って食べたいんだが、正月が近いため、そういう雑魚は売ってない。
尾頭付きの鯛とか、巨大な鰤とか、小さなテルミドールでしか見たことのない伊勢海老とか、普段の二割増し高い刺盛りとか、もう、そういうものしかないの。
手ぶらで泣きながらブックオフに。
こないだマキャフリイの猫小説にばったりぶつかった縁起のいい店で、たまにテリトリー外のブックオフで狩りをするといいことがある、と浮かれて今日も来た。
しかし、冷静になってよく見たら、店舗は小さく100均の棚はさらに小さい。
「ぺんぺん草も生えてない!」と毒づいて、収穫ゼロで店を出る羽目に。
冷静になろう、と星乃珈琲店でスフレを食べる。
お正月には年越しそばとお雑煮だけは人並みに食べたいと思っており、糖質量を計算する日々。
本当はこんな時点でスフレ入れてる場合じゃないのだ。
しかし、なんだか疲れ気味で精神不安定なので、特例として自分に甘くしてみよう。
元気が出たところで、仕事が終わったとの連絡を受け、友人を迎えに行く。
大きな保冷袋を持って現れた彼女は、カキの「ハロウ(後光)効果」で輝いて見える。
運転は大内くんにまかせて、おしゃべりをしながら我が家に向かった。
鮮度が心配な冷凍カキはじっくり加熱するため鍋にしよう、と大内くん。
「カキなら、土手鍋でしょう。ちょうど八丁味噌が余ってるし、パルスイート混ぜればいいよ」
そして、賞味期限内の加熱用カキは当然のようにカキフライに。
私も張り切ってタルタルソース作ろう。
友人はピクルスが好きだそうなので、たくさん入れるよ。
彼女が器用に殻をじゃんじゃん開け、大内くんが鍋の支度をし、私がタルタルを作る、美しいチーム戦略の甲斐あって、1時間ほどののちには夕食になった。
まあ後半は女性軍はおしゃべりに興じていて、鍋を煮ながら手早くカキフライを揚げられる大内くんは、本当に異能の男だ。
実は揚げ物が苦手な我々にとって、かなり驚嘆すべき人。
友人がもたらしたカキは非常にたくさんあって、しかも大粒。
冷凍カキは、ぷっくりしたおなかが少ししもやけを起こして黄色味がかっていたが、味噌仕立ての鍋でよく煮たので大丈夫だろう。
煮て身が縮んでもなお、かなりの大きさがあった。
カキフライも30個以上あった。
最初、彼女から連絡をもらった時、私は読み違えて「500gのカキが来た。殻つき生ガキが12個」と思ってしまった。
なので、大内くんは、
「3人で楽しむという量ではなく、僕らまで食べてしまっては申し訳ない。1人で召し上がってください、って返事しておいて」と言っていた。
私「いや、せっかく声をかけてくれたんだからご相伴しようよ。カキを買い足して、カキフライにしようよ」
大「買い足すのは異論ないよ。どうせ、この週末はカキが降ってくるかもって思った時からずっと『カキの舌』になっちゃってるんだから、それ以外の夕食は不可能」
との合議を経て、
「3人には少ないので買い足して、カキフライにしましょう」と返事したら、
「3人の量じゃないって?そこにビックリした・・・」とおののかれた。
だからさぁ、12個だと思ったのよ。もう500g、あったのね。
実際、鍋にしてフライにして、3人では到底食べ切れない量だったよ!
たくさん残ったフライは一部をお持ち帰りいただいた。タルタルソースの小さなタッパーをつけて。
たらふくカキを食べて、手作りバニラアイスも食べて、とても楽しい今宵はよく考えたらクリスマス・イブだった。
その場では誰も気がつかなかったんだが。
でも、少なくとも「カキの女神様」が降臨してたわけで。
「あなたが落としたのは、この金のカキですか?銀のカキですか?」
「いえ、『鉄分の多いカキ』です・・・」
我々ワイン飲んじゃったから送って行けないけど、カキの入ってた保冷袋に「姿を変えたフライ」を入れて、友人は機嫌よく帰った。
新年にはまた新年会をやるんだ。毎度毎度すまない。
せめて、駅から歩けるマンションに引っ越したいなぁと、また思う。
私は、人が好きすぎる。
誰かと、ずーっとしゃべっていたいと思う。
私の暑苦しい自分語りを長く聞いていられる人は(大内くん以外には)いないので、どうしてもあちこちに要員を準備する形になり、それが苦しくてならない。
「人がみんなしてることではあるんだけどね。意識しすぎ」と大内くんには言われるんだが、狡猾な計算で人と付き合ってるような気分になるんだ。
そんな自己嫌悪に陥ってるヒマに、もっと人の話も聞いてあげるようにしたらより少ない友人でも充分にまかなえるはず、人は相身互い、って知恵は、まだ頭にしっかり入ってこない。
たぶん、私が思うよりも、まわりは私を好きだろう。
でもたぶん、私が思うよりもなお、私は自分が好きすぎる。人が好きなんじゃなくて。
そしてなによりも、「私が私が」って自意識がうるさい。
自分でも困ってる、なんて言い訳にならない。自分以上に、他人は閉口するだろう。
そのへんは来年の課題かも。
なにしろ還暦だからなぁ・・・
18年12月25日
大内くんは大学のクラスの忘年会に出席で遅い。
日頃は家庭第一主義すぎてつきあいの悪い人だが、これは親友のFくんが毎年企画してくれているので、たまには出かけてみたくなるらしい。
もう歳だから、旧交を温めるのはすごくいいと思うよ。
帰ってきて、私が知ってる人の話をいろいろ聞かせてくれた。
大内家日記をずっと愛読してくれている人がいると言う。
噂はよく聞くんだが、私は面識がないんだよね。いつか会ってみたい。
その人と話していたら、ライターをしている別の女性が「前は読んでたけど、URLをなくしてしまった。私も読みたい」と言ってくれたので、メールで送っておく、って。
この人には昔会ったことがある。娘さんと一緒に遊びにきたなぁ。
イラストの仕事をもらったこともあった。なつかしい。
なぜか、女性の友人との話をよく聞く気がする。
女子力が高いせいだろうか。
息子がらみのママ友とも忘年会をするし、意外なところで女性に人気のある大内くん。
どうも「お母さん限定」な雰囲気も濃厚、いや、独身女性にもファンはいるか。
威張らなくていつも穏やかに笑っているし、ちょっと頓珍漢なところもなかなかキュートだから(笑)
「男の友達の話はないの?皆さん、変わってた?」と聞いたところ、同級生たちは社会的地位を得てたいそう立派になり、貫禄があるのだそうだ。
だいたい古い集まりに行くと大内くんは「変わらない。若い」と言われ、本人は、
「成長のない、とっちゃん坊や、ってことだよ…」と気に病んでるんだが、腹と頭髪にあまり変化がないのはほめられポイントだろう。
「いや、おなかは出てるよ」って抗弁しても、ホントにホントの服を脱いだ腹回りは私しか知らないんだし、世間的にはまあ、「やせてる」で通るうらやましいあなたじゃないか。
18年12月27日
大内くんがお休みに入ったことを祝し、映画を観に行く。
ドライブがてら川崎チネチッタまで行こうという計画は、残念ながら2人とも疲れて体調がイマイチなので、近所ですませた。
それでも、とても楽しみにしていた「ボヘミアン・ラプソディ」と「ファンタスティック・ビースト
黒い魔法使いの誕生」のハシゴ。
映画館に行く前に、近所に住む息子の恩人「おばちゃん」に暮れの挨拶をしに行った。
毎年、初詣がてらお年始に寄るスケジュールだったが、今回は年末のうちに顔を見ておこう。
変わらずお元気で、
「息子くんはもうアメリカから帰ってきた?」と心配してくれたので、
「年始にうちに来ると言ってました。こちらにも顔を出すよう言っておきます」とお伝えする。
息子は不義理だが、若い人の無作法には慣れているおばちゃんなので、気にしていないようだった。
(うん、私も若い頃はそんな感じだったなー、と深々と反省したよ)
それから唯生の面会に行く。
新年はなんだか予定が立て込んでいるせいで、すべてを年末に寄せている雰囲気の我々。
唯生が外泊で帰ってこられなくなってから7年ぐらいたっただろうか。
昔はお正月を一緒に過ごし、もっと小さい時は友人が遊びに来て写真をたくさん撮ってくれたものだ。
いろんなことが変わる。
そんなことを話しかけながらいつものように唯生の足をもみ、おなかをなでて時を過ごした。
今日はけっこう機嫌が良かったかな。
大内くんは、
「首筋の、ここをさわると笑う、ってポイントを発見した!もちろん今日限定だろうけど」と喜んで、唯生をたくさん笑わせていた。
笑う門には福来る、だからね。
そして冬休み本番、映画鑑賞。
ゼロコーラのMサイズを2つ買って、まずは「ボヘミアン・ラプソディ」。
「ボヘミアン」はものすごく良かった!
フツーの上映でも興奮しちゃって、これで観客が一緒に歌ったり手拍子したりの公演だったらどれほどか!と、もし機会があればそういうのを観てみたいなぁと強く思った。
ネタバレではあるが、フレディがゲイであることもエイズで死んだことも、「知ってはいたが、忘れていた」。
今このようにしみじみと振り返るのは、さぞかしLGBTに差別的であったろう当時の世相を反省し、フレディの名誉を回復させるための「復権運動」なのではあるまいか。
なにしろ、秋里和国のマンガを読むと「奇病がこわくてオカマがほれるか!」と描いてあるような時代だったわけで。
この映画が封切られて以来、身の回りに「意外なほど多くの隠れクイーンファン」を発見した。
本人たちは隠していたつもりはなかろうが、大昔のことなので、私のアルフィーファンみたいにずっとアピールし続けるというものでもなく、時の流れの中に忘れ去られていたのであろう。
そして今、青春のフタが一気にあいた状態らしい。
私はクイーンを全然聴いたことがなく、今回も、4人を演じるそっくりさんたちを観ながら、
「で、いつこの人たちは火を吹くのかなぁ」(「それは絶対的に違うバンド!」とあとから大内くんに叱られた)と思っていた程度の人間なのだが、不思議なことにそう白状するたびに、「ええっ?!意外!」と驚かれる。
クイーンファン的な性格だと思われているようだ。
私の所属は「おのれ、根はフォークだな」族です。
とまあ、あれこれ言うけどいろいろ胸に迫る映画で、大内くんはぽろぽろ泣いていた。
私が一番強く思ったのは、
「アルフィーがこういう映画になったら、定期券を買って通ってもいい!」。
DVDを5枚ぐらい買ってもいいよ。
そして、「『U.S. CAMP
DRAKE』の衣装は3人バラバラ。高見沢さんは将校服、坂崎はベレー、桜井はサンダーバードみたいな軍帽」とか「『D.D.D.!』を歌う時にはピンクの軍手をはめていた!」とかニッチなコンサートDVD知識を再確認する。
一番推しは絶対にロジャー・テイラーなんだが、ジョン・ディーコンが、大好きな名香智子「レディ・ギネヴィア」に出てくる馬術選手「ジョン・クック」にそっくりだと思った。
あんまり似ているので、それ以外のことを考えられなくなり、主役のフレディにも甘いマスクのロジャーにも目が行かなくなりそうだったぐらいだ。
いや、だからどうということはないんだが。
(帰ってから見たら、やっぱりよく似ていた。もちろんどうということでもないんだが)
「ファンタビ」は、うーん、難しい!
終わってみてあっけにとられるほどだった。
たぶん、「ハリー・ポッター ゼロ」だと思うあまり、整合性が気になりすぎて話がよくわからなくなったんだろう。
でも、ハリポファンでない大内くんも、「わからん!」と叫んでいたなぁ。
話が終わらなくて、「えっ、まだ続編?!」だし。
ジュード・ロウは嫌いじゃないが、ダンブルドアは老いてからの方がずっと素敵、と思うのは「老け専」?
結局彼は「スターリングラード」の時が一番よかったかも。
「ジョニー・デップはさすがだったけどね。何に出てても目立ってて、すぐにわかるね」と言う大内くんには、
「『シザーハンズ』に出た時に、『おう、ジョニー・デップ』と思ったとでも?」とぴしゃりと言っておいた。
間が15分しかない2本を立て続けに観て、映画館を出た時にはもう夜の8時過ぎで、真っ暗。
くたびれて目がチカチカするけど、楽しかった!
それにしても、映画館で予告編を観るとどの「COMING SOON」もなんて面白そうに見えるんだろう。
こないだ最新作を読んだ東野圭吾の「マスカレード・ホテル」のシリーズ、キムタクも長澤まさみも好きじゃないから絶対観たくないと思ってたのに、「もしかしたら面白い?」とか思っちゃったじゃないか。一瞬だけど。
「ガリレオ」シリーズの福山雅治、「加賀恭一郎」シリーズの阿部寛みたいに、「東野圭吾、新たな映像ヒーローを得る!」ってなっちゃったら、どうしよう?
18年12月28日
年下の友人が、元気に電車とバスを乗り継いで遊びに来てくれた。
昨日急に決まったのであまり大したおもてなしにはならなかったんだけど、冷凍のタンドリーチキンを解凍して焼いて、サラダと一緒に出して、ポトフの残り汁を冷凍してあったのをやはり解凍してチンゲン菜を散らしてスープにし、食後にはアイスクリーマーでアイスを作ったので、「緊急時の間に合わせランチ」の見本だったかも。
同じ誠実な生活者としての、精一杯。
私たち夫婦はマンガクラブで出会って結婚し、まあまわりにはそのテの人々ばっかりいるんだが、この友人は、私から見るとカタギと言うかシロウトと言うか、特段「オタクのけもの道」を通ってきた人ではないにもかかわらず、実によくマンガを読んでいる。
すでに引退モードで日々寝っころがって読みふけってる私よりもよく読んでるぐらいで、忙しく子育てしながらどうしてそんなことができるのか、全然見当がつかない。
「3月のライオン」にはかろうじて追いついてても「ハチクロ」を読んでいない大内くんなどはもうお手上げで、女性2人が機関銃のようにマンガトークをしているのを、口をあんぐり開けて見ていた。
ただ、申し訳ないことに我が家は電子化が進んでしまった。
知り合った時すでに蔵書のほとんどを「自炊」し終わっていため、彼女は我が家が壁中本棚だった頃を知らない。
あのままでいたら、今、お薦めのマンガをどんどん貸してあげられたのに、とひそかに涙にくれる私。
せめて共通の好みの新刊は貸し出すようにしているんだが、どんどんKindleで買う率が上がっているため、それも少なくなっている現状だ。
そもそも本当に読みたいものは向こうさんも自分で買ってるからなぁ。
4時間半の楽しい団らんのあと、駅まで車で送って別れたら、とっても寂しくなった。
人と会っては寂しくなる。人生はそんなことの繰り返しだ。
そしていつか、誰にも会えなくなる。
私が生きていたことを覚えていてくれる人も、やがていなくなる。
この虚しいリフレインに、人類はよく耐えているなぁ・・・
これほど基本が虚無的な奥さんを持って、大内くんもさぞやご苦労なことだろう。
反省してもいっこうに改まらないけどね。ごめんね。
18年12月29日
年末の土曜なのに、心臓のクリニックは営業してくれている。
今年最後の定期検診だ。
前回、血尿が出ていて、その後激痛に襲われて別の病院に駆け込んだ際に「ワーファリンを減らした方がいい」とアドバイスされ、結局それで血尿はおさまっていた。
しかし、ワーファリン値が今回は「1.6」。
「1.8〜2.2」の適正値からするとちょっとだけ低いけど、まあ大丈夫かな?と思ったら、こちらの先生の考える適正値は「若い人なら2.0〜3.0」なのだそうで、「低すぎますね!」と叱られてしまった。
勝手に減薬したのは申し訳ないが、別の医者でも医者は医者、ドクターの指示に従っただけなのに、とちょっと不満。
そもそも「1.8〜2.2」って数字も、この先生から聞いてそう思ってたのに、先生だって前回の2.9が高すぎると思ったから減薬し、それでもまだ高すぎたのに、どうも場面によって言うことが変わる。
もしかして、ヤブ?優柔不断?とか思う。
しかし、言えない。患者は立場が弱い・・・
とは言え、高すぎて血尿出たことを思うと薬を増やす気にはならないらしく、今のままで様子を見ましょう、ってことになった。
結石で尿管に傷がつき、出血した可能性が高いらしい。
その後、血尿も痛みもないところを見ると、自然排石されたのかもしれないと。
生きてる限り病院とは縁が切れないことを思うと転院も考えるんだが、紹介状もらわないことには怖くてしょうがないし、引っ越しするわけじゃないのに転院しますとは言いにくい、案外弱気な私。
まあいい、とにかく今年の病院納めだ。
駅前に行ってお正月料理の材料を景気よく買ったら、あれよあれよと言う間に数万円の出費。
息子や「小さな新年会」のお客さんにローストビーフやたこの和え物、サーモンのマリネを食べさせたいと思うとこうなる。
年末年始の市場原理は、厳しい。
病院の近くの小さいが良心的な八百屋で三浦大根が1本398円だったので、しばし悩んだ。
盛大に買い出しをするいつもの八百屋では500円だったから。
「少し小さい。果物と野菜は大きさが命」との大内くんの判断で、やめておいた。
それから「いつもの八百屋」に行き、先週500円だった大根がお正月値段で680円になっているのを知って愕然とし、「大きいから」と泣きながらつぶやいて2本買う未来を、今の我々はまだ知らない。日記マジック。
18年12月30日
朝イチで街に出て、我が家最大のお正月料理「おでん」の主たる材料「おでん種」を買ってきた。
「入れないと美味しくならない。入れ過ぎると食べ切れない」と呪文のようにつぶやく大内くんが選んだ「紅生姜天」「ごぼう天」「うずら天」など。
基本的に練り物がキライな私は食べる予定がなかったが、「紅生姜天」だけはちょっと惹かれる。
できあがったらひと口かじらせてもらおう。
ブックオフに寄って買い納め、ヨドバシに寄って来年買いたいノートパソコンの下見、ついでにiPad Pro見たら間の良いことに「ドラゴンボール」カラー版のデータが入ってるのを見られて、やっぱりマンガはこのぐらい大きい画面で読みたい、意外と軽い!と興奮した。
来年買ってもらう予定のモノの筆頭。
帰ってきて、今は大内くん大掃除中。
さっき書斎に入ってきて、
「しばらくはここから出られないからね(笑)」と言いながら、結界を描くように私のまわりの床にワックスをかけて去って行った。
確かにこれが乾くまで、床を歩けない(涙)
明日からはおでんの仕込みに入り、とっときの三浦大根を投入しての下ゆでから始まり、15個ほどのゆで卵の殻むき、油揚げを切って餅を入れ、かんぴょうで縛って「餅入り巾着」を作成するなど、さまざまな作業が待っている。
私のメインの作業は、ローストビーフやお雑煮用の塩ブリなどの仕込み。
今日になってやっと落ち着いて家のことをする時間ができた感がある。
大内くんが2日も有給をぶち込んで作った長い冬休みと思えたものも、もう4日目。
何の予定もなく残されているのは明日だけで、新年が明けたとたんに連日遊ぶ予定で、それが終わったらもう、冬休みは終わりである。
ああ、人生ははかない。
こんなに厭世的な私の元にも平等に新年が来るのは、本当に不思議だ。
今年の日記はとりあえず終わりです。
皆さん、1年間ありがとうございました。
また来年もよろしくご愛読くださいね。
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